この記事では、コンサルティング業界(以下、コンサル業界)の基礎知識と、ESへの志望動機の効果的な書き方を一つひとつ説明します。

コンサル業界は事業領域が広いため、業界知識が浅いと曖昧な志望動機になりがちです。受かる志望動機をつくるには、業界の全体像を知り、自身のビジョンを明確にする必要があります。コンサルタントとして勤務する姿勢や、会社でのキャリアパスが定まることで、強い意志を示す文章を作成できます。

コンサルティングファームの種類に応じた例文を参考に、記述の参考に自分らしい志望動機を作成していきましょう。

選考突破にはコンサル業界の知識が必須

コンサルタントが所属する会社は、コンサルティングファーム(firm=企業)と呼ばれます。対応する業界やカバーする領域で事業内容は異なるものの、「企業が自力で解決できない問題を取り扱う」点は共通です。そのために、コンサルタントには高い専門性と課題解決能力が求められます。漠然と「コンサルタントになりたい」と考えているだけでは、企業の欲する人材になり得ません。

コンサルティングファームへの就職を考えるなら、目標に向かい努力する姿勢が大切です。業界知識をつけ、「なりたいコンサルタント像」と「成し遂げたい夢」を確定させましょう。ビジョンを明確にすることが、選考突破の第一歩です。

コンサル業界の具体的な業務内容

企業の課題を分析・検証し解決する

コンサルタントの仕事の流れ
  1. 課題の発見
  2. 発見した課題の分析
  3. 課題解決に向けた情報収集
  4. 仮説の立証と検証
  5. 客観的なデータをもとに提言内容を策定
  6. クライントに提言・実行支援

コンサルタントは、企業が抱えるさまざまな課題を解決に導く仕事です。クライアント企業に寄り添い課題を発見することから始まり、提言と実行支援を行うまでが一連のミッションです。課題発見能力分析力論理的思考力などさまざまな力が求められます。社会的な意義が大きく、やりがいのある仕事です。

入社後はアナリストから始め昇進する

多くのコンサルティングファームでは、手掛ける業界や事業領域ごとにチームが編成されています。新入社員は配属されたチームで専門性を磨く努力をすることになります。

最初からコンサルタント業務をこなすのではなく、アナリストから始めるのが一般的です。アナリストは情報収集や資料の作成などを行い、コンサルタントをアシストする仕事です。基本的な力を身につけてから、コンサルタントへ昇給するキャリアパスが組まれています。

コンサル業界の種類と特徴

幅広い業界と事業領域をカバーする「総合コンサル」

業界や事業領域を限定せず、ニーズに応じたコンサルティングを手掛けるのが総合コンサルティングファーム(以下、総合コンサル)です。

クライアントは一般企業だけでなく、官公庁や金融機関まで多岐にわたります。あらゆるニーズに対応できるリソースを持つ大企業が多く、外資系の割合も高いのが特徴です。世界中を拠点にグローバルに働ける魅力があります。

総合コンサルの強みは、経営課題へのアプローチ幅が広いことです。経営課題は特定領域のコンサルティングだけでは対応できないことがあります。総合コンサルなら、さまざまな分野からのアプローチが可能です。多角的に問題解決にあたることで、抜本的に経営課題を解決できます。

入社後は多彩な専門性を持つ先輩に囲まれ、幅広い知識が習得できるでしょう。日々周りから刺激を受けながら、自分を成長させたい人におすすめです。

代表的な企業
  • PwCコンサルティング
  • デロイトトーマツコンサルティング
  • KPMGコンサルティング
  • アクセンチュア
  • 日本IBM
  • 日立コンサルティング

経営者層と共に課題を解決する「戦略系」

大胆かつ緻密な戦略を策定し、経営課題を解決に導くのが戦略系コンサルティングファーム(以下、戦略系コンサル)です。

経営課題の解決には、新規事業の立ち上げやマーケティングの見直しなどの「戦略」が必要です。ときには組織再編やM&Aなど大胆な策を打たなければ、膠着状態を脱せないこともあります。経営者層と直接やり取りしながら、強い責任感とプロ意識で業務を推進します。責任を負う分、やりがいが大きな仕事です。

