同じ金融業界の中でも「銀行(メガバンク)」と「地方銀行」には大きな違いがあります。
地方銀行を志望する場合は、この違いを明確にして、「地方銀行ならでは」の志望動機が求められます。他の銀行にも当てはまる志望理由を伝えてしまうと、マイナスな印象を与えてしまう恐れがあるため、注意が必要です。
まずは金融業界や銀行業界、メガバンクとの違いなどを正しく理解し、地方銀行の特徴をふまえた志望動機を作成していきましょう。
目次
地方銀行の役割を理解しよう
地域密着型のサービスを提供している地方銀行は、銀行業務以外にも地域のためにさまざまな事業を展開しています。銀行業界の応募者には、地方銀行だけでなくメガバンクを視野に入れる学生が少なくありません。そのため、地方銀行に応募する際は、採用担当者が納得できる志望動機の作成が必要です。
採用担当者の興味を惹くためには、地方銀行とメガバンクの違いを明確にした志望動機の作成が重要になります。地方銀行・メガバンクのどちらにも当てはまる内容では、応募の熱意や意欲が感じられません。
メガバンクとの違いを明確にするために、地方銀行の役割を理解することから始めましょう。特徴や業務内容、動向など、地方銀行についての理解を深めることでメガバンクとの違いがはっきりとします。
「地方銀行に行きたい」という意欲が伝わる志望動機を作成することで、採用通過率が上がるはずです。そのために、地方銀行ならではのポイントを頭に入れていきましょう。
地方銀行とは?
地方銀行は「第一地方銀行」「第二地方銀行」に分類されます。第一地方銀行とは全国地方銀行協会に加盟する地方銀行です。一方、第二地方銀行は1989年以降に旧相互銀行から普通銀行に転換した銀行であり、第二地方銀行協会に加盟しています。
ともに普通銀行で業務内容に違いはありませんが、加盟団体が異なり、共同事業や協力体制に違いがあります。また、第一地方銀行よりも第二地方銀行は経営規模が小さいことが特徴です。
地方銀行の特徴として、特定の地域と強い結びつきがあり、地域経済に大きな影響力を持っていることが挙げられます。将来性のある地域企業に融資を行い、金融面から支える仕事をしています。
地域に暮らす人々には、住宅ローンや教育ローンなどのサービスを提供し、地域経済の活性化に一役買っています。近年では銀行業務以外にも、地域経済活性化のために、地方創生活動をする地方銀行も目立ちます。
地域密着という強みは、他の金融機関にはない魅力といえます。地方銀行はメガバンクに比べると地味な印象がありますが、地方でのネームバリューは大きく、多数支店があるため地元民であれば知らない人はいないほどです。地方によってはメガバンクの支店がないこともあります。
地方銀行とメガバンクの違い
地方銀行 | メガバンク | |
本店 | 各都道府県の主要都市 | 東京・大阪などの大都市 |
支店 | 地元エリア中心 | 国内全域および海外 |
営業エリア | 本店がある都道府県内および近隣都道府県 | 全国および世界各地 |
特徴 | 地元の大手や中小企業を中心に取引 | 大手上場企業を中心に取引 |
上記のとおり、地方銀行とメガバンクでは対応しているエリアや、取引相手の特徴が異なります。
地方銀行は各都道府県に本店があり、特定の地域で営業する銀行です。地方銀行はメガバンクに比べると営業範囲は狭くなりますが、その分ひとつひとつにおける対応がきめ細やかになる傾向があります。
一方、メガバンクは全国・海外まで営業範囲が及びます。そのため、スケールの大きな業務に携わりたいなら、メガバンクが向いている可能性があります。
地方銀行にはメガバンクと異なる大きな特徴が3つあるので、チェックしていきましょう。
地域密着型
地域に密着しているといった点では、メガバンクよりも地方銀行が優れています。地元の企業や学校などにおいては、メガバンクよりも地方銀行をメインバンクにしていることが珍しくありません。
地域密着型だからこそ、利用者と行員が顔馴染みになりやすく、アットホームな雰囲気で働けるメリットがあります。特定のエリアに根付いていることで、地域への理解度が高く、地域に特化した金融サービスを提供しています。
全国転勤が少ない
メガバンクの行員は全国規模の転勤があり、海外支店に転勤になることも珍しくありません。基本的には、支店長で2年、営業で3~5年の頻度で転勤になることが多いです。
一方、地方銀行でも転勤はありますが、営業エリアが限られているため、転勤になっても近隣の県です。とはいえ、都道府県内の転勤になることも多く、引っ越しを伴わないケースが少なくありません。
そのため、土地に根ざした働き方が実現できるのは、地方銀行で働く魅力のひとつです。プライベートの面でも、マイホーム購入などがスムーズになり、家族に負担をかけないメリットがあります。
年齢問わず幅広い業務に携われる
