現代社会に欠かせないものの1つに、情報通信技術があります。古くは電話、現代ではメールやSNSに代表される時間と距離と飛び越えた情報のやり取りは、現代文明を大いに発展させました。最早、IT産業なしに現代社会は成り立たないと言っても過言ではありません。
また、社会をより便利にすべく日夜新しい技術が生み出されている、成長著しい業界でもあります。そんな社会にとって欠かせないIT業界を志望する人も多いのではないでしょうか。
この記事では、IT業界への就職を目指す人のために、業界の基本情報を解説するとともに、履歴書などに記載する志望理由を書くときのポイントを解説します。
目次
IT業界の特徴
そもそもITとは「Information Techonology」の頭文字を取った用語であり、狭義にはパソコンやスマートフォンをはじめとした情報の取得、加工、保存、伝達に関する技術全般を指します。
より広義の意味で捉えるならば、これらに端を発するバーチャルリアリティやSNSなどのコミュニケーションツール、そして、AI技術なども網羅した幅広い分野の業界です。そのため、就活生から見ると細かい部分が分かりにくい業界であることは否めません。
自分の目指す位置を確認するためにも、まずはIT業界をさらに深く掘り、分野や職種などを詳しく解説していきます。
IT業界の5つの分野
IT業界は情報通信に関する内容を幅広く網羅しているため、扱う情報の種類や扱い方によって、さらに5つの分野に分かれます。そのため同じ業界でありながら分野が異なると、全く異なる仕事をすることになってしまいます。
志望動機を考えるためにも、自分が目指す仕事や企業がどこに分類されるのか、まずはIT業界の5つの分野を代表的な企業と合わせ紹介します。
WEB・インターネット分野
代表企業:楽天、yahoo!
1つ目は、WEB・インターネット分野です。この分野に属する企業は、インターネット上における天気予報や買物などのサービスの提供をメインに、各種WEBサイトのデザインやSNSの制作などを扱っています。システムを支える技術者だけではなく、WEBサイト作成を担当するデザイナーのようにクリエイティブな面も求められる分野と言えるでしょう。
IT業界の分野としては比較的新しいため、既存の大企業だけではなく現在も多くのベンチャー企業が飛び込んでくる分野です。また、仕事にインターネットが欠かせないため、リモートワークやフレックスタイム制などを取り入れた、柔軟な働き方ができる点も見逃せません。
通信インフラ分野
代表企業:NTT、ソフトバンク、KDDI、NTTdocomo
2つ目は通信分野です。電話に始まり、現代ではメールやインターネットなどのIT産業に必要な電波塔の設置や回線の敷設など、情報通信の根幹を支える分野と言えます。普段我々がインターネットを快適に使えるのも、ネットワークやサーバー、データベースなど、多くの通信インフラに従事するエンジニアの活躍によるものです。
NTTを筆頭に、インターネット普及前から通信インフラを自社で所有している企業はいずれも大企業です。経営基盤が安定しているだけではなく、電話やインターネットは今後も一定の市場規模が続くと予想されているため、安定した収入の見込める分野でもあります。
ハードウェア分野
代表企業:日立製作所、ソニー、パナソニック、東芝
3つ目はハードウェア、つまり、主にパソコンやスマートフォンなどのデバイスの外側を作る分野です。付随してパソコンを動かすために必要なプログラムの設計開発を行う仕事も、この分野の一角を占めます。モノづくりとの関連が強いため、日本を代表する多くの電機メーカーが、ハードウェア分野に属しています。
精密機器を扱うため仕事の専門性が高く、IT技術のなかでも電子工学に関する知識や技術が求められます。ただ、昨今のIT業界は、外側よりも中身のソフトウェアやアプリケーションに重きを置いているため、分野としてはやや向かい風と言えます。
ソフトウェア分野
代表企業:Microsoft、apple、任天堂
4つ目は、ソフトウェア分野です。パソコンやスマートフォンを動かすために必要な基幹プログラムであるOSや、パソコンで使用するソフトを開発する仕事をしています。その意味では、任天堂に代表されるゲーム会社もソフトウェア分野に属します。
IT業界におけるソフトウェア分野の伸長は非常に著しく、毎年のように新しいソフトの開発が続けられています。この分野で働くためには、プログラミングスキルやプログラム言語への理解は必須です。
情報処理サービス分野
代表企業:NTTデータ、野村総合研究所
