手書きのエントリーシート(以下、ES)は、志望度の高い企業に熱意を伝えるのに最適です。時間と手間がかかるデメリットを受け入れられれば、企業に強くアピールできます。
この記事ではこれから手書きESを作成する人に向け、書き方の手順や綺麗に仕上げるコツ、作成の注意点を説明します。ESは分量が多い分、失敗があると書き直しが大変です。注意点を理解し手順をしっかり踏むことで、円滑に仕上げられるでしょう。
目次
就活生も企業も戦略的に手書きESを活用している
パソコンでESを作成する人が多い中、気持ちを込めた手書きESは目立ちます。手に取ってもらいやすい分、アピール力が高まるのは就活生にとって大きな魅力です。
企業にも手書きESのメリットがあります。応募者が多数に及ぶ場合、手書きを指定することで人数を絞り込めるのです。手書きには時間も手間もかかります。苦労して仕上げる応募者は、志望度が高く努力を惜しまない人材だと判断できるでしょう。熱意ある応募者を絞り込むことで、効率的に選考を進められます。
パソコン主体の中でも、手書きESは時代遅れではありません。手書きが少なくなっている現在だからこそ、就活生にとっても企業にとっても武器になるのです。
ESで手書きを選択するべき企業の特徴
社員の年齢層が高い
20年ほど前までは履歴書や職務経歴書、ESを紙で提出するのは「ごく当たり前」でした。年齢が高い社員ほど、手書きESに馴染みがあります。中には「選考書類は紙でなければならない」と固定観念をもっている人もいるかもしれません。
厚生労働省の統計によると、一般労働者の平均年齢はおよそ44歳です。社員の平均年齢が45歳を超える企業は「年齢層が高い」と言えます。ホームページや企業パンフレットを通し、選考を受ける企業の平均年齢を事前に把握することで、手書きした方が良いかの判断基準となります。
(参照:付2-(1)-9図 一般労働者の平均年齢の推移 | 厚生労働省)
しきたりや伝統を重んじる
しきたりを大切にする社風の企業は、就活生にも昔ながらの作法を求めます。ESも「手書きが当たり前」と判断するかもしれません。理念やビジョンに保守的な雰囲気を感じるなら、手書きを選択しましょう。
注意したいのは、業種で早計に判断しないことです。伝統の技を継承する職人の世界でも、革新的な思想を持つ企業もあります。革新的な事業でも、経営陣の方針によっては保守的な価値観で動くこともあるかもしれません。企業研究をしっかりと行い、社風を的確に把握しましょう。
人間性や性格を重視して採用している
採用にあたり「人物重視」を明確に打ち出している企業も手書きESが効果的です。文字には人柄が現れます。筆圧が強ければエネルギッシュな性格を、止めや払いまでしっかりと書けば几帳面さや真面目さが伝わるでしょう。通常、応募者の人柄はESの中身を読むまで判断できません。手書きESなら、書類の見栄えも一つの判断材料になります。
志願者数が多い
応募者が多数に及ぶ企業は、毎日何通ものESを処理しています。パソコンで作成された書類は、見た目がほぼ同じです。中身で差別化を図らない限り、採用担当者の目に留まることはありません。手書きであれば、見た目に個性が現れます。多数の応募者に埋もれづらく、手に取り精査してもらえる可能性が高まります。
なぜ手書きESが評価される?3つのメリット
熱意や志望度の高さが伝わる
手書きのESからは高い心意気が伝わります。「選考を受ける企業のために苦労して書いた」ことが想像できるからです。エネルギッシュな文字、丁寧な文字であれば尚更です。中身を読まずとも、熱意や志望度の高さが窺えます。採用担当者も「きちんと想いを受け止めよう」と書類を精査するでしょう。
企業が社風への一致を判断しやすくなる
手書きの文字からは人柄が窺い知れます。企業にとって、人柄は社風への適合を判断する大きな材料です。社風に合わないと円滑な人間関係を築けず、早期離職の恐れがあります。慎重を期すため、企業はできるだけ多くの情報から人柄を判断したいと考えるでしょう。手書きESは、判断材料の一つとして歓迎されます。
多数のライバルに埋もれないESをつくれる
志願者数が多い企業ほど、手書きESは目立ちます。タイムパフォーマンス(タイパ)が重視される時代の中で、多くの就活生はパソコンでESを作成するでしょう。手間を惜しまず丁寧に書かれたESは、それだけで目を引く存在になり得ます。ライバルの中で埋もれず、手にとってもらえる確率が高まります。
あらかじめ知っておきたい手書きESのデメリット