新入社員にとっては、クライアントからの学びが多い点が魅力です。「経営者の仕事術」「経営の成功や失敗を招く要因」など、経営のイロハを学べます。将来独立や起業を目指す人にもおすすめです。

代表的な企業
  • マッキンゼー・アンド・カンパニー
  • ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
  • A.T.カーニー
  • ローランド・ベルガー

研究機関としての分析力を活かした「シンクタンク系」

シンクタンクは中央省庁や地方公共団体など公的機関をクライアントとし、リサーチや研究、分析を行う機関です。新たな政策を実行するには、事前のリサーチが欠かせません。シンクタンクが調査から政策提言まで一貫して行うことで、実効性を確かめられます。

シンクタンクの優れた分析力を活かし、総合コンサルティング業務まで事業領域を拡大したのが、シンクタンク系コンサルティングファーム(以下、シンクタンク系コンサル)です。提言で終えるのではなく、実行まで責任を持ってサポートします。

証券会社や銀行を母体とするファームが多く、グループ会社からの案件獲得や、組織力を活かした営業が特色です。コンサルタントは自身が商材のため、営業活動が難しいと言われます。グループ会社経由で案件に巡り会えるのは、シンクタンク系コンサルならではのメリットです。

代表的な企業
  • 三菱UFJリサーチ&コンサルティング
  • 野村総合研究所
  • 日本総合研究所
  • 大和総研
  • みずほリサーチ&テクノロジーズ

IT技術で企業の課題を解決する「IT系」

IT技術を活用し企業の組織課題や経営課題を解決するのがIT系コンサルティングファーム(以下、IT系コンサル)です。

IT戦略の策定から技術導入による業務効率化、セキュリティ・リスク管理など、幅広い業務を担います。IT化・DX化が推進される中で需要を喚起しやすく、市場で高い成長率を誇っています。

社内には各分野の専門家が多数在籍しており、高い専門性が身につきます。常に最新の技術を学び、技術の進化に合わせ自身も成長できるのが大きな魅力です。学ぶ意欲が強い人に向いています。

代表的な企業
  • 日本IBM
  • ウルシステムズ
  • マネジメントソリューションズ
  • シンプレクス
  • フューチャーアーキテクト
  • 大洋システムテクノロジー

特定分野の専門家が集結する「業務・業界特化型」

業務・業界特化型コンサルティングファーム(以下、業務・業界特化型コンサル)は、対応する業界や事業領域を絞り込むことで、高い専門性を訴求します。製造業・金融業など特定の業界に特化するファームと、「社会課題の解決」「資本参加」「ブランディング」など特定領域のサービスを提供するファームがあります。

各分野のエキスパートが集まり、長年の経験と専門的知見をもとに的確なコンサルティングを行うのが特徴です。自身の専門性を高め、エキスパートを目指したい人に最適です。

代表的な企業
  • ZSアソシエイツ
  • シンプレクス
  • プロレド・パートナーズ
  • イーソリューションズ
  • リヴァンプ

企業に寄り添い伴走する「中小企業向け」

中小企業向けのコンサルティングに強みを持つのが、中小企業向けコンサルティングファーム(以下、中小企業向けコンサル)です。クライアント企業に深く入り込み、密接に連携しながら課題解決にあたります。

中小企業向けコンサルは、原則一人のコンサルタントが一つの企業を担当します。自身の分析や提言の成果を感じながら仕事を進められるため、やりがいを強く感じられるでしょう。経営者と深く付き合うことで、コンサルタントとしてはもちろん、人間的にも大きく成長できます。人に寄り添うコンサルティングを行いたい人におすすめです。

代表的な企業
  • 船井総合研究所
  • タナベコンサルティング
  • みらいコンサルティング
  • 山田コンサルティング
  • ビジネスブレイン太田昭和
  • リブ・コンサルティング

コンサル業界で求められる人物像

コミュニケーション能力が高い

コンサルタントの仕事は、企業の現状を分析することから始まります。クライアントの課題が顕在化していない場合は、話の中から問題点やリスクを探らなければなりません。そのため、高いコミュニケーション能力が必須です。