5つ目は、情報処理サービス分野です。聞きなれない分野ですが、クライアントに対してIT技術や集積したビックデータを提供し、問題解決に導くことをメインの業務としています。企業だけではなく、官公庁や自治体など規模の大きい団体をクライアントとして、日々社会発展のためにデータを集め分析する分野です。
問題解決に導くことがメインのため、プログラミングやネットワークに関する専門的な知識よりは、他業界に関する理解や問題解決に導くための統計などの分析能力が求められます。その点では、他の4つの分野とは異なる趣きのある分野です。
IT業界にある職種
IT業界と聞くと、多くの人はコンピュータにおけるプログラミングをイメージするのではないでしょうか。確かに、コンピュータはIT技術の要でもあるため、それに関わるプログラマーはIT業界の代表的な仕事と言えるでしょう。
しかし、前述の通り、IT業界が扱っている分野は幅広いため、プログラマー以外にもさまざまな仕事をしている人がいます。ここからは、IT業界の代表的な職種について解説します。
ビジネス(営業職)
1つ目は、一般企業にも存在する営業職です。IT企業の多くはソフトやハードを売る会社です。どれだけ良いモノを作っても認知され、購入に至らなければ、企業にとって全く意味がありません。そのため、IT企業にもほかの企業と同様に、自社製品を売り込む営業担当がいます。
主な仕事としては、顧客の元へ出向き課題をヒアリングして適切なサービスを提案したり、導入後のアフターフォローなどが挙げられます。内容は他業界の企業と大きく変わりませんが、自社で提供するサービスはITに関する専門性の高い商品やサービスです。営業職にも豊富な知識が求められるため、一般的な営業職と比較すると高い専門性が必要です。
エンジニア・プログラマー
2つ目は、コンピュータのプログラムの設計や作成、保守などを行うシステムエンジニアやプログラマーです。IT業界に関連する技術職であり専門分野で、扱うソフトの種類によってセキュリティ、ネットワーク、パソコンシステムと細かく専門化されています。
また、多くの場合、システム開発は顧客からの与件設定に基づき仕様書の作成を行うシステムエンジニアと、その仕様書を受けて実際に作成するプログラマーに分かれています。他にも、ハードウェア分野や通信インフラ分野に関わるならば、電波塔や回線の設置など実体のあるモノに関わるエンジニアも数多く存在します。
プロダクトマネージャー・プロジェクトリーダー
3つ目は、開発するソフトに応じた予算確保やスケジュールなどを決定するプロダクトマネージャーとプロジェクトリーダーです。1本のソフトを開発するためには、顧客の与件から仕様書を仕上げるエンジニア、それに基づき作り上げるプログラマー、そして、受注や販売を手がける営業と多くの人間が必要となります。彼らの役割は、ソフト開発に必要な進捗管理を行うことです。
一般的には経験を積んだエンジニアが、リーダーを経てプロダクトマネージャーへと昇格します。エンジニア同様にITに関する高い技術は勿論ですが、多くの人間を管理するため、マネジメント能力やコミュニケーション能力も試される職種です。
WEBデザイナー・WEBディレクター
4つ目は、WEBサイトの作成を手がけるWEBデザイナーとWEBディレクターです。ネットを利用したマーケティングや販路の確保のためにも、企業が自社のホームページを持つことは最早常識と言えるでしょう。そのなかでWEBページ作成の総指揮を取るのがWEBディレクター、実際に作成を手がけるのがWEBデザイナーです。
デザイナーとディレクターも一通りのプログラミングに関する知識は必要です。実際にWEBページを運用するときは、見栄えが何よりも重視されます。そのため、画像や動画などの編集ソフトの技術も求められます。
ITコンサル
5つ目は、ITコンサルです。企業の経営や業務課題などをヒアリングし、ITの活用によって問題解決に導くことが彼らの仕事です。システムエンジニアと似たような仕事ですが、コンサルは顧客の問題解決が、エンジニアは設計や開発がメインとなる点で異なります。また、ITコンサルは設計ではなく「運用」によって解決を図ることもあります。
ITコンサルは、ほかの職種とは異なりIT業界に関する知識だけではなく、クライアントとなる業界や企業に関する深い理解が求められます。また、相手が抱える問題を解決に導かなければならないため、コミュニケーション能力や観察力なども必要です。
今後のIT業界の傾向
総務省が発表した「平成30年度 ICTの経済分析に関する調査」では、IT業界の市場規模は、99.8兆円と実に全市場の10%を占めています。また、業界内の多くの企業が自社の成長を感じているなど、依然として成長が止まらない分野であることは間違いないでしょう。
