「貢献」という言葉を志望動機に使うと、仕事への熱意や自信を伝えやすいイメージがあります。文章の締めくくりに用いる人も多いのではないでしょうか。

しかし、安易に「貴社に貢献したい」と書くのは危険です。使い方によっては具体性を欠いたり、話が大きすぎたりと、狙いどおりに意志を伝えられない恐れがあります。使い方を正しく理解した上で、想いを的確に表現できる場合にのみ使用するべきです。

ここでは「貢献」を志望動機に用いるメリットや、使用を避けるべき場面を分かりやすく説明します。言い換え表現も紹介しますので、的確な表現を探してみましょう。

効果的な構成の作り方や職種別の例文を参考に、自分の想いに当てはまる表現を用いて、採用担当者の心を動かせる志望動機を作成しましょう。

社会人に必要な2つの貢献

社会人に必要な貢献には、「社会貢献」「会社への貢献」の2つがあります。

このうち、新入社員には「会社への貢献」が求められます。会社員にとっての社会貢献は、会社に貢献することで実現するからです。両者の関係性をしっかりと理解しましょう。

どのような仕事にも必須の「社会貢献」

社会貢献はどのような仕事にも必須です。従業員一人ひとりが直接行うわけではなく、会社全体で取り組みます。

「社会貢献」という言葉からは、環境への配慮や災害時の物資・技術の提供、地域ボランティアへの参加などを想像するかもしれません。しかしより大きな視点に立てば、日々の企業活動こそが立派な社会貢献だと言えるでしょう。

会社が提供する商品やサービス、技術が社会で役立つからこそ、企業活動を継続できます。活動が途絶えれば、営利を追求できません。社会貢献は企業が生き残る大前提です。

したがって、社会貢献を行う主体は会社(法人)です。そして、会社の運営を支えるのは一人ひとりの従業員です。あなたが頑張ることで、会社は社会での役割を全うできます。環境への取り組みや公共福祉といった大きな目標を掲げなくても、仕事で日々努力することが社会貢献につながります。

給与所得者が心得ておきたい「会社への貢献」

従業員には、会社に貢献する姿勢も求められます。これは会社と従業員の関係を考えれば分かりやすいでしょう。

従業員は会社の目的達成のために、必要な力を提供します。会社はその対価として給与を払い、日々の生活を保証する義務を負います。両者は互いの需要を満たす平等な関係です。従業員が会社に貢献するのは、平等性を保つための責務です。

「貢献」という言葉には、へりくだった印象があります。しかし会社員にとっての貢献には、「会社に求められる力を提供する」以上の意味はありません。給与所得者の基本的姿勢だと認識しましょう。

新入社員に求められるのは「会社への貢献」

新入社員に求められるのは、会社への貢献です。一人ひとりが自分の役割を自覚し、必要な仕事を全うすることで、会社は社会に貢献できます。会社への貢献が、社会貢献につながるのです。

職種によっては、仕事と社会貢献を結びつけて考えづらいかもしれません。例えば事務や人事は、直接顧客のために働く職種ではありません。しかし企業活動の継続には不可欠です。事業を継続できなければ、会社は社会的役割を全うできません。

どのような職種でも社会に貢献できることを自覚し、仕事に邁進する意識が大切です。

志望動機に「貢献したい」と書いても良い?

書いて良いのは会社への貢献のみ

志望動機に書けるのは「会社への貢献」のみです。「社会への貢献」は、会社が事業の目的に据える内容です。

例えば、福祉事業に従事する場合、「障がいを持つ人が安心して暮らせる世界を実現できるよう、社会貢献したい」と書くと、志望動機としては不適切です。「障がい者が安心して暮らせる世界の実現」は、企業や業界全体のテーマだからです。

新入社員に問われるのは、「会社が掲げる目標の実現に、どのように貢献するか」です。「障がい者の身体の動きをサポートする専門家として貴社に貢献したい」「緩和ケアで貴社の事業に貢献したい」など、具体的な貢献内容を書かなければなりません。

