志望動機として「社風」を挙げるのは珍しいことではありません。社風が合わなければ働き始めてから負担になることもあり、そのような事態は企業としても望んではいません。そのため、事前に企業研究をして社風を理解し、その上で社風を理由としているのであれば、良い印象を与える材料にもなるでしょう。

この記事では、志望動機で社風を盛り込む際のポイントや注意点を解説します。記事の後半では、実際に社風を志望動機にした例文を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

社風を志望動機に挙げてもいいのか

企業が持つ独自の文化や風土、価値観といった要素を総称して「社風」と呼びます。従業員の行動様式や意思決定の基準、コミュニケーションの方法といった社内のあり方が反映されることで、企業ごとに違った独自の社風が形成されます。

こういった社風を志望動機として挙げるのに問題はありません。企業を選ぶ際、製品やサービスの魅力はもちろん、社風は非常に重要な要素であると言えます。応募者にとって、自分が働く環境が自己の価値観キャリアプランに合致しているかどうかは、長期的に仕事で成果を上げ続けるための鍵となります。

経営理念や社員の働き方、チームワークの様子など、自分が重視する社風のポイントを志望動機に盛り込むことは、積極的な姿勢をアピールする上で有効でしょう。社風を盛り込むことは人事担当者に対し、入社後にその企業の一員として貢献したいという真摯な気持ちを伝える絶好の機会でもあります。

ただし、社風に惹かれた点だけをアピールするのは逆効果です。それ以外にも企業独自の事柄などを挙げ、多面的な志望動機にするようにしましょう。

志望動機に社風を盛り込むメリット・デメリット

メリット

他社との最別化がしやすい

志望動機に社風を取り入れることで、他社との差別化を図れます。同じ事業をしている企業でも社風は違ってきます。社風を取り入れることによって、他社と違った内容の志望動機を作成できるでしょう。

例えば「業界内でも〇〇があるところに魅力を感じている」など、多くの企業がある中でどうしてこの企業を選んだのか、といった内容をアピールすると他社と差別化を図れます。社風を挙げることで、志望度の高さをアピールできるでしょう。

企業をしっかりと理解している

志望動機に企業の社風を盛り込むことで、企業をしっかりと理解しているといった印象を残すことができます。企業の社風を分かっているということは、その企業のビジョンや価値観に共感していることを意味します。

企業を理解することで、志望動機を具体的に述べることができるでしょう。また、企業の社風に合った働き方や人間関係を求めることができるため、自分にとって理想的な環境を見つけることができます。ほかにも企業をしっかりと理解することで、自身の熱意や関心を示すことができます。

入社した後のミスマッチを防げる

入社前に企業の文化価値観を理解し、それに合致する志望動機を示すことで、自身がその企業で働くことに適性や意欲を持っていることをアピールできます。社風と自己イメージが合わない場合は、入社後のモチベーション低下やストレスの原因になる可能性があります。

ほかにも、もし入社してすぐに退職となっては、企業にとっても採用した意味がなくデメリットでしかありません。

社風を分かっていると、人事担当者は適切な人材を採用することができ、入社後のミスマッチを減らせます。

デメリット

ビジョンが不明確

企業側は学生の働くビジョンを確認したい場合が多いです。社風を志望動機に盛り込むと、そういった学生のビジョンを把握しにくいでしょう。例えば「チームワークの良さが魅力的だと思い貴社を選んだ」だと、内容が抽象的過ぎてビジョンが分かりません。

どのような環境で働きたいのか、どのような価値を提供したいのかを明確にすることで、志望先企業との相性将来の可能性を見極めることができます。社風を取り入れる場合、具体的なビジョンを絡めながら書くと好印象のアピールに繋がるでしょう。

ほかの学生と差別化を図るのは難易度が高い

志望動機に社風を取り入れるデメリットとして、多くの学生が同じような志望動機を持っているため、ほかの学生と差別化するのが難しい場合が多いです。志望動機に社風を盛り込むなら、ほかの学生が思いつかないようなことを書くのが重要です。