パソコンのESに比べ時間と手間がかかる
ESの作成は簡単な作業ではありません。350字前後の回答項目が多く、全てを手書きするのは骨が折れます。タイピングよりも時間がかかる上に、間違えたら一から書き直さなければなりません。時間と手間がかかることを嫌う人にとっては、デメリットが大きく感じられるかもしれません。
手書きESは文字に癖があると読みづらい
手書き文字は個性を伝えるメリットがある反面、読みづらくなる恐れがあります。特に丸文字や角文字は、度が過ぎると個性よりも読みづらさが勝ります。採用担当者が読みづらさを感じたら、それ以上読んでもらえないことを念頭に置かなければなりません。他人に字の癖を指摘されるようなら、パソコンに切り替えた方が無難です。
手書きESの上手な書き方7STEP
①あらかじめパソコンでESの中身を作成する
②コピーしたESに実際に書き、文字数の過不足を確認
③原稿の文字数を調整し内容を確定
④提出する本番のESに鉛筆で薄く罫線を入れる
⑤鉛筆で下書きする
⑥ボールペンで清書する
⑦インクが乾いたら下書きと罫線を消す
ESの手書きには手間がかかります。できる限りミスを減らし、少ない行程で仕上げるには、7つのステップを順に辿ると良いでしょう。手間がかかる作業でも、飛ばさずに行うことでミスが減ります。
①あらかじめパソコンでESの回答を作成する
ESの文章を失敗なく一度で仕上げるのは現実的ではありません。まずは付け足しや削除、文章の変更が簡単にできるパソコンを使うのが賢明です。納得のいく文章が仕上がるまで、何度も校正を重ねながら内容を詰めていきます。
②コピーしたESに記入し過不足を確認
内容が固まったら、コピーしたESに実際に記入しましょう。文字数を調整したつもりでも、手書きにすると過不足が生じがちです。読みやすい文字の大きさで書いたときに、余白を残しすぎず、かつ枠がびっしりにならない量に調整しなければなりません。項目ごとに付け足す文量、削る文量を概算しましょう。
③原稿の文字数を調整し内容を確定させる
概算した結果を踏まえ、パソコンで再度文章を調整します。超過していれば文字量を減らす。余白が目立つようなら、文字数を増やし、内容を推敲します。
注意したいのは、明確な理由なく文字量を増やさないことです。書いた文章は既に推敲を終え、一度は「これ以上増やす余地はない」と判断しているはずです。むやみに増やすと蛇足になる恐れがあります。内容の付け足しではなく、表現の入れ替えで対応すると良いでしょう。
④ESに鉛筆で薄く罫線をいれる
本番用のESの各記入欄に鉛筆で薄く罫線を引いていきます。コピーに記入した文章をもとに行幅を決定し、等間隔に横線を引きましょう。
まっすぐに手書きするのは意外と難しく、無意識に曲がることが少なくありません。罫線がガイドラインになることで、ズレを意識せず記入に集中できます。罫線は清書した後に消すため、薄く引くことを心がけましょう。
⑤鉛筆で下書きする
転記での誤字脱字を防ぐには、鉛筆での下書きが欠かせません。下書きをしないと書き直しの可能性が高まり、かえって時間と手間がかかります。清書後に消すことを考慮し、できるだけ薄く書きましょう。Hや2Hの鉛筆があると便利です。シャープペンシルは筆圧が強くなるため、下書きには向きません。注意しましょう。
⑥ボールペンで清書する
下書きを終えたらボールペンで清書します。0.5〜0.7mmの太さを選びましょう。0.4mm以下の極細タイプは字が弱々しく見え、志望度の高さや熱意を伝えるのに不適切です。インクは字が滲みやすい水性を避け、ゲルインクまたは油性インクの黒色を選択します。下書きを消すときに滲みが出ると台無しになるため、インクの確認は必須です。
⑦インクが乾いたら下書きと罫線を消す
インクが十分に乾くのを待ち、下書きと罫線を消しゴムで消します。消しゴムをかける際にインクが滲む恐れがあるため、完全に乾かしてから作業することを徹底してください。別の紙で実験し、乾燥時間を把握しておくと良いでしょう。消し忘れを防ぐには、全体を一気に消さず、一文字ずつ消すのがポイントです。
手書きESを綺麗に仕上げる工夫
手書きESの文字数は下書き時に調整を
手書き原稿は、パソコンで作成したものよりも文字数を減らすことが多いです。大きめに書かないとはっきりした文字にならず、読みづらい印象を与えてしまうためです。下書き時に「文字を正確に読めるか」「余白が十分にあるか」を確認し、適切な分量に整えましょう。
手書きESの文字の大きさは罫線を目安にする