志望動機の最後の締めにふさわしい

「貴社に貢献したい」という表現は、志望動機の最後に使うと良いでしょう。「貢献したい」と書くからには、力を発揮する具体的な内容や、成し遂げたい仕事が明確でなければなりません。書くべき内容を整理する必要があるため、論理的な構成を意識しやすくなります。

段階を踏んで論理的に記述することで、強みや熱意が伝わりやすくなります。うまく「貢献」につなげられれば、採用担当者を納得させられる文章になるでしょう。

「貢献いたします」など丁寧すぎる必要はない

「貴社に貢献したい」と書くときには、過剰に丁寧にならないよう、注意が必要です。「貢献させていただきたい」「貢献いたします」などの表記はかえって不適切です。

「貢献」には、へりくだったイメージがあります。必要以上に丁寧に書くと、打算的な印象を持たれる恐れがあります。「アピールできる強みがないから堂々とできないのでは?」と邪推されるのです。

「貢献」を用いるときは「文体は丁寧なほど良い」という考えを改めなければなりません。打算的に受け取られないか、書いた文章を確認する癖をつけましょう。

志望動機で「貴社に貢献したい」と表現するメリット

強みや自信を示しやすい

「貴社に貢献したい」と堂々と書けば、強み自信を示すことにつながります。「貢献できる根拠がある」と読み取れるからです。スキルや経験、保有する資格などへの自信を強化できるでしょう。

逆を言えば、何の強みもなく「貢献」を持ち出すべきではありません。仕事を教えてもらう立場で「会社に貢献したい」と書いても、「いったい何で貢献するつもりだろう」と疑問を持たれます。

「貢献」は、強みや自信を裏付ける語として認識しましょう。自己アピールできる内容が多い人ほど、有効に使えます。

仕事への熱意を伝えられる

仕事への熱意を伝える役割も果たします。「貴社に貢献したい」という表現からは、求められる仕事に全力を尽くす熱意が感じられます。会社で頑張る姿勢をストレートに表現できるでしょう。

志望動機の最後には、就職後の抱負決意を書くのが一般的です。しかし書き方に気をつけなければ、「うちの会社を踏み台にしてキャリアップを図るつもりでは?」「他社でも実現できる内容では?」と曲解される恐れがあります。

「貴社に貢献したい」と表せば、当該企業で頑張る以外の解釈はできません。志願者が使いやすい表現なのです。

協調性を持ち働く姿勢を示せる

「貢献したい」と伝えることで、協調性を持ち働く姿勢も示すことができます。協調性がない人は社風に馴染めず、すぐに離職する恐れがあります。協調性は企業にとって大切な要素です。

「貴社に貢献したい」という表現からは、会社の一員になる強い意志が読み取れます。協調性を持ち、会社と同じ方向を向いて頑張れると期待されるでしょう。安易に離職しにくく、内定も出しやすいのです。

社風への適合を判断される以上、記述前には企業研究が必須です。自分に合う会社だと明確に判断できれば、「貢献したい」は大きなメリットがある表現だと言えます。

「貴社に貢献したい」と志望動機に書くために準備すること

<事前準備>

①企業研究で求められる人物像を理解する

②自己分析で仕事に活かせる強みを知る

③企業のニーズと自分の強みを照らし合わせる

志望動機に「貴社に貢献したい」と書くには、貢献できる根拠がなければなりません。十分な根拠をつくるには、順を追って強調するポイントを見定める必要があります。

①②はどちらを先に行っても構いません。大切なのは③の照合です。企業が求める人物像と適合する強みを見つけなければなりません。事業推進を後押しでき、はじめて「貢献できる」と断言できます。

①企業研究で求められる人物像を理解する

「貴社に貢献したい」と書くならば、十分な企業研究を行いましょう。求められる人物像をはっきりさせるためです。

企業研究で軸に据えるのは「会社の現状」「事業計画」「社風」の3つです。

会社の現状から必須の力を理解する

まずは会社の現状を把握します。主軸の事業だけでなく、現在行っている全ての事業を確認しましょう。会社パンフレットやホームページが情報源として期待できます。

可能であれば、業績も調べると良いでしょう。ホームページ上で決算書類を閲覧できる場合があります。損益計算書を見れば、前年度の収益や利益が読み取れます。同じ規模の競合他社と比較するのも良い方法です。