つい先日通信速度が5Gになったばかりですが、すでに次の6Gの開発が進んでいるように技術革新にも目を見張るものがあります。まだ研究段階の技術も多く存在するため、引き続き発展は続くでしょう。大学生にとっても、成長著しい業界であるため就職先として人気の業界です。
反面、業界の成長の速さに対して、法規制が進んでおらず、人手不足が深刻である点には注意が必要です。既に2030年には必要とされる人手に対して、80万人以上足りなくなると予測されています。現時点でも、長時間労働や給与の低さが問題視されており、今後の労務環境が厳しい状況であることは見過ごせません。
ほかにも、デジタルディバイドやAIのシンギュラリティ問題など、依然として課題は山積しており、決して光の面ばかりでないことは理解しておきましょう。
参考:
総務省 情報通信白書令和3年版
I日経クロステック IT大手5社、2022年の展望と成長の一手
日経クロステック 23年卒就活生のIT業界志望が増加、採用は「順調」「異常事態」の二極化
経済産業省 IT人材需給に関する調査
IT業界で求められる人材とは
どんな仕事にも向き・不向きがあることは間違いありません。特にIT業界は幅広い分野をひとまとめにしているため、同じ業界であっても、職種や分野によって求められる人材が異なります。
例えば、プロダクトマネージャーにはリーダーシップが、WEBデザイナーには、デザイン技術が必要です。より専門的な技術に関しては、採用後に指導してくれる企業も多いため、どの分野であっても必ずIT業界ならば求められる要素を持った人材について解説します。
学習意欲が高い人
IT業界は技術に関する理解や知識が求められます。勿論、新卒の段階で知識がないことは、未経験を採用することもあるため、企業もそこまで問題にはしないでしょう。しかし、その後も知識がないままでは、企業も雇った意味を見出せなくなります。特に、専門用語と専門技術の粋でもあるプログラマーなどのエンジニア関係は、知識や技術がなければ仕事が成り立ちません。
また、IT業界は日々新しい技術が生まれています。入社してからも新技術の発表は続くため、常に知識や情報のアップデートが欠かせません。自ら積極的に「自分の知らないこと」を知りに行こうとする学習意欲は、IT業界に就職する上で必須と言えます。さらに言えば、「知っている」だけではなく、その技術を「どのように活かすか」まで考えたアピールをすると、企業に業界に関する理解の深さが伝わります。
論理的思考を持っている人
IT業界の中でも特に、プログラマーやエンジニアには不可欠な能力が論理的思考力です。プログラミングは「Aという命令をすればA」という風に決まった行動を取るようにしか設計できません。この決まった行動の組み合わせを幾つも作ることで複雑な動きを実現しています。この複雑な組み合わせのなかで最適を探し出すためには、プログラムの筋道を捉える論理性が重要です。
また、ITコンサルや営業職も物事を筋道立てて説明する方が相手に伝わりやすくなります。IT業界はコンピュータやITに詳しい人だけを相手にしているわけではありません。むしろ、全く分からない人を相手に伝えることの方が多いと言えます。そのような意味でも論理的思考力は、IT業界を志望する上で必要な能力と言えるでしょう。
コミュニケーション能力がある人
IT業界におけるコミュニケーション能力とは、相手と交渉できる能力を指します。IT業界で生み出される製品やソフト開発過程は、顧客への販売までの過程で多くの人から人へと流れる河のようなものです。そのなかには次の工程を予想した締切が設定されています。予定通りに進まず締切が守れないときには事前に相談するなど、相手ありきでの行動がIT業界では必要です。円滑に開発をするためには多くの人とのコミュニケーションが欠かせません。
また、プレゼンテーションとしてのコミュニケーション能力も重要視されます。IT業界が相手にするのは、その実態をよく知らない業界の外にいる一般人です。彼らに興味を持たれ、かつ理解してもらえるような伝え方ができることは、IT業界へ飛び込むうえで身に付けていかなければならない能力と言えるでしょう。
IT業界を志望するときの志望動機の書き方
志望動機は面接や履歴書において、必ず尋ねられる要素の1つです。この志望動機を通して、企業は求職者の業界への理解や熱意を測っています。曖昧な志望理由では、企業の目に留まりません。
企業の目を引く志望動機を書くためには、事前の準備が重要です。ここからは、IT業界を志望するときの志望動機の書き方について解説します。
まずは業界研究から始めてみよう