地方銀行の場合、若い世代でも幅広い業務に携われる特徴があります。幅広い業務内容についてはメガバンクでも同様ですが、規模が大きいと働く人数の数も多くなります。地方銀行はメガバンクほど行員の数が多くないため、さまざまな業務に携わるチャンスが多く巡ってくるのです。
また、地方銀行は中小企業がおもな取引相手ということもあり、メガバンクで働くよりも経営者と直接話す機会が増えていきます。さまざまな経営者と会話することで、経験から学べることが多く、仕事や人生に良い影響をもたらすでしょう。
地方銀行の業務内容
①預金業務
②貸付業務
③為替業務
地方銀行の業務内容は「銀行の3大業務」と呼ばれている、上記の業務が中心になります。これはメガバンクも同様の業務になります。
預金業務
預金業務は、お金を預かり口座を管理する業務です。地方銀行では個人・法人の顧客からお金を預かり、口座を管理しています。顧客が預金するには窓口やATMを利用するため、銀行の窓口で働いている行員がおもに携わる業務です。
地方銀行の預金業務は企業や地域住民の暮らしを支えており、地域需要が多いといった特徴があります。支店やATMの数が地方の至るところにあるのは、需要が高い証拠といえるでしょう。
貸付業務
貸付業務は、企業や個人にお金を貸付する業務を指します。企業や個人に融資すると、貸出金利が発生します。その利息分が地方銀行の利益となります。
融資をする企業を調査したり、営業したりすることが、おもな業務内容です。原資は顧客から預かったお金のため、融資した資金を回収するためにも、審査部門で慎重な審査が必要となります。
為替業務
為替業務は、現金ではなく口座間の資金移動によって行う業務です。公共料金の自動振り込みは為替業務のひとつであり、現金のやり取りをしないことが為替業務の特徴になります。ほかにも、年金や株主配当金の受け取りなども該当します。
為替業務も窓口やATMを利用する顧客が多いため、窓口にいる行員がおもに対応をします。
地方銀行の動向
志望動機を書く上で動向を知ることは非常に重要です。動向をふまえた内容を志望動機に書くことで、業界で働く意欲をアピールすることができます。また、面接対策としても役に立ちます。
地方銀行は金融業界に属しているので、金融業界全体の動向もチェックするのがおすすめです。動向を調べるには、インターネット情報の他に、業界の専門誌や新聞、金融庁が公開する資料など、さまざまな手段があります。中でも地方銀行の動向を3つ紹介します。
業界再編
地方銀行では業界再編が進められています。人口減少や景気悪化などの影響で地域経済が悪化すると、地方銀行の貸出業務が減少し、利益を生み出せない状況になります。この状況を打開するために、政府と日銀支援のもと、地方銀行再編が加速しています。
地方銀行は合併や統合を進めることで、顧客や資金増大を目指しています。また、業務提携により新しい価値観が取り入れられ、新規サービスの幅を広げられるメリットがあります。
しかし、異なる地域の地方銀行同士が合併する場合、地元の銀行として親しまれている銀行名やブランド名を変更することで、営業面においてデメリットが生じることがあります。
新事業の取り組み
再編以外の打開策として、地方銀行は地域経済を活性化させるために新事業の取り組みを行っています。例えば、以下の地方創生活動が新事業の取り組みに該当します。
【観光支援】
- コロナ禍で業績が悪化した飲食業や観光業の応援
- 築150年の古民家を活用したゲストハウスの事業化支援
【農業活性化】
- 地域ブランド農産物の開発
- 新しい農業ビジネスモデルの構築
他にも、人材事業や移住者支援を行う地方銀行が少なくありません。こうした新事業の取り組みは、これからさらに求められていくでしょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して生活や暮らしをよりよいものに変えていくことを指します。
経済産業省による2018年の調査では、金融機関のレガシーシステム利用率は100%という結果でした。本来、レガシーシステムは部分的に活用されるものです。銀行業界はDX化が遅れていると言われていることから、地方銀行でも積極的にDX化を進めています。
電話やメールの問い合わせによる顧客対応には、AI技術を取り入れ自動化することで、行員の負担を減らしコストカットを行っています。また、キャッシュレス決済の導入もDX化に該当する取り組みです。
DX化に関心がある学生は、志望動機でアピールするとポテンシャルを期待される可能性があります。
地方銀行が求める人物像
責任感がある
銀行は顧客の大切なお金や情報を取り扱っています。小さなミスでもトラブルになり得るため、責任感を持って業務に取り組むことのできる人物が求められます。
基本的に受け身で言われたことしかこなさない人物だと、責任感に欠けるため業務を任せることができません。