事業の遂行に必要な力が、新入社員に求められる能力です。特に業績が芳しくない場合、改善に向けた高い能力を要求されるでしょう。

企業の展望から今後の事業計画を知る

今後の事業計画も大切です。これから注力する事業に適した人材を育てようと考える会社も多いからです。将来活躍できる可能性が重要視されます。

事業計画は、ホームページや業界誌のインタビュー記事などで把握できます。特に業界誌では、執行部の展望を読めるかもしれません。

情報が一切得られない場合は、業界全体の流れを把握しましょう。明確な方向性があるなら、当該企業も多かれ少なかれ影響を受けるはずです。

社風を把握する

社風も確認しましょう。仕事に適応できても、会社の雰囲気に馴染めなければ勤務を継続できません。同じ事業を手がけていても、会社によって社風は異なります。

情報源は主にホームページです。特に代表者の言葉は雰囲気を掴みやすいでしょう。会社全体で思想を共有し、それが社風を形成するケースが多いからです。

就職情報サイトや求人サイトの口コミも強力な情報源です。社員や離職者からの生の声が聞けるかもしれません。

②自己分析で志望する会社に貢献できる強みを知る

自己分析も慎重に行いましょう。自身の強みを知らなければ、会社に貢献する未来像を描けません。

仕事に直接つながる研究内容や資格があれば、それが企業にアピールできる強みです。特筆すべきことがない場合は、これまでの人生を振り返ってください。主体的に人生を歩み始めた中学生頃から現在までを顧みて、印象的だった出来事を列挙します。簡単な自分史をつくるイメージです。

どんな物事に感銘を受けたか、どのように向き合ってきたかが認識できるでしょう。特に困難への向き合い方には、価値観性格が強く現れます。自分を正確に捉えやすくなるでしょう。

人生を振り返ることで、自分の性格や得意分野、長所を見出だせます。仕事に必要なのは、スキルや資格だけではありません。「論理的な思考力」や「課題解決能力」「協調性」なども必須です。発見した固有の能力こそ、あなたが誇るべき強みです。

③企業のニーズと自身の強みを照らし合わせる

企業研究自己分析ができたら、企業のニーズとあなたの強みを照らし合わせましょう。ぴったり重なる部分があれば、当該企業の大きな戦力になれます。会社に貢献できることを堂々と伝えましょう。

完全に適合できなくても、歩み寄る努力が可能なら強みに据えて問題ありません。就職を見据え、スキル習得や資格取得、価値観の構築を行えば良いのです。日々努力を重ねていれば、必ず会社に貢献できる人材になれます。努力を積む経験は、就職後の業務でも活きるでしょう。

志望動機で「貢献」という言葉を使わない方が良い場合

具体性を欠いた内容や、目標が大きすぎる場合は、「貢献したい」と伝えることで、逆にマイナスな印象を与えてしまうかもしれません。

「貢献したい」という言い回しが適切かどうか、判断していきましょう。

内容に具体性がない

ありがちなのが、貢献する内容が具体化されないケースです。「貢献」は便利な言葉です。「貴社に貢献したい」と書けば、あらゆる内容が想定できます。

業務の即戦力になるのも、新たなアイデアで事業を立ち上げるのも全て貢献と言えます。だからこそ、捉えどころのない内容になりかねません。

企業が求めるのは具体性です。どのような力を持ち、会社のために何ができるかを明確にしなければ、内定はもらえないでしょう。曖昧な志望動機では、採用のメリットを見出だせないのです。

内容を具体化できない場合は、「貴社に貢献したい」と使わず、適切な締めを模索しましょう。

仕事で実現できる枠を超えて大げさになる

「貢献」という言葉を大げさに捉え、社会貢献まで含めた目標を掲げる人もいます。立派な志望動機に見えても、大きすぎる目標は不適切です。

大きな目標は、個人では成し遂げられません。一人ひとりの頑張りをもとに、会社全体で達成することです。新入社員に求められるのは、「会社で何ができるか」です。会社で頑張る内容を具体化できない限り、志望動機として評価されません。

