自己PRの書き出しは、企業へ与える印象を大きく左右する要素の一つです。同時に自己PR本文の方向性を決めるものでもあるため、読み手の心を掴むような文面にする必要があります。しかし、「重要なものである」と意識すればするほど、どのような書き出しが適切なのか悩んでしまいがちです。

今回は魅力的な自己PRの書き出しにするためのコツ・注意点などを解説しています。例文を参考にしながら、担当者の目を惹く書き出しを考えてみましょう。

なぜ自己PRの書き出しが重要なのか?

自己PRの書き出しは、読み手の興味関心を刺激できるメリットがあります。「どのような自己PRが書かれているのだろう」と興味を持ってもらえれば、その後の文章をじっくり読んでもらえる可能性が高くなります。結果的に、他の志望者と差別化することも可能です。

また、書き出しがありきたり、意味が分かりにくいなどのマイナスポイントがあると、その後の文章の印象まで悪くなる恐れがあります。採用担当者は何枚もの履歴書やESなどに目を通すため、書き出し一つで印象に残りにくくなってしまいます。

そのため、書き出しはわかりやすく簡潔に、興味を持ってもらえるような文章を意識して作成することが大切です。

自己PRが重要視される理由

人柄を理解するため

自己PRには、志望者の考えや経験談などが細かく書かれているため、人柄を理解できるメリットがあります。採用担当者は、どのような人物なのか深く理解したうえで採用したいと思っています。

自己PRで人物像を具体的に伝えることで、担当者に企業で働くイメージをしてもらいやすくなり、結果として書類選考での判断材料になります。どのような文章にするかによって、採用担当者へ与える印象を左右するからこそ、魅力的な自己PRを書く必要があります。

入社後に貢献してくれる人物か見極める

人柄を理解するのと同時に、「入社後に貢献してくれる人物か」もチェックされています。やる気に満ち溢れていても、企業が求めているスキルに合致していなければミスマッチを招いてしまう恐れがあります。

企業は「せっかく自社で働くのであれば、長所・強みを活かして働いてほしい」と考えています。そのため、自己PRに書かれている長所・強み自社で発揮できるか、自社の発展に貢献できるかを見極めています。

自己PRの書き出しを考えるステップ

結論(長所・強み)から始める

書き出しは結論から書き、長所・強みを明確にアピールしましょう。結論から自己PRをスタートすると、考えが明確に伝わりやすいものです。また内容の方向性が定まるため、その後の文章も書きやすくなります。

結論である長所や強みなどが最初に書かれていないと、採用担当者は何をアピールしたいのかわからないまま文章を読み進めることになります。そのため、回りくどい印象を与えたり、自己PRポイントがどこなのか全く伝わらないまま読み終えてしまう可能性もあります。

結論から伝えるのは、読み手側への配慮でもあるということを意識しておくと良いでしょう。

分かりやすい文章を心がける

端的で分かりやすい文章を意識して書いていきます。回りくどい表現や適切ではない言葉遣いなどは、読み手にストレスを与えます。特に採用担当者は、他の志望者の書類にも目を通しているため、スムーズに読める文章を求めているものです。

分かりやすい文章にするためには、一文に対する情報量が多くなりすぎないよう意識してみてください。また、分かりにくい遠回しな表現も避けましょう。これらのポイントをおさえれば、端的に読み手へ意図を伝えられます。

文末は言い切る

書き出しの文は、必ず最後に言い切る形にしましょう。最初から「〇〇だと思います」や「〇〇だと自負しています」といった書き方で始めると、アピールポイントがインパクトに欠けてしまい、伝えたい内容がうまく伝わらなくなってしまいます。

「私の強みは〇〇であることです」のように、端的かつ断定する形で自己PRを始めることで、文章の読みやすさや自信の伝えやすさを向上させられます。

自己PRでの書き出しのコツと注意点

書き出しと矛盾しないようにする

書き出しと本文が矛盾していると、読み手は混乱してしまいます。結果的に何が自己PRなのかも曖昧になり、せっかくの強みをアピールできません。必ず本文を書き終えたら、書き出しと矛盾していないか確認しましょう。

たとえば書き出しで「表現力」が強みであると記載しているのに、本文で「資格取得に向けて勉強し、結果を出せるよう努力した」と書いてしまうと、目標達成力のアピールになってしまいます。