また、地方銀行を利用してもらうには、顧客との信頼関係が必要不可欠です。顧客に与える印象が大切なので、コミュニケーションのなかで真面目さや几帳面さが伝わる人物である点も重要です。
主体性がある
地方銀行では厳しい経営環境や資金運用難など、折り合いのつかない課題が少なくありません。多くの問題を抱えているため、問題解決に積極的に取り組める人物が求められています。そのためには、地域発展のために自ら打開策を模索し、周囲と協力して解決を目指せる主体性が重要です。
目標達成や課題解決に喜びを見出せる人なら、地方銀行で活躍できる可能性が大いにあります。反対に、指示されたことだけをしたい人や、同じ業務を繰り返したい人には不向きといえるでしょう。
真面目である
さまざまな知識を必要とする地方銀行員は、仕事や勉強に一生懸命励む真面目さも求められる条件のひとつです。行員は専門性の高い業務を遂行するために、知識やスキルが必要です。配属された部署によって必要な知識は異なり、取り扱う金融商品や法令についても理解が求められます。
商品や法令が新しくなれば、その都度勉強をして身につけなければいけません。経済動向にも意識を向ける必要があり、常に勉強を続けられる姿勢が重要だと考えられています。
難しい仕事に直面しても投げ出すことはなく、確固とした意志で目的のために業務を遂行できる真面目な力がある人物が、地方銀行では求められています。
信頼関係を築くことができる
地方銀行では、顧客と深い信頼関係を築ける人物が求められます。責任感や真面目さがあっても、問題が起こったときに人に責任を押し付けたり、人任せにしたりする人材は信頼を得られません。起こった問題に責任を持ち、解決できる方法を考え、行動に移す主体性のある人物こそ信頼するに値します。
信頼されるためには、顧客との会話の中で顧客のニーズを汲み取り、求める解決策を提案できるような信頼性の備わっている行動が必要です。顧客のために考えて行動できる行員であれば、安心して相談してもらえるようになります。
地方銀行の志望動機を書くときの3つのポイント
なぜ地方銀行を志望したのかを明確にする
なぜメガバンクではなく地方銀行を選んだのかについては、採用担当者が注目するポイントです。メガバンク以外にも、証券会社や保険会社など、他にも進む道はあったはずです。
応募した地方銀行ではなくても当てはまる志望動機の場合、業界研究不足とみなされ、応募意欲がないと判断される可能性があります。
そのため、地方銀行を選んだ理由は、ESの志望動機で明確に記載するようにしましょう。応募する地方銀行を目指すきっかけとなったエピソードがあれば、志望動機に説得力が増します。
応募する地方への思いをプラスする
地方銀行は地域に根付いた働き方をしているので、応募する地方への思いをアピールすることでポジティブな印象を与えられます。
地方の思いを考えたとき「地元が好きだから」といった理由は、ありきたりな表現になるので他の応募者と差別化ができません。
県外出身者が応募する場合は、なおさら採用担当者に地方を選んだ理由を納得させる必要があるでしょう。幼い頃の思い出などがない場合は、その地域特有の祭りやイベントに目を向けるのもアピール方法のひとつです。
入社後の意気込みを伝える
志望動機は、入社後に活躍できる人材なのかを見極めるための重要な判断材料です。採用担当者は応募者が銀行にどのような働きで貢献してくれるのかを知りたいと考えています。
そのため、これまでの経験から学んだことを、実際の業務でどのように活かしていくかを伝えましょう。スキルや資格などの強みがあるなら、積極的にアピールすると採用通過が有利になる可能性があります。
地方銀行を目指している理由を今一度考え、入社後に成し遂げたい目標を考えてアピールしてみましょう。
魅力的に伝える地方銀行の志望動機の書き方
①志望した理由
②根拠となる具体的なエピソード
③入行後のビジョン
志望動機を作成するときは、まず始めに地方銀行を志望した理由を伝えます。なぜ地方銀行を志望したのか、魅力を感じているのかを簡潔にまとめることで、採用担当者の興味を引くことができます。
続いて、志望するきっかけとなったエピソードを具体的に説明します。応募する地方銀行の地域にまつわるエピソードは、印象アップにつながるので思い出してみましょう。地域に関わった経験があると、地域に貢献したい熱意に説得力が増します。
自分の強みをからめて志望する場合、数字を強みにするのは避けましょう。なぜなら、地方銀行で仕事をする以上、数字が強いのは当たり前と判断されるからです。他の応募者と差別化するには、簿記1級や珠算で段を保有しているなどのスキルが必要です。
最後に、入行後のビジョンを伝えます。これまでの経験や自分の強みを銀行でどのように活かせるのかを書き、積極的に貢献していく姿勢をアピールしましょう。