目標を見直すには、掲げた大きな夢を最終目標に据えるとよいでしょう。そのためにどうキャリアを積むか考えます。キャリアパスをもとに会社で頑張る内容を考えれば、具体的な行動が明確になるでしょう。

意外と多い!志望動機で使える「貢献したい」の言い換え表現

「貴社に貢献したい」を言い換える例

  • 貴社の力になりたい
  • 貴社業務に尽力したい
  • 貴社の利益に寄与したい
  • 貴社のお役に立ちたい
  • 貴社の戦力になりたい
  • 貴社のご期待に沿いたい など

内容が具体的でも「貢献」がしっくりこない場合もあります。「貢献」のへりくだったイメージが、文脈にそぐわない場合などです。他の表現に置き換えることで、納得のいく文章を書けるでしょう。

上記のような表現を使うと、「貢献」を置き換えて同じ内容を表現できます。ただし、「お役に立ちたい」「ご期待に沿いたい」は、へりくだったイメージに変わりありません。根本的に表現を変えた方が良い場合もあります。

「貴社で頑張ります」を言い換える例

  • 〜を通して結果を残したい
  • 〜で成功を収めたい
  • 貴社の業績を上げる一助になりたい
  • 〜で功績を挙げたい
  • 〜に邁進したい
  • 〜に真摯に取り組みたい など

上記のように意欲を伝える場合は、「頑張ります」という言葉を使わず、具体的にやりたいことを結びつけて締めるのが相応しいです。

「貢献」の持つイメージを避けつつ、会社で頑張る意欲を端的に伝えることができます。「貢献」を持ち出すよりも自然な文章をつくれるので、おすすめです。あなたの気持ちをストレートに伝えられる、最適な表現を探してみましょう。

志望動機で貢献する内容を分かりやすく伝える構成

「貢献する意欲」を伝える構成
  1. 仕事での明確なビジョンを示す
  2. 夢を持つきっかけやエピソードを挙げる
  3. 当該企業に的を絞った理由を説明する
  4. 会社に貢献する意志を伝える

「貴社に貢献したい」とまとめる場合、会社に貢献できることを明確に示さなければなりません。

上記の流れを意識することで、説得力のある文章を組み立てられます。

①仕事での明確なビジョンを示す

まずは仕事での明確なビジョンを示します。あなたが成し遂げたいこと、辿り着きたい夢を端的に書きましょう。

可能であれば、企業が主たる事業に掲げる内容、今後大きく事業展開する内容を選ぶと良いでしょう。企業と同じ方向を向いていれば、「貢献」につなげやすくなります。

注意したいのは、当該企業で実現可能な内容を書くことです。競合他社で実現できても、当該企業が事業化しているとは限りません。企業研究を念入りに行いましょう。

②夢を持つきっかけやエピソードを挙げる

夢を持つきっかけエピソードを挙げます。ここで説得力のある内容を書ければ、仕事にかける熱意や、まっすぐな気持ちが伝わりやすくなります。

学問や研究、アルバイト、ボランティア活動など、内容は問いません。経験をもとに構成できれば、強い想いを示しやすいでしょう。

ただし嘘や捏造はご法度です。ESは面接にも使われることを前提に、何を聞かれても答えられるよう留意しましょう。

③当該企業に的を絞った理由を説明する

①で掲げたビジョンを達成するために、当該企業が最適であることを示します。優位性を強調すると書きやすいでしょう。そのためには事前の企業研究が必須です。

企業研究で優位性を把握しづらい場合、社風企業風土に焦点を当てましょう。ホームページで公開しているブログ記事や、X(Twitter)の呟きは、雰囲気や思想が現れやすく、社風の把握に最適です。SNSを通じてブランディングしているケースもあります。優位性を探すヒントが得られるでしょう。