矛盾する場合は書き出しの内容に合わせて本文を書くか、もしくは本文の内容に合わせて書き出しを変更し、必ず一致する内容に仕上げましょう。

ネガティブな内容はNG

自己PRは、自分の強みや長所を採用担当者にアピールできる場です。ネガティブな内容はマイナスイメージを与え、強みや長所の印象が薄くなったり、伝わりづらくなったりします。

「人と接することは苦手ですが、一人でコツコツ作業をするのは得意です」のように、たとえ書き出し以降はポジティブな内容だったとしても、出だしのイメージは読み手に強く残ってしまいます。

せっかく自分の良さをアピールできる機会なので、ネガティブなことではなくポジティブなことから書き出しましょう。

箇条書きは使わない

箇条書きは使わず、自分の言葉で自己PRを伝えましょう。箇条書きは情報をまとめて記載するために有効な手段です。しかし自己PRでこの方法を使ってしまうと、ただ情報を羅列しただけに見えるため、採用担当者にマイナスイメージを与えてしまいます。

また、情報が羅列されているだけでは、読み手の印象に残りにくいです。アピールしたいポイントは一つに絞り、文章で的確に伝えるよう徹底しましょう。

説得力のあるエピソードを交えると効果的

強みの根拠となるエピソードがあれば、積極的に書き出しへ加えましょう。たとえばアルバイト先で売り上げナンバーワンになったエピソードなどがあれば、書き出しで簡潔に伝えるのが良いでしょう。

「私は学生時代のアルバイトで地域売り上げナンバーワンになった経験から、目標達成力が自身の強みだと考えます。」のように、エピソードが書き出しにあると読み手の印象に残りやすくなり、「その後は何が書いてあるのだろう」と興味を持ってもらえます。

他の志望者と差別化できるポイントにもなるので、エピソードがある場合は書き出しに記載するのがおすすめです。

誇張表現は避ける

自己PRは自分の良さをアピールするものですが、だからといって誇張表現をするのはNGです。あまりに誇張された内容だと、自己PRの内容が嘘になってしまいます。

どれだけ強みや長所をアピールしたくても、真実だけを的確に伝えることが大切です。誇張された内容が真実だと思われると、入社後にミスマッチが発生するリスクも高くなり、企業にとっても自分にとってもマイナスにしかならないため、注意が必要です。

企業の求めることを意識する

自己PRの内容は、応募する企業に合わせて言い回しや取り上げるエピソードを変えるのが基本です。その企業の社風や職場の雰囲気に合わないアピールポイントを前面に押し出しても、好印象は得られません。

例えば、金融系であれば「注意深さ」を、IT系であれば「粘り強さ」をアピールするなど、自分の性格や特徴を企業に合った言い回しで述べることが必要です。

もし、募集要項やホームページに「求める人物像」が記載されていれば、それを参考にして自己PRの内容を寄せることで好印象を期待できるでしょう。

自己PRの書き出し例

忍耐力を強みとする場合

例文

私は忍耐力を強みとしています。イギリスへ留学した経験がありますが、その際日本と海外では文化が違うことを知り、言葉の壁を乗り越えるため努力しました。

留学は学生時代の経験として差別化しやすいため、自己PRとして使いやすいポイントです。

しかし「海外では言葉の壁がある」という点は、誰にでも容易に想像できることのため、ありきたりな表現になりがちです。他の留学経験者が書かないような書き出しを意識すれば、自己PRの差別化ができるでしょう。

たとえば「私は道路で育つ野菜です」「石の上にも三年です」など、忍耐力を表すオリジナルのキャッチフレーズを加えると、読み手の興味関心を刺激できます。書き出し以降は留学先でどのように忍耐力を発揮したのかを書く流れを作れるため、自己PR全体の文章に統一感も与えられます。

柔軟性を強みとする場合

例文

私は柔軟性を強みとしており、カメレオンのような適応力があることを自負しています。飲食店で接客応対のアルバイトをしていましたが、そこではお客様の状況に合わせて柔軟に行動することを意識しました。

「カメレオンのような適応力」というオリジナルのキャッチフレーズを加え、個性的な書き出しになるよう工夫されています。柔軟性は「相手の状況に合わせて行動できる」というアピールにつながるため、企業に良い印象を与えられる強みでもあります。