また社内でも円滑なコミュニケーションが求められます。コンサルティングファームはチームで動きます。特に大企業向けのコンサルは複数人で一つの会社を担当するため、情報共有が欠かせません。コミュニケーションの不足は、業務の足枷になります。

コミュニケーションの根幹は、相手の話をしっかりと聞くことです。普段から人と接する機会を増やし、落ち着いて話を聞くよう心がけましょう。

情報分析力がある

クライアントからヒアリングした課題を解決するには、与えられた情報を正確に分析しなければなりません。分析するデータは膨大です。解決につながる内容を抽出するには、クライアントの立場で考え、論理的に筋道を立てる必要があります。

情報分析力を高めるには、漏れなく話を聞いた上で、挙げられた論点を整理するのがポイントです。話の重複や論点のズレに意識的になることも必要です。

論理的に思考できる

仮説の立証や解決策の提言には、論理的な思考力が必須です。客観的な事実を積み重ね、理路整然と筋道を立てないと、解決策の提言に至りません。クライアントもコンサルタントの説明に論理性を強く求めるでしょう。特に経営課題の解決には大きな決断を伴います。非論理的な説明では納得できません。

論理性を鍛えるには、客観的な事実を積み重ね物事を判断する習慣をつけましょう。客観的事象を根拠に結論を導ける能力が必要です。人の話を聞くときも、衝動的な感想を挟まず、整理しながらじっくりと聞くことが大切です。

多角的に物事を考えられる

クライアント企業の経営者層は、自社の事業領域はもちろん、経営に関しても知識が豊富です。コンサルタントが知識をもとに提言を試みても、大きな効果は望めません。特に新人コンサルタントは、経営者が有する知識に圧倒されるかもしれません。

コンサルタントに求められるのは、分析したデータをもとに「いかに多角的に提言できるか」です。クライアントが見落としている視点を、どれだけ論理的に示せるかが鍵です。一つの考えに囚われず、多角的な視点で仮説の立証と検証を繰り返しましょう。

多角的な目を培うには、できるだけ多くの人や物事と接する中で、自身の価値観をブラッシュアップする姿勢が大切です。知らない世界と出会える旅行や、他人の価値観に触れる読書もおすすめです。

責任感が強い

コンサルタントには強い責任感が必須です。クライアントは「会社をどうにかしたい」という切実な思いでコンサルタントを依頼します。責任感がないと、クライアントの必死な思いを裏切ることになりかねません。

特に経営課題の解決には重要かつ重い責任が伴います。相対する経営者の背後には大勢の社員がおり、社員にはそれぞれの生活があります。一人の顧客だけを相手にしているわけではないのです。

普段から自身の発言・行動に自覚的になり、最後までやり遂げる強い意志を持ちましょう。

ビジネスレベルの英語力がある

外資系や海外拠点を持つファームでは、英語力が必須です。海外のコンサルタントと協働したり、グローバル企業を担当するケースが考えられます。海外とのデータ比較や英語文書の分析など、英語が必要なプロセスもあるかもしれません。

また、国内専業のファームでも、英語力は武器になります。論理的思考力や課題解決能力は、コンサルタントにはマストな能力であり、差別化を図る武器にはならないでしょう。英語力は誰もが持つ能力ではないため、ファームによっては頭一つ抜きん出るきっかけになります。

アピールの基準は「ビジネスレベル以上」の英語力で、TOEICでは800点以上が目安です。

志望動機の参考にできるコンサル業界の魅力

社会的役割が大きく人に感謝される

コンサルタントは企業単体で解決できない問題を支援するため、仕事の難易度は決して低くありません。しかし、成功すれば躍進の大きな力に繋がります。やり遂げた喜びはひとしおです。特にクライアントから感謝の言葉をもらったときには、「コンサルタントで良かった」と強く実感できるでしょう。

業界をまたぐことで多様な価値観に触れられる

コンサルティングファームの中には、業界を絞り込まずにクライアントをとる会社も少なくありません。さまざまな業界で仕事ができるのは、コンサルタントならではの魅力です。