④最後の締めで「貴社に貢献したい」意志を伝える

就職後の業務遂行への意志決意を具体的に示します。その際「貴社に貢献したい」と表現すると、熱意が伝わりやすくなります。

大切なのは、具体的な業務内容に言及することです。「〇〇部(部署や課)に所属し、〜の仕事に取り組みたい」「〜の業務で成功を収め、プロジェクトを成功させたい」など、会社で達成したい目標を詳細に表明してください。具体的であればあるほど、企業からの評価は高くなります。

ここでも企業研究が必須です。会社の中身を隅々まで知らなければ、具体的な目標を掲げられません。具体性のない志望動機にならないよう、注意してください。

志望動機で貢献したい気持ちを強く示した例文7選

営業職

例文

〇〇産椎茸の魅力を広めたいと思い、貴社営業部を志望しました。〇〇市で育った私にとって、椎茸は肉厚でジューシーなものが普通でした。しかし東京に出て安価で売られる椎茸を食べ、認識を改めました。椎茸は〇〇市が世界に誇る逸品です。

現在、〇〇産椎茸は首都圏でほとんど知られていません。貴社は〇〇産椎茸の生産業者でありながら、流通網を拡充する努力を続けています。日本各地での販売に向け、展示会や商談会に出席されていることを知り、私も一員になりたいと強く思うようになりました。

貴社に入社できたら、首都圏での販路開拓に努めたいです。安価な椎茸にはない魅力を訴求できるよう、先輩方から営業手法を貪欲に学びます。サークルの代表を務めた経験により、人との関係構築には自信があります。新規お取引先と良好な関係をつくり上げ、販路開拓で貴社に貢献したいです。(400字以内)

「貴社に貢献」を締めの言葉として使った例文です。貢献する内容が具体的で、やりたいことを明確に示しています。

主張の根拠に「人間関係構築への自信」を挙げており、「貢献」を持ち出しても不自然さがありません。何より、地元産椎茸への愛着が文章全体から滲み出て、就職への並々ならぬ想いを感じさせます。採用担当者も心を動かされるでしょう。

事務職(法務事務)

例文

大学で学んだ法律の知識を活かし、法務事務に携わりたいと考え貴社を志望しました。私は課外活動でNPO法人に参加し、立ち上げを補助しました。苦労したのが定款の作成です。

企業活動に対応するには広範な知識が必要だと実感しました。一方で法律の知識を実務に活かす魅力を知り、法務事務に携わりたいと思うようになりました。

不動産業界は法律に関連した書類を作る機会が多く、身につけた知識を実務で活かしやすい環境です。特に貴社は法務のスペシャリストが多数在籍し、書類作成や登記の情報をブログで分かりやすく公開しています。社員のキャリアパス形成にも力を入れており、貴社でなら法務事務で大成できると考えました。

入社後は不動産業界の商慣習を全力で学びます。その上で法務の経験を広げていきたいです。先日宅建を取得し、就職準備を着々と進めています。知識を実用的な力に変え、貴社に貢献できるよう努めます。(400字以内)

「貢献できるよう努める」という表現を使った例文です。新卒では、知識を仕事で活用する自信を持てない人も多いでしょう。「貴社に貢献する」と言い切らず、努力する姿勢を前面に出すのは賢い書き方です。

努力することを強調する場合も、目標を明確にする必要があります。「努力します」という表現も、あらゆる物事に適応できます。努力する内容がはっきりと伝わらなければ、評価に結びつかないため注意が必要です。

販売職

例文

シニアのお客様に似合う服を提案するショップ販売員になりたいと考え、貴社を志望しました。年老いた母と服を買いに行くと、服選びの難しさを実感します。身体は老いても心は若く、しっくりくる服が少ないからです。困ったときに適切なアドバイスを得られる店の必要性を強く感じ、私自身が店員になり、喜んで欲しいと考えるようになりました。

貴社はシニアブランドの老舗で、50代から80代まで幅広い年齢層をターゲットにしています。色合いが明るく、シニア服のイメージを覆したのも魅力です。貴社でならシニアのお客様に本当に似合う服を提案しやすいと考えました。