IT業界は非常に多くの分野を網羅し、日常生活に溶け込んでいます。乱暴な言い方をすれば「IT技術を使用している会社は全てIT業界」と言うことも可能です。しかし、これではIT業界に向けた志望動機は考えられません。IT業界に対する漠然とした理解しかないため、必然的に書き上げる文章も曖昧なものになってしまいます。
これを防ぐためにも、まずは「IT業界とはどんな世界なのか」を明確に自分の中に作り上げることが重要です。どんな人が働いているのか、どのような企業があるのか、市場規模や今後の展望、年収や待遇など、調べることは数多く存在します。就職サイトや各種業界情報誌、インターンなどを通し、IT業界を深く掘って「現実のIT業界」を理解しましょう。
その企業でしかできないことを探る
極端なことを言えば「営業の仕事がしたい」という志望動機では、企業からすると納得できません。営業の仕事であれば、別にIT業界にこだわる必要は全くないからです。このように「どんな会社でもできること」を志望動機に挙げてしまうと、企業からすれば「弊社である必然性が弱い」という印象になります。これでは志望動機としては不十分です。
志望動機を考える上で重要なことは「その企業にしかない強み」を理解することです。IT業界は日常生活と関係性が深いため、世間からのニーズに沿ってトレンドが移行します。そのため、ほかの業界と比較してもIT業界は似たようなサービスが多くなる傾向にあります。そのなかで「何故、弊社を選んだのか」について明確な回答が出せることは、企業に対する理解の深さを示すことにつながります。
自分の強みと企業の人物像をすり合わせる
同じWebサービスを行う会社でも、例えば、Amazonや楽天は通販販売会社、yahoo!やgoogleは検索サイトがメインの会社です。そのため、同じ分野にあっても前者と後者では求められる資格やスキル、人物像まで全く異なります。自分の長所が企業によっては弱点と捉えられることもあるため、企業理念やメインになる業務内容、今後の展望などから企業が求めている人物像を読み解きましょう。
同時に「自分はどういう人間なのか」という自己分析も欠かせません。IT業界も結局は人でできた組織のため、どうしても合う合わないは存在します。入社後のミスマッチを防ぐためにも「本当に自分はIT業界に向いているのか」という問いかけは重要です。また、見つかった強みはエントリーシートや面接で伝えることになります。曖昧な内容では企業に伝わらないため、自分の強みを明確にするためにも自己分析は必要です。
また、各企業で同じ職種でも業務内容は大きく異なります。IT業界において自分が「したい」ことが、企業によっては専門外であることも十分に考えられます。企業研究を行う上で「自分のしたい仕事が実現できる」ためにも、企業の業務内容は十分に確認しておきましょう。
IT業界を志望する志望動機の例文
ここまでの内容を踏まえ、IT業界を志望する志望動機の例文を紹介します。志望動機には必ず「この企業でなくてはならない理由」が必要です。少しでも採用担当に「別に弊社である必要性がない」と思われた瞬間、企業に対して自分の志望にかける熱意が届かなくなります。必ず「その企業ならでは」の要素を織り込みましょう。
【例文1】ITコンサルの志望動機
私は、貴社の掲げる「ITを通じて社会を豊かにする」という企業理念に共感を持ち、志望しました。私は買物にも車で1時間以上かかる田舎の出身です。ちょうど大学入学する時期にネット回線が敷設され、我が家でもインターネットが使えるようになりましたが、時間と空間を飛び越えて、やり取りできるネットの便利さに驚かされました。
ITコンサル企業である貴社は、多くの社会問題をIT技術の導入によって解決に導いた実績がある企業です。そのなかには過疎化の進む地域と都市部をネットで結びつけることで問題を解消した事例があることも知っています。
私の地元が抱えていた買物や通信の問題がネットの導入によって解決できたように、まだ多くの田舎では同じような問題を抱えている場所があるのではと考えています。貴社に入社後は、ITコンサルとして地方の抱える問題の解決に携わりたいと考えています。(400字以内)
基本的に「業界に興味を持った理由」から始め、「企業に興味を持った理由」「その企業でなくてはならない理由」につなぎ、そして「入社後にしたいこと」で結ぶのが志望理由の流れです。
この例文では、それぞれの段で「業界への興味」「企業への興味」「入社後」の3つを分かりやすく示しています。特に、2段目の「企業への興味」については、企業の実績は相当深く企業について調べないと出てきません。企業側も自社への興味を強く感じられる文章となっています。
【例文2】Webデザイナーの志望動機
私は貴社の「誰しもがクリエイター」という社風のもと、Webデザイナーとして活躍したいと考え志望しました。