例えば、企業説明会での感想や社風についての感想を取り入れるのが効果的でしょう。ほかの学生と差別化を図るためにも、まずは企業説明会などに参加して話を聞いてみるのをおすすめします。

社風を志望動機に盛り込む際のポイント

社風に対する具体的な内容を盛り込む

社風を志望動機に盛り込む場合は、具体的な内容を記載することが重要です。単純に「貴社の社風に共感した」のみでは、抽象的すぎて分かりにくいでしょう。社風をどのように分析して解釈し共感したのか、具体的に記載するのが大切です。

例えば「この会社のビジョンである世界をより良い場所にするという目標に大きく共感しました」などのように具体的に記載すると、人事担当者に分かりやすく最後まで目を通してもらいやすくなります。

社風に対しての自分の考え方を盛り込む

志望動機を書く際、社風に対しての自分の考え方を盛り込むのも大切です。社風を交えつつ自分が入社したらどのように活躍できるかを記載するといいでしょう。具体的には「コミュニケーションを大切にし、チームワークを重視する風土は私の価値観と合致しており、積極性を発揮できる」といった内容をアピールするようにしましょう。

また、自身の考え方や価値観についての自己分析をしっかり行うことが重要です。自分がどんな風に働きたいのか、どのような環境で成長したいのかを明確にしておくと、より志望動機を具体的に記述することができます。

社風によってどのように活躍できるかを記載する

活躍できる社風を見つけるには、自分とマッチした社風の理解と見極めが重要です。まずは、どのような社風が自分にとって合っているのかを明確にする必要があります。これには、自己分析が役立ちます。自分の強みや価値観を把握し、それに合う企業の社風を見つけることが重要です。

具体的には「社員を思いやる環境の中で、自分のコミュニケーション能力を発揮し、良い雰囲気作りができるよう取り組んでいきたい」といった書き方にすることで、人事担当者に伝わりやすくなるでしょう。

社風と事業内容の関連性を図る

「この会社だと自分のしたいことができる」このようにアピールするには、社風と事業内容の関連性を図ることが重要です。社風は企業のミッションやビジョン、従業員の考え方や行動指針に大きな影響を与えます。

具体的には、社風が顧客に対する姿勢や品質意識に関わり、事業内容の品質サービス水準に反映されることがあります。例えば「従業員が協力し合い、チームワークを重視する社風」を持つ企業は、製品の開発やサービスの提供においても、効率的で高品質な成果を生み出すことができるでしょう。また社風は企業のブランドイメージとも関係し、顧客の信頼にも影響を与えます。

社風は、企業の目指す方向性や事業内容から作られている場合が多いです。それらの社風は、必ず事業内容と何かしら関係があります。そうした関連性に目を向けることで、充実してより密度のある志望動機が出来上がるでしょう。

企業を研究した結果を取り入れる

社風を志望動機に盛り込む場合、自分が企業について研究した結果を取り入れることも大切です。社風は設立当初から精神や理念、これまでの成果や実績と結びついていることが多いです。なぜ今の社風になったのか、自分なりに研究してアピールすることで、企業への興味の度合いが人事担当者に伝わるでしょう。

具体的には「御社は創業以来顧客を大切にする、といったことを掲げておりその結果、現在では全国に〇〇店舗までお店が増えたように思う」などと記載すると分かりやすいです。

社風を志望動機に盛り込む際の構成の作り方

  1. 一番最初に結論を伝える
  2. 結論を裏付ける理由を伝える
  3. 具体性のあるエピソードを伝える
  4. エピソードの中にある問題点を伝える
  5. 問題を解決するためにとった行動を伝える
  6. 行動した結果どうなったかを伝える
  7. 最後は経験を通してどう活躍できるのかを伝える

社風を志望動機に盛り込む場合は、結論から書いていきましょう。結論から書くことで、倫理的な思考ができる人といったイメージを持ってもらいやすいです。次に結論を裏付ける理由を書くことによって、読み手の興味を惹きつけたり、結論の説得力を高められます。

また自分の過去の経験など、具体性のあるエピソードを盛り込みましょう。ここでの注意点として、話は脱線することなく根拠に基づくことを書くのが大切です。関連したエピソードでなければ、相手の興味が薄れ、評価につながらないので注意が必要です。