入社後は服についての知識を広く身につけ、〇〇のブランドで活躍したいです。長年のアルバイトで、接客技術には自信があります。お客様にとって気軽に話せる販売員になり、売上とブランドイメージの向上に貢献したいです。(400字以内)

この文章の強さはきっかけ部分です。実体験から業界の課題を見つけ出し、自ら解決に向け歩み出す決意をしています。課題解決には幅広い年齢層に対応する当該企業が最適で、選択に迷いがありません。迷いのないまっすぐな気持ちは、採用担当者にもはっきり伝わるでしょう。強い意志を持ち仕事にあたると予測でき、会社も安心して迎えられます。

この志望動機であれば、「貢献したい」という表現に違和感はありません。顧客のために一生懸命になり、会社で活躍する未来を想像できます。「会社に貢献するに違いない」と思わせる、強い志望動機です。

技術職

例文

学校や保育施設で使う顔認証技術の開発に携わるため、貴社を志望しました。顔認証システムは多くの企業で導入され始めたものの、教育現場では十分な活用が進んでいません。安全性の観点から、教育現場でこそ導入が必須だと考えます。導入には膨大な個人情報の管理システムも同時に構築し、誰もが安心して利用できる工夫が必要です。貴社は児童の登下校見守りサービスや、塾での入退室管理システムなど、先進的な技術を多数開発しています。学校での導入に向け技術開発を続けていることを知り、私もプロジェクトに参加したいと考えました。

私は大学で顔をデジタル化する人工知能技術を研究してきました。入社が叶った暁には、貴社開発部門に所属し、研究成果を実際の技術に反映させたいです。全国の学校に貴社の技術を導入できるよう、プロジェクトの一員として貢献します。(400字以内)

技術職を目指す人が「貴社に貢献したい」と書く場合、それ相応のスキルを持っていなければ説得力がありません。スキルは経験によって培われるため、新卒では限界があります。

この文章のように大学で該当分野の研究をした人や、独自に技術を積み重ねた人なら、不自然さはありません。一直線に夢を目指す強い志が伝わるでしょう。

スキルが足りない場合は、「邁進したい」「真摯に取り組みたい」など、他の表現を選んだ方が自然に仕上がります。状況を見極め、適切な表現を心がけましょう。

介護職

例文

高齢者の介護に携わり、在宅介護の負担を少しでも減らしたいと思い貴社を志望しました。私は幼い頃から母が祖母の介護をする様子を見てきました。祖母は認知症で、体力的にも精神的にもつらい介護だったと思います。正社員で働き続けるのは難しく、アルバイトをしながら自力介護を続けていました。私も介護の資格を取得し、少しでも力になりたいと思うようになりました。

貴社は〇〇町で唯一、認知症向けのデイサービスを実施しています。認知症介護は大変だからこそ、意義のある仕事になると考えます。

介護職を目指すようになってから、認知症介護士と認知症ライフパートナー2級の資格を取得しました。入社後は学んだ知識を現場で活かせるよう、先輩方を見習い、いち早く活躍できる人材を目指します。認知症介護のエキスパートを目標に据え、貴社に貢献したいです。(400字以内)

介護は体力的にも精神的にも大変な仕事です。就職後すぐの離職を防ぐためにも、どれだけ使命感を持ち志望しているかが問われます。

この文章では、身内の介護を間近で見たことが使命感につながりました。大変な認知症介護に敢えて取り組む理由が明白で、熱意を持ち志望していると分かります。在学中から資格取得の努力を続けていることも、高評価のポイントです。

介護は「社会貢献」につなげやすい分野です。最後のまとめに持ってくるのは、あくまでも会社への貢献です。社会貢献を軸に考えないよう、注意してください。

企画開発職

例文

季節に応じた男性向けスキンケア商品を企画するため、貴社を志望しました。男性向け商品は、「しっとり」「さっぱり」など大まかな区分で市販されていることがほとんどです。肌のコンディションは気温や湿度で変化します。現在の区分だけでは適切な商品を選べません。季節ごとに細分化した商品を提案することで、ニーズを喚起できると考えます。