より魅力的な書き出しにするには、具体的にどのようにバイトで行動したのかを書き加えるのがおすすめです。柔軟に行動するために何をしたのか書き出しに加えれば、その後は具体的な内容や結果などの説明につなげられます。

ポジティブさを強みとする場合

例文

私は失敗したときも前向きに考え、改善に向かって努力するポジティブ人間です。困難な状況でも落ち込まずに努力できるため、過酷な状況でも耐えられることを強みとしています。

「ポジティブ」「前向き」というワードはその人の気持ちを表す言葉のため、具体性がなく曖昧な書き出しになってしまいがちです。

そこで例文では、「失敗しても改善に向かって努力できる」「過酷な状況でも耐えられる」など、ポジティブさをイメージできるような内容が書かれています。

ポジティブさを強みとする場合、前向きに努力できることを強調するだけではなく、具体的にどのような取り組みができるのかも示しましょう。たとえば例文で「失敗したときも前向きになり」と書かれているため、改善に向かってどのようなことをしたのかも伝えるのが効果的です。

積極性を強みとする場合

例文

私の強みは積極性です。ボランティア活動でイベントを開催する際、メンバー内で意見が思うようにまとまらなかったときに、私が中心となって企画を作成しました。その結果イベントが成功し、地元のニュースでも取り上げられたことがあります。

積極性の強みとして、ボランティア活動での経験をアピールできています。書き出しの時点で、積極性が伝わるエピソードが簡単に書かれているため、何をアピールしたいのかが明確に伝わる例文です。

また、地元のニュースでも取り上げられたという結果も示すことができています。リーダーシップのある人材を求めている企業にとっては、良い印象を与える自己PRと言えるでしょう。その後の文章では、積極性があることを強調できるエピソードを深掘りすることで、説得力を持たせられます。

他の就活生と同じにならない書き出しにするためには?

キャッチフレーズを活用する

キャッチフレーズが書き出しにあると、読み手にインパクトを与えられます。また、キャッチフレーズは他の志望者の自己PRと差別化でき、印象に残りやすくなるメリットがあります。キャッチフレーズを積極的に活用すれば、ただ強み・長所を伝えるだけではなく、個性までアピールできるでしょう。

キャッチフレーズを考える際は、自身の強み・長所を別の言葉に言い換えます。たとえば吸収力があることを吸収性のあるスポンジに例えたり、縁の下の力持ちであることをサポーターであるバックダンサーという言葉で表現したりなどです。

あえてキャッチーなフレーズを付け加えることで、採用担当者の記憶に残りやすくできます。また、あえて「なぜそのキャッチフレーズなのだろう」と疑問を持たせるような言葉にするのも効果的です。

強みが明確になるよう意識する

アピールポイントとなる強みは明確に言葉にしましょう。強みが明確だと、内容の具体性が強調でき、文章全体が分かりやすくなります。

また、「なぜそれが自分の強みなのか」という理由も明確にしなくてはなりません。たとえば真面目であることを自己PRにする場合、説得力のある内容を具体的に書く必要があります。ただ「真面目に行動した」「周囲からも真面目だと言われた」と繰り返すだけでは、長所のアピールとしては弱い印象を与えます。

強みを発揮したエピソードや強みであることを裏付ける関連性のある内容紐づけて説得力を持たせることを意識しましょう。

数字・数値などの結果がある場合は記載する

数字・数値など、具体的に表せる結果を出している場合は、積極的に活用しましょう。具体性のある数字・数値は、自己PRに説得力を与えます。

たとえば、コミュニケーションスキルを磨くためにバイトで接客応対を頑張った結果、職場で評価された経験がある場合、「お客様に従業員の接客応対アンケートを取った結果1位を取ることができた」「丁寧な接客であると表彰され、バイトリーダーに昇格した」など、具体的に結果を記載すると強みがより明確になり効果的に伝えることができます。

自己PRの書き出しで印象が変わる

自己PRの書き出しをどのようにするかで、読み手に与える印象が大きく変わります。「どのような人物なのか」「何が書かれているのか」など、興味を持ってもらえる自己PRにするためには、まず書き出しを工夫しなくてはなりません。

他の志望者と同じ長所・強みだったとしても、全く異なる書き出しになるよう心掛けましょう。書き出しで差別化ができれば、採用担当者に強い印象を与えられます。キャッチフレーズを加える、数字・数値を記載するなどの工夫をして、自分だけのオリジナリティが溢れる書き出しを生み出してみてください。

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