地方銀行の志望動機例文
地元の地方銀行を志望する例文
貴行を志望したのは、ふるさとである〇〇の経済発展に貢献したいからです。
大学卒業まで〇〇で育った私は、小さい頃によく商店街を訪れていました。夏は夜店、秋はお祭りなど、参加している人の活気ある姿を見て元気をもらっていました。近頃は商店街に活気がなくなっているため、以前のように活気あふれる商店街になるための手助けを行いたいと考えています。
貴行では、起業家を支援する活動が多いと認識しております。特に、新しく事業を始める方を対象にした情報提供や商品開発などのサポートに大変魅力を感じ、地域を支える姿勢に強く感銘を受けました。
私は学生の頃にボランティア活動をしており、幅広い年代の人たちと交流する機会が多くありました。そこで培ったコミュニケーションスキルを活かし、お客様に信頼される行員を目指したいです。(350字以内)
初めに結論として志望動機を記入することで、採用担当者が内容を理解しやすい構成になっています。
続いて、具体的な根拠の説明ができているため、志望動機に説得力があります。その後、応募した地方銀行の魅力を伝えていることで、メガバンクとの差別化や、応募した地方銀行でなければならない理由がわかりやすく説明されています。
最後は自分の経験から得た強みを、入行後にどのように活かせるのかをうまくまとめられている例文です。
地元以外の地方銀行を志望する例文
私は、貴行の地域を思う心と熱い気持ちを持ち合わせている点に感銘を受け、志望いたしました。
私の地元は〇〇ではありませんが、〇〇大学に通っていたため、4年間この土地で過ごしていました。そこで、温かく親切な方が多い〇〇に恩返しをしたい、生活の支えになりたいと考えるようになりました。
貴行の「お客様や地域のために」という想いが強い社風や、人事の方や行員の方の温かい人柄に大変魅力を感じております。また、行員の方々が生き生きとされて働いているのを見て、私も貴行の一員になって働きたいと思うようになりました。
また、貴行は外報活動を通じて安心・安全な街を目指すなどの地域社会への取り組みを行っており、〇〇に貢献するための、さまざまな仕事ができると考えました。入行後は、〇〇の方のように親切心を持ち、地元の方に寄り添ったサービスを提供したいです。(400字以内)
応募する地方銀行が地元ではない場合は、地元の地方銀行の志望理由よりも、なぜ選んだのかを採用担当者に伝える必要があります。
例文では、地域の人や貴行で働く人々の温かさに魅力を感じています。地域特有の魅力が伝われば、採用担当者に納得してもらいやすい志望動機になるでしょう。
最後は応募した地方銀行の特徴をからめることで、他の地方銀行では得られない強みが伝わる文になっています。もう少し自分のアピールポイントを伝えることで、採用担当者に採用するメリットを感じてもらえるかもしれません。
地方銀行の志望動機に関するよくある質問
地方銀行は地元の人が有利に採用される?
地方銀行は地域密着型なこともあり、地元の人が有利に採用されるといったイメージがあるものです。実際そのようなことはなく、県外出身者でも多くの人が地方銀行で活躍しています。
地方銀行が求めているのは地元出身者ではなく優秀な人材なので、優秀なら県外出身者でも関係なく積極的に採用します。
しかし、実際地方銀行には地元出身者が多いのも事実です。地元の地方銀行に応募する学生が圧倒的に多いため、結果的に地元出身者が多くなっていることが理由なので、決して地元が有利ということではありません。
県外出身者でも地方銀行に採用される可能性は十分にあるため、地元じゃないからと諦めずに積極的にアピールしていきましょう。
地方銀行の情報の集め方は?
地方銀行の志望動機を作成するには、応募する地方銀行を調査して企業理解を深めることがポイントです。地方銀行の情報は、公式ホームページや各種ニュース、インタビュー記事から収集できます。
また地方銀行だけでなく、地方についての情報も調べることで熱意のアピールに役立ちます。地域経済誌や新聞の地方欄などをチェックすると、その地域の旬の情報を知ることができます。抱えている問題や課題も見えてくるので、自分なりに解決法を考えてアピールすると良いでしょう。
地方銀行ならではの魅力を志望動機でアピールしよう!
地方銀行の志望動機を作成するときは、どの銀行にでも当てはまる理由ではなく、地方銀行ならではの魅力を伝えることがポイントです。
どのような内容を記入すればいいか悩んでいる人は、まず念入りに企業研究を行いましょう。地方銀行の魅力が伝わる志望動機なら、応募意欲が伝わりやすく採用に近づける可能性があります。
他の応募者と差別化するためには、具体的なエピソードを盛り込み、オリジナリティを出すことが大切です。自分の強みを入行後にどのように活かせるのか、しっかりとアピールしていきましょう。