業界が異なれば、企業風土や文化も異なります。仕事をこなしていくうちに、自然と多様な価値観に触れられます。多角的に物事を見る習慣がつき、実生活でもさまざまな気づきを得られるでしょう。

経営者層と関わることで知見が広がる

コンサルティングファームのクライアントは、主に企業の経営者層です。業界の知識はもちろん、経営の姿勢、人生観などさまざまなことを学べます。事業会社(一般の会社)では、自社の経営者と話す機会さえほとんどありません。たくさんの経営者と親密に接する機会を得られるコンサルタントは、恵まれた立場だと言えます。

常に頭を使うことで成長のスピードが速い

コンサルタントの仕事は思考の連続です。解決策の提言まで頭の休まることがありません。案件ごとに思考内容が異なるため、型にはめ込むのも不可能です。そのため、コンサルタントは「成長スピードが速い」と言われます。自身の成長を感じやすいため、仕事のモチベーションにも繋がります。

会社によってはグローバルに働ける

コンサルティングファームは外資系の企業も多く、グローバルに働ける環境があります。グローバル企業との関わりや、海外企業の分析などを繰り返すうち、国際的なビジネス感覚が身につきます。海外のビジネス慣習や、ビジネスマンの価値観、生活習慣や文化的バックグラウンドまでさまざまなことを学べるでしょう。

コンサルの志望理由を見つける効果的な方法

コンサル業界でしかできないことを考える

コンサル業界の志望動機を導き出すには、業界研究を徹底的に行うことが大切です。「コンサル業界でしかできないこと」が分かれば、業界を志す理由も明確になります。

例えば「自身の手で企業が再生するきっかけをつくれる」「さまざまな業界の経営手法を学べる」といった内容は、コンサル業界固有の特色です。コンサル業界を選ぶ理由になります。

選考を受ける企業の特色・強みを理解する

業界研究と同時に、選考を受ける企業の企業研究も入念に行います。志望理由は「当該企業でなければならない理由」を書くことで強まります。企業の特色・強みを読み取り、志望理由に反映させましょう。

例えば「グローバル案件が豊富」な戦略系コンサルなら、「企業の再生に関わることで世界経済に貢献できる」「文化による経営手法の違いを理解することで、コンサルタントとして業務の幅を広げられる」といった内容を導き出せます。志望理由の説得力が増し、より強い意志を示せるでしょう。

過去の成功体験を入社後のビジョンと結びつける

新卒の場合、「規模の大きな仕事がしたい」「企業の再生に携わりたい」など社会で実現したいビジョンを掲げるだけでは十分な志望動機とは言えません。社会での実績がないため、根拠が不明瞭だからです。「なぜ規模の大きな仕事がしたいのか」「なぜ企業の再生に携わりたいのか」を示さなければなりません。あなたの実体験に基づいたきっかけが必要です。

きっかけに最適なのは、過去の成功体験です。学業や部活動(サークル活動)、ボランティア活動、アルバイトなどで体験した出来事を、コンサルタントの夢に結びつけて書きます。

例えば「バイトリーダーとして部門を立て直す経験をした」「チームをマネジメントすることで、常勝軍団をつくりあげた」などの成功体験があれば、コンサルタントを志望する裏付けになります。いずれも「その出来事をきっかけにコンサルタントを目指した」と捉えて不自然ではないからです。

自身の研究内容を深める目標を持つ

新卒であっても、大学(大学院)の研究内容がコンサルタント業務と結びつくのであれば、ビジョンを堂々と掲げられます。これまでの学びを深めることが志望動機になるからです。

例えば企業経営を専攻し、さまざまな企業にインタビューしたり、情報分析した実績があれば、コンサルティングファームに入社することでより学びを深められます。「学びを社会貢献に繋げたい」と記述するだけで、志望理由として十分な説得力を持つでしょう。

コンサル業界の志望動機で留意するポイント

コンサルタントとしての明確なビジョンを持つ

コンサルティングファームは幅の広い業界、事業領域をカバーするため、目標が曖昧になりがちです。漠然と「規模の大きな仕事がしたい」「人のためになりたい」と書くだけでは、志望動機になりません。「具体的に何がしたいのか」を明確にしないことには、入社しても頑張りようがないからです。受かる志望動機をつくるには、まず明確なビジョンを持つことから始めましょう。