貴社は年齢別の男性用化粧品を市販した実績があります。特にシニア向け商品は画期的で、私の祖父も愛用しています。貴社の企画力は卓越しており、私も貴社で夢を叶えたいと思うようになりました。

私はこれまでさまざまな化粧品を試した、いわゆる「美容男子」です。日々化粧品を使う中で、さまざまなアイデアが生まれます。入社後はマーケティング技術を身につけた上で、柔軟な企画を出していきたいです。季節に応じたスキンケア商品を筆頭に、革新的な商品で貴社の躍進に貢献します。(400字以内)

やりたいことを明確に示した例文です。男性向けスキンケア商品に焦点を当てた上で、「季節ごとに細分化した商品をつくりたい」と目標を具体化しています。

業界全体の課題を見つけ出し、解決に必要な商品を提案する姿勢は、まさに企画開発職を目指す人ならではです。

ただし、この志望動機を好意的に受け取るかどうかは、企業の姿勢次第です。将来の事業計画と、志願者の夢がぴったり一致することは現実的ではありません。

「男性向けスキンケア商品の裾野を広げたい」「男性向け化粧品の拡充のために、さまざまなアイデアを募りたい」など、現状を打破する気持ちが強ければ、志願者の発想も好意的に受け取られるでしょう。そうでない場合、「見当外れの夢を語っている」と思われかねません。企業研究をしっかりと行い、事業計画や社風、企業風土を確認しましょう。

掲げた目標が受け入れられるなら、「貴社の躍進に貢献します」とまとめるのは良い判断です。事業に邁進する覚悟を感じてもらえるでしょう。

クリエイティブ職

例文

心に残るコピーで、商品の魅力が強く伝わる広告を制作するために貴社を志望しました。近年は紙媒体だけでなく、動画広告でも興味を惹くコピーライティングが求められます。そのせいか、一瞬で視聴者に訴求するキャッチーなコピーが多いように感じられます。私は商品とじっくり向き合い、長く心に残るコピーを制作したいです。

貴社が手がけた広告は、商品特性を的確に表しており、コピーが心に残り続けます。特に「各駅停車の旅」のポスターは、美しい写真と詩情豊かなコピーで大好きな作品です。貴社でなら、私の目指す作品を制作できると考えました。

大学では広告研究会に属し、さまざまな広告を研究しています。広告の多様性は理解しているつもりです。入社後は取材のノウハウをしっかりと学びながら、どんな商品でも的確に魅力を表現できるよう努力します。心に残る作品を生み出すコピーライターとして、貴社に貢献したいです。(400字以内)

クリエイターが注意したいのは、企業の方向性とのズレです。広告代理店は営利企業です。作品制作を極める姿勢で就職すると失敗します。企業の方向性を正しく見定めなければなりません。

それには当該企業の制作物を見るのが一番です。この文章のように、制作物に憧れて就職するのなら、企業とのズレは生まれないでしょう。

この文章では、企業と同じ方向を向き制作を行う姿勢を明確に示しています。広告研究会で鍛えた目が自信の根拠となり、「貢献」を持ち出す不自然さがありません。取材のノウハウを学ぶ姿勢も、高評価のポイントになるでしょう。

就活を通し「貢献」の意味を深く考えよう

「貢献」は奥深い言葉です。安易に使用すると、主張が具体化されなかったり、目標が大げさすぎたりと、かえって悪い印象を与える恐れがあります。へりくだったイメージもあり、使い方次第で卑屈に感じられることもあるでしょう。

構成をよく考え、適切に使わなければなりません。うまく使いこなせない場合は、代わりの言葉を用いた方が良い文章になるかもしれません。

今後、面接でも「貢献」を持ち出す場面があるでしょう。就職後も頻繁に使われるかもしれません。しかし言葉の深さを考えると、安易な使用はおすすめできません。

社会人の発言には責任が伴います。「貢献できる明確な根拠」を持たずに発言すると、責任を取りきれなくなります。

志望動機の作成を機に、「貢献」という言葉を一度深く考えてみましょう。あなたの就職活動、そして来るべき社会人生活の糧になるはずです。

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