手書きだと余白があっても窮屈に感じられることがあります。原因の多くは文字の大きさです。行間が詰まると窮屈に感じられ、途端に読みづらくなります。枠に引いた罫線をガイドラインとし、8割程度の高さを目安にしましょう。2割の余白があれば、読みやすくなります。
行頭には縦の罫線も引くとずれない
手書きでは行頭位置が横方向にずれる可能性もあります。ずれて不格好に見えるのは、上下も左右も同じです。長くなるほど失敗の可能性が上がるため、行頭のみ縦の罫線も引くと良いでしょう。位置揃えに留意する必要がなくなります。
止め・跳ね・払いを意識しメリハリをつける
手書き文字は、メリハリがないとぼんやりとした印象を与えます。「止め」「跳ね」「払い」の基本を意識しましょう。文字に抑揚がつき綺麗に見えます。さらに漢字の長い部分、短い部分にきっちり差をつけると、立体感も生まれます。字が活き活きと感じられるようになるでしょう。
手書きで仕上げるESだからこそ意識すべき注意点
間違えたら最初から書き直しが手書きESの鉄則
書き損じが生じた場合、新しいESに一から書き直す必要があります。二重線や修正液(テープ)の使用はNGです。ESは他の書類と比べ文字数が多いため、書き直しには大きな労力がかかります。できるだけ失敗を避けられるよう、罫線の書き入れや下書きを徹底しましょう。
消せるボールペンは水性のため手書きESに不適
消せるボールペンは水性です。滲みやすいだけでなく、温度変化でインクが消える可能性もあります。せっかく書いた文章を台無しにしないためにも、ボールペンはゲルインクまたは油性インクを使用しましょう。消せるボールペンは公的な書類に使うことはできないため、ESも同様に避けましょう。
下書きや罫線の消し忘れには十分注意!
鉛筆で書いた下書きや罫線が残された状態で提出すると、雑な印象を与えてしまいます。文字が二重に見え、読みづらくもなるでしょう。読み手への配慮を欠くことで、「会社に対して失礼」とみなされるかもしれません。一字一字丁寧に消す癖をつけましょう。
文字の装飾はNG
ESを目立たせるため、文字に装飾を加えるのはNGです。装飾のない綺麗な形で企業に渡すのがマナーだと考えましょう。文字を意図的に大きくする、太くするのも不適切です。強調したい部分を見た目で目立たせるのではなく、文章で伝わるよう工夫します。
手書きESはコピーしたら意味がない
手書きESは企業へ志望度の高さを伝える手段です。コピーを使い回したら、手書きにする意味がありません。企業研究をしっかりと行い、選考を受ける会社ごとに異なるESを用意しましょう。選考のたびに書くのが面倒なら、手書きは志望度の高い企業に絞り、他はパソコンを使用するのをおすすめします。
手書きESを企業に提出する方法
普通郵便やレターパックライトで郵送する
手書きESは郵送で送るのが最も簡単です。データに変換する必要がなく、書いた書類をそのまま送付できます。挨拶状とA4サイズの封筒を用意し、切手を貼って普通郵便で送りましょう。確実性を重視するなら、追跡サービスがある「レターパックライト」も便利です。受け取りにサインが必要な簡易書留や「レターパックプラス」は、企業にかかる手間を考えると不適切です。
手書きしたESを変換しメールに添付する
ESをメールで送るよう求められた場合は、スキャナー(またはスマホのスキャン機能)でPDFファイルに変換します。変換したファイルをメールに添付し、指定されたアドレスに送信しましょう。添付ファイルは写真(jpgやpng)ではなくPDF形式にするのがマナーです。スキャン時にファイル形式を「PDF」に指定します。
【リストあり】手書きES提出前のチェックポイント
- 誤字脱字はないか
- 文字の大きさは揃っているか
- 適切に改行を入れているか
- ESのコピー(スキャン)をとったか
- 必要書類は全て揃ったか
企業への提出前に、上記5項目を確認しましょう。ESは将来を決定し得る大切な書類です。一つのミスで書類全体が台無しにならないためにも、細部まで注意を払うようにしましょう。
誤字脱字はないか
手書きESはパソコンでの文書作成、紙への転記、下書き、本番と4度の校正の機会があります。そのため、パソコンのみの作成に比べ、誤字脱字が起こりづらい環境です。
しかし転記でのうっかりミスや、同音異義語の勘違いがないとは言えません。自分だけで校正を終わらせず、周囲の人にもお願いしましょう。
文字の大きさは揃っているか