エピソードは志望動機の根拠になるよう簡潔に

学生時代の成功体験などコンサルタントを目指すきっかけを書く場合、「なぜそれが志望動機に結びつくのか」が分かるように記述します。エピソードの内容を簡潔にまとめ、コンサルタントの夢に結びつくことを説明しましょう。

自身の能力で会社に貢献できることを示す

志望動機の最後には、入社後の決意を書きます。決意を示すには、その実現を主張するだけの根拠が必要です。例えば「課題解決まで企業にしっかりと寄り添うコンサルタントになりたい」と決意を語る場合、「失敗してもめげない精神力」「徹底的に傾聴する力」「多角的に物事を見る力」などが根拠に挙げられるでしょう。過去の経験をもとに、自身の能力を導き出します。

コンサル業界で内定を勝ち取る志望動機の書き方

志望動機を書く5STEP

①ビジョンを端的に挙げる

②コンサル業界を選んだ理由を説明する

③志望企業を選択した理由を書く

④自身の能力で企業に貢献できる根拠を示す

⑤入社後の仕事への決意でまとめる

カバーする領域が広いコンサル業界は、他の業界以上に明確なビジョンや決意を示す必要があります。

②で業界を選ぶ根拠、③で志望企業を選んだ理由を書くことで、ビジョンの実現に志望企業が最適であるということを強く示す志望動機を作成することができるでしょう。上手に整理して書けば、ESに最適な350〜400字の文章に仕上がります。

①ビジョンを端的に挙げる

志望動機はビジョンの提示からスタートします。「なりたいもの」「実現したいこと」は志望動機の結論部分です。結論からスタートすることで、採用担当者にストレートに想いをぶつけられます。夢を持つきっかけや、当該企業に絞った理由を先に書いてしまうと、結論部分が伝わりづらくなるため、結論から書くようにしましょう。

②コンサル業界を選んだ理由を説明する

過去の経験を挙げ、コンサル業界を目指すようになったきっかけを説明します。「過去の経験が自分をコンサルタントの道に向かわせた」エピソードを簡潔に書きましょう。

ここの書き方次第で、志望動機全体の説得力が変わります。コンサルタントを目指す明確な根拠を示せないと、強い志望動機に仕上がりません。ビジョンときっかけに一貫性があるかを確認しましょう。

③選考を受ける企業を選択した理由を書く

コンサル業界を選ぶ理由が書けたら、選考を受ける企業の強みを挙げます。「数あるコンサルティングファームの中でも、当該企業が最も夢の実現に近い」ことを示すためです。事前に企業研究をしっかりと行い、優位性や欲する人物像、将来のビジョンなどを把握しておきましょう。「他社でも良いのでは」と思われないよう記述するのがポイントです。

④自身の能力で企業に貢献できる根拠を示す

入社後の決意を書く前に、企業に貢献できる根拠を挙げます。根拠に乏しいと説得力がありません。業界研究・企業研究から、選考を受ける企業が欲する能力を的確に判断し、自身の持つ力と照らし合わせましょう。コンサルタントに求められる力からズレていないことも確認します。

⑤入社後の仕事への決意でまとめる

最後は強い決意で締めます。志望動機で大切なのは「ビジョン」と「決意」です。この2つが明確でない人は、どんなに能力が高くても内定を得られません。ビジョンの実現のために入社後にどのように仕事をしていくかを、想いを込めて記述します。強い決意は読む人の心を動かします。

【業種別】コンサル業界の志望動機の例文

総合コンサル

例文

業界や事業領域を限定せず、クライアントに見合った提案ができるDXコンサルタントを目指し貴社を志望しました。

DXへの取り組みは業界や企業で差があります。父が働く製造業ではDX導入が進んでいると聞きます。一方、私のアルバイト先の飲食店では、導入コストや顧客層を鑑みて導入を見送っています。個々の事情に配慮した取り組みが明示されない限り、前向きに動かない企業が多いように感じます。私自身がDXコンサルタントになることで、個々に寄り添い問題を解決したいと考えるようになりました。