エピソードの中には、経験してきた中での課題点やぶつかった壁もあるでしょう。そのような状況を改善した結果を取り入れることで、人事担当者に良い印象を与えることができます。具体的な課題点を記載し、問題解決のために自分がどのような行動をとったかを伝えましょう。具体的なプロセスを記載することで、自分自身の人柄を知ってもらえるきっかけになります。行動した結果に具体的な数字を入れて記載すれば、よりイメージしやすくなります。

そして例文の最後には、その経験をどのように活かしたいか必ず書きます。経験からの学びを社風に絡めることによって、人事担当者に入社したい意欲が伝わるので、軸を押さえ簡潔にまとめていきましょう。

志望動機に社風を盛り込んだ例文

例文1:挑戦できる環境

例文

私は貴社の「挑戦できる社風」に惹かれ、志望いたしました。学生時代、私は県が主催する「地域活性のための学生アンバサダー」に挑戦した経験があります。これは地元の農産物の魅力を全国に広めるため、学生が主体となってイベントやラジオ・テレビへの出演といったPR活動を行うものです。当時は人前に出る経験が少なく不安もありましたが、大好きな地元の役に立ちたいとの思いから思い切って応募しました。地域の方々の協力を得ながら様々なアイデアを形にしていく過程で、大きな達成感を得ることができ、挑戦することの大切さを学びました。

貴社はAIを活用した農業支援サービスという先進的な事業にいち早く挑戦しているベンチャー企業です。そのような環境で学生時代に培った挑戦力と企画力を活かし、貴社の成長と社会に貢献したいと考えております。(400字以内)

「挑戦できる社風」に惹かれたという具体的な理由を最初に説明することで話の趣旨が明確になっています。

学生時代の「地域活性のための学生アンバサダー」の経験が事業と関連している点や、アンバサダー経験を通じた自分の変化や成長にも触れられている点も評価ポイントです。

企業の成長と社会に貢献したいという意欲をアピールする文章で締められており、企業に採用してみたいと思わせる説得力が感じられる内容になっています。

例文2:風通しが良い

例文

私は貴社の社員間や上下間のコミュニケーションが活発な風通しのよさに魅力を感じ、志望いたしました。大学時代にイベントサークルに所属していた際、企画段階で意見が衝突し、プロジェクトが停滞してしまった経験があります。その際には先輩が積極的にメンバーと意見交換の場を設け、互いの意見を尊重しながら解決策を導き出してくれました。その経験から、コミュニケーションの重要性と、上下に関係なく誰もが積極的に意見を提案できる環境の大切さを学びました。

貴社は全社員参加型会議や1on1ミーティング、シャッフルランチなど、様々なコミュニケーション活性化の取り組みを実施していると伺っております。そのような環境で、大学で培った企画力を活かして自分のアイデアを積極的に提案し、チームの一員として貢献したいと考えております。(350字以内)

「風通しが良い」という表現は抽象的な印象になりがちです。しかし、この例文では「上下間のコミュニケーションが活発」と具体的に述べ、企業が実施している取り組みについても説明されているため、学生がきちんと企業研究をしていることがわかります。

また、ただ上下関係が良好というだけでなく、大学時代の自分の経験と結びつけていることで、コミュニケーションの重要性を説得力を持って伝えられているところも評価できます。

例文3:実力主義

例文

貴社の評価制度が明確で実力を重視する社風に魅力を感じて志望いたしました。貴社のインターンに参加した際、2学年しか離れていない社員の方がプロジェクトの中心メンバーとして活躍している姿を見て強い憧れを抱きました。

私は大学のサークルやゼミでもリーダーを務めた経験があり、チームの課題解決に自信があります。この経験から、社会人になっても自ら率先して動き、チームの目標達成に貢献したいと考えています。貴社には努力次第で性別や年齢に関係なく管理職に挑戦するチャンスがあり、能力のある社員はより難易度の高い仕事に挑戦できる環境があると伺いました。