完成した原稿を少し遠くから眺め、文字の大きさを確認しましょう。項目ごとに大きさが異なると、全体の統一感がなくなります。手書きの場合、枠の大きさや文量によって文字サイズが引きずれられがちです。大きさが揃わない場合は、新しい用紙に等間隔で罫線を引き、8割の高さを目安に書き直しましょう。
適切に改行を入れているか
文字がぎゅうぎゅうに詰まった原稿は読みづらく、読み手に配慮していると言えません。内容だけでなく、「読みやすさ」に焦点を当て改行を入れる癖をつけます。最後まで円滑に読んでもらえなければ、選考の土俵に上がれないことを強く意識しましょう。
ESのコピー(スキャン)をとったか
完成したESはコピーやスキャンで保存しましょう。面接に進んだ場合、ESの内容をもとに質問が行われるため、あらかじめ備えておくためにコピーを確認することが有効となります。
また、会社資料や企業研究ノートと一緒に大切に保管(保存)しましょう。郵送の場合、コピーを取り忘れると何も手元に残りません。十分な注意が必要です。
必要書類は全て揃ったか
郵送では挨拶状を忘れずに用意します。ESに限らず、「企業に書類を郵送するときには、必ず挨拶状を付ける」と覚えておきましょう。メールの場合は本文が挨拶の役目を担うため、別途書類を添付する必要はありません。
企業によっては、ESと同時に履歴書の送付も要求されるケースがあります。応募要項を確認し、必要書類の漏れに細心の注意を払いましょう。
手書き以外でESを作成・提出する方法
企業のWebフォームから入力しそのまま送る
企業の採用ページにES提出用のWebフォームが用意されている場合、作成・提出手段は当該フォームのみです。郵送やメールの利用はできません。
Webフォームは入力した内容がそのまま送信されるため、下書きが必須です。質問への回答をテキストやWordファイルで用意し、自分の回答をコピーしながら進めましょう。
パソコンで作成しPDFをメールする
テキストやMicrosoft Wordで作成したデータを、PDFファイルに変換してメールする方法もあります。ESはどのような手段で提出する場合も、テキストやWordで最初に原稿を作成するのが一般的です。「そのまま送れば良い」と考えれば、就活生にとって最も進めやすい手段と言えるでしょう。
ただし「ファイルをPDF化する」「メールソフトに適切に添付する」といった最低限のパソコンスキルは不可欠です。
手書きとパソコンのどちらでESを作成するか悩んだときは?
企業の指定形式に則るのが基本
ESの作成・提出手段に指示がある場合は従わなければなりません。異なる方法で提出しても、受け取ってもらえないでしょう。
提出手段のみ指定された場合は、作成の仕方は自由です。基本はパソコンで作成し、志望度や社風に応じて手書きにする工夫をします。
指定がなければパソコンでの作成・送付が一般的
ESの作成・提出手段に指定がない場合は、パソコンで作成し、メールで送るのが一般的です。作成にも送付にも時間がかかりません。
「ESは手書きが最適」「重要書類は郵送に限る」といった考えを持つ企業は、作成・提出方法に指示を出すはずです。指示がなければ「内容重視」と捉えて差し支えないでしょう。手段にこだわる必要はありません。
志望度の高さや企業の特徴を鑑みて手段を選ぶ
手書きを選ぶポイントは、志望度の高さと企業風土です。志望度の高い企業には、熱意をより強く伝えるために手書きを選択します。しきたりや伝統を重んじる企業にも、手書きで送付すると良いでしょう。
反対に、積極的にパソコンでの作成を選ぶべきケースもあります。ベンチャーやスタートアップなどの平均年齢が若い企業は、効率的な手段を好む傾向にあるため、紙のESを提出するメリットはほぼないでしょう。
ITやクリエイティブ系など高度なパソコンスキルが要求される業種も、パソコン向きです。手書きだと「パソコンが十分に使えないのでは」と誤解を与える恐れがあります。
手書きが評価されない会社があることも、念頭に入れる必要があります。
強く志望する会社にこそ手書きESで想いを伝えよう
手書きのESは高い志望度や真面目な印象を与えられます。強く入社を希望する企業へ送るESは、手書きで作成するのもひとつの手です。
所属する会社を特別に評価され、悪く感じる採用担当者はいません。自社に誇りを持ち仕事をしている人ほど、手書きESに良い印象を持つはずです。
選考を受ける企業の全てに手書きをする必要はありません。「どうしても入社したい」と強く思える会社に出会ったら、心を込めて手書きしましょう。丁寧に仕上げることで、結果を左右する大きな武器になります。