貴社は幅広い業界を手掛けており、中小企業へのDX導入実績も豊富です。貴社でなら、多角的な視点で企業に最適なコンサルティングができると考えます。

私は大学で情報技術を専攻しており、IoTの知識には自信があります。入社後は課題を多角的に分析する経験を積みながら、知識を適切な提言に繋げられるよう、全力で取り組みたいです。

アルバイトを通して感じたことを、コンサルタントの夢に繋げた例文です。アルバイトは貴重な社会経験の場です。そこで感じた疑問は「コンサルタントとして解決するべき課題」として取り上げやすく、ビジョンの策定に繋がります。

総合コンサルでは、「何をやりたいか」が曖昧では通用しません。「あなたがしたいこと」「目指すもの」を明確に示すことが大切です。

戦略系

例文

組織全体を変革するコンサルティングを行い、企業の立て直しに貢献したいと考え貴社を志望しました。

私は学生時代野球部のキャプテンとしてチームを引っ張ってきました。日々心がけていたのは、相手チームの徹底した分析と、自チームの臨機応変な組み換えです。データを丁寧に分析し、相手に応じた戦術を策定すれば、良い結果が得られることを実感しました。分析をもとに道筋を立てチームを引っ張る楽しさに魅せられ、コンサルタントを目指すようになりました。

貴社は高い分析力と課題解決の大胆な手腕で知られています。貴社でさまざまなクライアント企業と仕事をする中で、組織を変革する経験を積めるのではないかと考えます。

私はこれまでの経験から、データをもとに仮説を立てる習慣がついています。入社後は課題の引き出し方や、観点の異なる仮説の立て方をしっかりと学び、「頼られるコンサルタント」を目指して努力したいです。

部活の成功体験を、コンサルタントの夢に繋げた例文です。部活動も小さな組織であることから、取り組みによっては「課題の発見」や「仮説の立証」「改善策の策定と実行」などの経験を積めることがあります。これらはコンサルタントを目指す強い理由になり得ます。

戦略系コンサルは責任が大きい仕事です。目指すには、それなりの覚悟が問われます。入社後の努力を具体的に示すことで、強い熱意と覚悟を感じてもらえるでしょう。

シンクタンク系

例文

ブロックチェーンの研究を極めることで、安全な金融システムを多くの企業に提案したいと考え、貴社を志望しました。

私は大学でデータサイエンスを専攻し、ブロックチェーンの研究を専門にしています。仕組みを学ぶだけでなく、社会への影響や法整備のあり方などを幅広く研究してきました。研究をもとに社会に貢献するには、提言と実行支援までできるコンサルタントになるのが最適だと考えます。

貴社は金融系シンクタンクとして数々の実績があるだけでなく、金融・財務コンサルティング業務も盛んです。貴社でなら研究内容を深めつつ、さまざまな企業に向けシステム導入を提言できます。

ブロックチェーン技術には、導入コストやプライバシーなどさまざまな問題があります。これらの課題を解決し、幅広い企業と向き合えるよう、研究とコンサルティングに真摯に取り組みたいです。

研究内容をコンサルタントの夢に繋げた例文です。すでに研究者としての実績があるため、志望理由にも説得力があります。シンクタンク系は業務の性質上、研究の延長に社会貢献を置くのが最も自然です。

なお今回の志望動機には「自身の能力で企業に貢献できる根拠」を記載していません。研究内容が高い能力を明示し、企業への貢献にも繋がる場合、あえて他の根拠を入れる必要はありません。

IT系

例文

IT技術を導入することで、企業が提供するサービスの質を向上させたいと考え貴社を志望しました。特に教育や福祉業界への導入を推進したいです。

私がアルバイトをする児童福祉施設では、昨年から高校生の就労支援にVR機器を導入しています。教室にいながら通勤訓練や面接練習が可能になり、サービスの質が劇的に向上したと感じます。この経験から、IT技術はサービスを抜本的に変えるきっかけになり得ることを実感しました。コンサルタントとして積極的に提案することで、企業の未来を変えていきたいです。