私は大学時代に所属していたサークルでホームページ作りを任されました。最初は右も左も分からず参考書を片手に悪戦苦闘していました。しかし、出来上がったホームページの影響は大きく、ページを見た人からのサークルへの問い合わせや入会者の増加につながりました。この経験から、私はWebデザインの可能性を感じ、Webデザインを通して企業や商品の価値を、世界に発信できるWebデザイナーを目指しています。
現状、私のWebデザインのスキルは非常に基礎的なものです。入社までにトレンドとなるデザインを勉強するほか、Illustrator、Photoshopなどの作成に必要なソフトの技術を高める予定です。貴社でデザインの製作に取り組み、将来的にはディレクションができる社員へと成長したいと考えています。(400字以内)
基本的に、新卒者はポテンシャル採用であり現時点の技術や経験などは二の次です。しかし、その中にいる基本的な知識がある人材、現時点で入社後に向かった動きを始めている人材を企業が放置するはずがありません。既に何らかのIT技術に関連する知識や技術があるならば、それをアピールしましょう。
また、入社後に向けた動きをアピールすることで、学習意欲の高さも伝わります。IT業界が一定のトレンドで動くのは、Webデザインも例外ではありません。このトレンドを押さえようと動いている意欲の高さは、企業も高く評価するでしょう。
【例文3】プロダクトマネージャーの志望動機
私が貴社を志望する理由は、貴社がゲームメーカーとして第一線を走り続け、常に子どもたちに新しい楽しさを提供していることに魅力を感じているからです。貴社が開発・販売したゲームを私は小さいころからプレイし続けています。特に大人気の「(作品名)」は、ネットを通じて離れた場所にいるプレイヤーとも対戦できるなど、この作品を通して、私も日本中に友人ができました。
私は過去、貴社のゲームによって自分の世界が広がったように、これからの子どもたちにもゲームを通して多くの事を学んでいってほしいと思っています。これまで塾講師として子どもたちに接した経験と持ち前の社交性を活かし、貴社に入社後は、プロダクトマネージャーとして、子どもの世界を広げられるようなゲーム開発に数多く携わりたいと考えています。(350字以内)
どんな些細なことであっても「その企業の〇〇が好き」というのは、立派に興味を持った理由です。この例文では、ゲームを通じた自分の経験談を踏まえ、その経験から企業に興味を持った理由、そして、どのような貢献をしたいのかというポイントにスポットを当てています。
一口にゲーム開発と言ってもプログラミングがしたいのか、それともプランニングがしたいかによって話が変わっていきます。開発にどのように関わりたいかを具体的な職種などで示すと、企業にも自分がイメージしている働き方がより伝わりやすくなります。
【例文4】エンジニアの志望動機
私が貴社を志望したのは、貴社が研究を進めているAI開発に自分も携わりたいと考えたからです。自動車や鉄道など多くのインフラは勿論のこと、私も自宅ではAI制御の調理器具や家電を使用しており、非常に重宝しています。AIは今後の社会の発展にかかせないものだと考えています。
貴社は、AI開発について豊富な実績をお持ちであり、特に私は〇〇社と共同で進められているロボットに搭載するAI研究に非常に魅力を感じています。社会をさらに発展させる可能性のある仕事に私も携わりたいと思い、貴社を志望しました。
貴社に入社後は大学で学習した電子工学に関する知識や、プログラミングの技術などを活かし、貴社のAI開発に従事したいと考えています。そして、将来的には私の夢であり、貴社の長期目標でもある「人と遜色のないAI」を開発したいと思います。(400字以内)
この例文の最たる特徴は、最後に自身の目標を掲げた点です。IT業界は自ら学習する姿勢のある人材が好まれます。未だ誰も成し遂げたことのない目標を語ることで、そこに至るまで努力し続ける学習意欲の高さをアピールできます。
また、企業の長期目標や進めている研究などは、相当深く企業研究を行わないと書けません。それだけ研究を深く行ったことが分かり、求職者の志望にかける熱意が伝わる志望動機です。
【例文5】ビジネス(営業職)の志望動機
私は通信サービスの提供を通じて、世界中の人をより身近につなげたいと考え、貴社を志望しました。通信サービスを提供する企業のなかでも貴社は、国内だけではなく国外にも通信サービスを提供しており、他にはない巨大なネットワークを持っています。このネットワークを活用することで、より世界が身近に感じられるような世界を実現したいと考えています。