貴社に入社できた際には営業職として個人の業績目標を達成することはもちろん、入社3年以内に若手リーダーを目指し、チームのマネジメントや後輩の育成にも携わっていきたいです。(350字以内)

実力主義の社風に共感する姿勢からは仕事に対する意欲の強さが感じられ、インターンに参加していることから志望度の高さも読み取れます。入社後の目標ややりたいことが明確なので、企業としても「将来活躍してくれそうだ」というイメージを描くことができそうです。

ただし、若手リーダーやマネジメントを目指すのであれば企業にリーダーとしての素質をアピールすることも必要です。リーダーを務めた事実だけでなく実績も説明できるとより説得力が増し、魅力的な志望動機となるでしょう。

例文4:顧客を優先して考える

例文

私は、貴社の「とことん顧客の悩みに寄り添う」という顧客最優先の経営理念に共感し、志望いたしました。私は大学時代、化粧品原料の研究に取り組んでいました。多くの文献を読み、様々な実験を繰り返す中で、敏感肌の方の肌悩みの深さを実感しました。そして、人々の肌の悩みに寄り添い、化粧品を通して肌質が変わる喜びを届けたいという思いを抱くようになりました。

貴社は、長年にわたる研究開発によって敏感肌の方でも安心して使える化粧品を数多く生み出してきました。この実績は、まさに「とことん顧客の悩みに寄り添う」という経営理念を体現していると感じます。

私も貴社の一員として自分の知識と経験を活かし、お客様の肌悩みに真摯に向き合い、一人ひとりに最適な化粧品を提供することで、美しさを引き出すお手伝いをしたいと考えております。(350字以内)

大学での研究内容と応募職種に関連性があり、志望動機が非常に明確です。化粧品に関する専門知識があるだけでなく、研究を通して顧客ニーズを理解しているのは他の学生と差別化を図る上で強力なアピールポイントになります。

企業の強みを具体的に挙げ、自分の知識と経験をどう活かせるかを説明できている点も好評価です。敏感肌の人の悩みの深さを実感した出来事をもう少し詳細に描写するとリアリティが増し、より説得力のある志望動機になるでしょう。

志望動機に社風を挙げる際の注意点

具体的なエピソードを書く

志望動機を作るには過去の実体験など、具体的なエピソードを盛り込むことが重要です。例えば、大学生時代に行ったアルバイトでの成功体験や、困難な場面を乗り越えた経験などが挙げられます。これにより、自分の能力や経験を証明することができ、企業に対して自信を持ってアピールできます。

また、入社後に実現したいキャリアプランを具体的に盛り込むことも大切です。具体的な目標や成長を描くことで、将来への意欲をアピールすることができます。

ネガティブな内容は避ける

人間関係のようなネガティブな内容を書いてしまうと、人事担当者に「もし入社しても、人間関係のストレスに耐えられないかもしれない」といった印象を与えてしまいます。そういったエピソードを記載してしまうと不採用となる可能性も高くなるでしょう。

人事担当者からは、良好な人間関係の構築能力や円滑なコミュニケーション能力が求められますので、ネガティブな印象を与えることは避けるべきです。

社風のみのアピールは避ける

社風のみをアピールするのは避けてください。理由として、意欲に欠けているイメージを持たれる可能性があります。理想的なのは、社風と社風以外の志望動機を盛り込むようにしましょう。

具体的には「自身の価値観や人格と企業の文化がマッチしていることが強調できる」「私自身がこの企業の社風に共感し、積極的に働きたいという意欲を持っている」といったことを記載するといいでしょう。

志望動機に社風を盛り込む場合は自分の言葉で書くのが大切!

志望動機に社風を盛り込むのは問題ありません。しかし社風のみを盛り込むのではなく、社風と社風以外の志望動機を結びつけて書くことが重要でしょう。またテンプレートのような例文ではなく、社風に対して感じたことなどを自分の言葉で記載するのが大切です。

またエピソードを記載する場合は、具体的に書くようにしましょう。そのほうが、人事担当者の興味を惹くことができます。志望動機に社風を盛り込むためには、具体的なエピソードや今後の目標などと絡め、企業が印象に残るエントリーシートにしていきましょう。

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