貴社は幅広い業界にIT技術を導入した実績があります。ビジネスを抜本的に変えた事例も少なくありません。貴社でなら、自身の夢を叶えられると確信しました。

アルバイト経験を通し、人の話を聞くことには自信があります。入社後は分析や仮説立証の手法を貪欲に学び、一流のコンサルタントを目指したいです。

IT系コンサルは市場が拡大を続けている領域であり、ライバルも多いと考えられます。「DX導入の力になりたい」「IT技術の普及に努めたい」といったありきたりな志望理由では、採用担当者の心に響きません。より切実な理由が必要です。

この例文ではアルバイトで特定業界でのニーズを実感したことから、コンサルティングの大切さに思い至りました。実際の経験をベースにすることで、強い想いが伝わりやすく、実現したいことも明確です。採用担当者の心を動かす切実さを感じ取れます。

業務・業界特化型

例文

企業のブランディングに貢献するデザインを提案したいと考え、貴社を志望しました。

私がアルバイトをする飲食店では、昨年店舗のロゴデザインを一新しました。落ち着いた雰囲気のロゴは好評を博し、客足の回復に繋がりました。この経験から、私はデザインがブランディングに大きく影響することを学びました。デザインを上手く利用すれば、新たなビジネスチャンスを掴むことが可能です。私も自身の手で企業に最適なデザインを導き出し、事業拡大や経営改善に貢献したいと考えるようになりました。

貴社は「ブランドの魅力を反映するデザイン」を信条に、幅広い業界の案件を手掛けています。制作物はどれも美しく、心に残るものばかりです。貴社でならさまざまな企業のブランディングに貢献できると考えます。

アルバイトでブランディングに尽力した経験を活かし、入社後はクライアント企業の魅力を強く引き出せるコンサルタントを目指したいです。

業務や業界に特化したファームは、分野が限定される分、志望動機で熱い想いを述べるライバルが多数現れます。当該分野の知識をひけらかしても、強いアピールにはなりません。コンサルティングに興味を持ったきっかけや、知識の獲得に励む姿を前面に出した方が、高い評価を得やすいでしょう。

例文はブランドコンサルティングの志望動機です。デザインへの造詣の深さをアピールするのではなく、「ブランディングの魅力に気づいたきっかけ」を軸に構成することで、ライバルとの差別化を図っています。

中小企業向け

例文

コンサルティングの業務領域から外れがちな、中小・零細企業に向けた支援を提供したいと考え貴社を志望しました。

私は以前アメリカにホームステイしたことがあります。そのとき驚いたのが、個人が頻繁にコンサルタントを利用することです。日本ではコンサルティングというと、大企業や社員数が多い中小企業が中心です。中小・零細企業や個人事業主も、気軽にコンサルタントを利用できればと強く感じました。私の近所でも、中小の商店が倒産するのを頻繁に目にします。私自身がコンサルタントになることで、中小・零細企業の力になりたいと考えるようになりました。

貴社は地元を大切にし、小さな案件にも対応する姿勢に定評があります。自身の夢を叶えるには貴社が最適だと考えました。

私は普段から人に寄り添い、丁寧に接することを大切にしています。入社後もクライアントの話に耳を傾け、徹底的に寄り添うことで、「頼れるコンサルタント」になりたいです。

コンサルティングファームのあり方に疑問を感じたことから、自身の目標を導き出した例文です。中小企業向けコンサルを目指す理由が明確で、強い意志が感じられます。ただ漠然と「中小企業を救いたい」「日本の経済の底上げをしたい」と書くよりも、説得力があります。

ただし、「小さな案件にも対応する姿勢に定評がある」ということの裏付けや具体性が見えないため、過去のどんな経験からそのような強みが導き出されたのかがわかりにくいです。この一文を加えるためには、裏付けとなる内容を簡潔に入れるとより説得力の増す内容になるでしょう。