大学時代は感染症の影響もあり外出もできず、自宅で講義を受けるだけの日々でした。しかし、この間、私はWeb会議ツールを活用し、自分自身の英語の練習も兼ねて世界中の人と毎日のように会話していました。本当は遠く離れた場所にいるのに、タイムラグもなくスムーズに会話ができるIT技術の発展は素晴らしいと感じています。
入社後は感染症の間に培った英会話のスキルを活かし、貴社の通信サービスをより広げていきます。まだ、貴社のサービスが浸透していない国へ出向き、その国の実情にあったサービスを開発に伝えることで、より良い通信サービスの開発に貢献したいと考えています。(450字以内)
この例文では、真っ先に「志望動機」から始めています。このような構成にすることで、企業側にも明確に志望動機が伝わり、印象に残りやすくなるでしょう。また、IT業界に興味を持った理由が、そのまま自分の強みへと転化できるため、一連の話の流れにズレがなく、読んでいる側もすんなりと入っていきます。
企業研究が十分であれば、企業の強みも断言できます。最初に企業の強みを断言したことで、企業に対し「企業研究を十分に行っている」アピールにもなります。伝え方によって誤解を生まないためにも、可能な限り企業のホームページなどを参考にするとよいでしょう。
IT業界の志望動機を書くときの注意点
分野と職種にあった自分をアピールする
IT業界は細かく分野や職種が分かれています。それぞれに求められるスキルや資格などが異なるため、志望動機は書き分けなければなりません。極端な例を挙げるならば、WEBデザイナーを志望しているのに、この分野では全く使用しないプログラミング言語が分かることをアピールしても、企業には響きません。
業界研究を行うなかで、分野・職種ごとに求められる人物像は分かっているはずです。企業によっても、重視するポイントは異なります。それらを必ず念頭に置いた上で、志望動機や自己PRを作成しなければなりません。また、これらの文章は企業が求める人物像に沿ったアピールになるように、それぞれ別のことを書かずに一貫させましょう。
経験がないことは素直に書く
IT業界は文系大学出身や全くの知識がない人も募集しています。そもそも、新卒の段階でコンピュータに関する豊富な知識を持っている人は、大学で情報通信について学んだか、専門学校などを卒業した人しかいません。豊富な知識がある新卒に絞って募集しても、人が集まらないことは企業も理解しています。
基本的に新卒の場合は、今後の成長に期待を込めたポテンシャル採用です。現時点で詳しいことを知らなくても、これから学んでいこうとする気概があれば、就職も不可能ではありません。知識や経験がないことを取り繕わず、志望動機には自分自身に経験がないことを素直に書きましょう。その方が採用担当に素直さや誠実さが伝わります。
ただ、IT業界は移り変わりが激しい業界です。その移り変わりに付いていくには、自分で学ぶ姿勢が不可欠です。企業も研修などは実施してくれますが、「教えてくれることを待つ」受け身の姿勢では、学習意欲は伝わりません。必ず自分から積極的に動くことをアピールしましょう。
意味の分からない言葉は使わない
IT業界は日夜新技術が開発されているため、同時に新概念を表す言葉がいくつも生まれています。そして、それらの概念が一般世間に浸透するまでには、少し時間が必要です。自分の業界研究の結果や志望する熱意を見せたくて、業界の専門用語を使うこと自体は悪いことではありません。しかし、新卒者はこれから業界へ飛び込む人、まだ一般世間にいる側の人間です。詳しく知らないことを、企業側もそこまで問題視しないでしょう。
むしろ、意味が分からずに使っている方が大問題です。間違った知識を披露することは、企業に対し「業界に対する理解が不適切」「入社後の教育が面倒」「謙虚さに欠け不誠実」と最悪な印象を与えてしまいます。ある程度の知識は必要ですが、志望動機は自分の知識を披露する場ではないので、理解が甘い言葉は避けるようにしましょう。
徹底した業界研究でIT業界を目指す魅力的な志望動機を書こう!
知らない一般人からすると、インターネットもロボットもパソコンも全てがIT業界です。しかし、これから業界へ飛び込む新卒者がその程度の甘い理解では、企業の目に留まる志望動機は書けません。志望動機はエントリーシートや履歴書のなかでも、その良し悪しで合否が決まるほど重要な部分です。業界への理解が漠然としていては、どれだけ熱意があっても採用されないでしょう。
企業が最も知りたいのは、「何故、弊社を選んだのか」です。IT業界だからこそできることを見つけるためには、広い業界を知らなければなりません。そして、自分が生涯を通じてやりたいことを見つけ出しましょう。それが志望動機を書く第一歩です。