ただし、くれぐれも業界批判にはならないよう、表現には留意が必要です。

コンサル業界の志望動機で記述を避けるべき内容

高収入などの待遇や労働条件

コンサル業界の新卒の年収は400万円〜700万円と言われています。専門性が高く、大きな責任を負う仕事のため、事業会社と比べ収入には恵まれています。

しかし志望動機で収入や待遇面を表に出すのは不適切です。企業が確かめたいのは、コンサルタントとしてのビジョンや、仕事への熱意です。収入はビジョンにも熱意にも結びつきません。「お金で会社を選んでいる」という印象を持たれたら、内定は得られないでしょう。

独立・起業など将来のキャリア設計

コンサルタントは成長スピードが速く、経営ノウハウも習得できます。コンサルティングファームに在籍した後、独立や起業の道を選ぶ人も少なくありません。しかし、将来のキャリアパスとして独立の夢を描いても、それを就活の場で示すのは選考を受ける企業に失礼です。

会社が欲するのは、あくまでも自社の利益になる人材です。いずれ離れる人を、積極的に雇おうとする会社は多くありません。

漠然とした憧れ

コンサルタントは規模の大きな仕事ができるため、スマートな印象があり、憧れる人も多いです。しかし、そのような憧れをそのまま志望動機に使うことはできません。具体性がなく、採用担当者にビジョンが伝わらないためです。

志望動機に必要なのは、明確なビジョンと熱意です。憧れを自身の目標へ昇華させなければなりません。

知っておきたいコンサル業界の現状と展望

成長率は業務領域によって分かれる

コンサル業界全体で見ると、国内の市場規模は年々増加を続けています。しかし領域別で見ると、成長率にはばらつきがあります。

コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社の調査によると、2022年度に売上高成長率が前年度比を上回ったのは、「組織人事系」「FAS及びM&A系と事業再生系」「業務・IT系」の3領域のみです。業界全体は活況を保ちつつも、領域によって明暗が分かれるのが現状です。

参考:日本国内のコンサルティング業界規模は、1兆8,281億円(2022年度)|コンサル市場規模2023年版~前半~ | コダワリ・ビジネスコンサルティング株式会社

DXニーズでの市場の急拡大は頭打ち

DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略です。デジタル技術を活用したビジネスモデルを導入することで、業務を最適化し競争力を高める取り組みを指します。2018年12月に経済産業省が施策を発表したことで、日本企業に波及しました。企業ぐるみの取り組みには、専門性の高いコンサルタントの起用が欠かせません。これまではDXニーズがコンサル業界の大きな牽引役になってきました。

しかし現在は「ニーズが落ち着いてきた」と考えられています。独立行政法人情報処理推進機構によれば、何らかの形でDXに取り組んでいる日本企業の割合は、2023年度時点で73.7%です。一方で「今後のDX取り組み予定」を尋ねる質問に対しては、わずか12.7%の企業しか取り組みの意志を示していません。

コンサルティングのニーズは今後も継続するものの、少ないパイを奪い合う形になることが予想されます。

参考:DX動向2024(データ集)| 独立行政法人情報処理推進機構

今後はGDPの影響で成長が鈍化する可能性も

コンサルティングファームは日本企業にサービスを提供する以上、国内GDPの影響を避けられません。ニッセイ基礎研究所の分析によると、日本のGDP成長率の中期見通しは、2020年代後半が1%程度、2030年以降はゼロ%台後半です。

コンサル業界の市場規模も、GDPに応じて停滞する恐れがあります。成長余地が少なくなる中で、いかに自社の強みを押し出し顧客を獲得できるかが鍵となりそうです。

参考:中期経済見通し(2024~2034年度)| ニッセイ基礎研究所

明確な目標を示した志望動機で高倍率を乗り切ろう

高収入で華やかな印象があるコンサル業界は、学生から高い人気を誇ります。しかしイメージだけで就活を進めると、高倍率の中で勝ち抜くことはできません。業界研究・企業研究をしっかりと行い、戦略的に文章を作成する必要があります。

その際に必須となるのが、明確なビジョンです。業務の幅が広い業界だからこそ、「コンサルタント像」をはっきりさせる必要があります。頭の中で常に「なりたい自分」をイメージしながら、コンサルタントを目指す根拠や、根拠を支えるエピソードを導き出していきましょう。

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