企業に対して自身の魅力をアピールするためには、ガクチカと自己PRを分かりやすく伝えることが大切です。しかし、これらの明確な違いが分からず、何を伝えると効果的なのか悩んでしまう学生も多いようです。
本記事では、ガクチカと自己PRがどのように異なるのか、またそれぞれの例文を紹介しています。いずれも企業へのアピールに役立つ内容なので、違いを理解した上で効果的なアプローチをしていきましょう。
目次
ガクチカと自己PRの違いをしっかり押さえてる?
ガクチカとは「学生時代にどんなことに注力していたか」のこと
ガクチカは「学生時代に力を入れてきたこと」を省略している言葉です。
たとえば「部長としての自覚を持ち、部員たちをまとめてきた」「検定試験合格を目指して勉強を続けてきた」などの内容は、ガクチカとして考えられます。
ガクチカは、その学生が物事に対してどのように取り組んできたのかが明確化される内容です。そのため、学生時代に何を努力してきたのかが明確化される内容となっています。
自己PRとは「自分の長所や人柄、アピールポイント」のこと
ガクチカは「学生時代に何を努力してきたのか」という内容だったのに対し、自己RPは自分の長所や人柄など、「内面的なアピールポイント」を伝える必要があります。
たとえば「ポジティブ思考ですぐに気持ちを切り替えられる」「目標に向かって努力をすることが楽しい」などです。
ガクチカと自己PRは、どちらもエントリーシートで尋ねられることが多いため、違いを明確に理解したうえで分かりやすく説明しなくてはなりません。
ガクチカと自己PRを企業が尋ねる理由
ガクチカを訪ねてくる企業の狙い
ガクチカは、学生の仕事に対する取り組み方や、アプローチ方法などが表れるものです。そのため企業は、「自社でどのように活躍できる人材なのか」を見極めるためにガクチカを尋ねます。
学生時代にリーダーシップを発揮していた場合は、職場でも同様に従業員を引っ張っていく存在になれるでしょう。
また、スケジュール管理を徹底しつつ勉強に励んでいた場合は、職場においても計画的に仕事を学びながらスキルアップできると判断されます。
自己PRを訪ねてくる企業の狙い
自己PRは、学生が何を強みとしているのかが表れるものです。そのため企業は、学生の強みと自社の相性を見極めるために自己PRを尋ねます。
魅力的な強みを持っているように見える学生でも、ある企業とは社風との相性が悪く、入社できてもキャリアアップしづらくなるケースは少なくありません。入社後のミスマッチを防ぐという意味でも大切な質問です。
企業は自己PRを尋ねることで、その学生が入社後に強みを活かして輝けるか、自社に貢献してくれるかなどを検討しています。
ガクチカと自己PRを考えるときのポイント
ガクチカの場合
学生時代に取り組んできたこと、目標にしてきたことを考える
部活動や勉強など、学生時代に力を入れて取り組んできたことを考えてみましょう。そのときに何を目標にしていたのかを考えると、よりガクチカが明確になります。
ガクチカはあくまでも、学生時代に努力してきたことをアピールする内容です。そのため、目標が達成できていなくても力を入れて取り組んできたことであれば、ガクチカとしてアピールしても問題ありません。
目的・目標に向かって一生懸命に努力したことを、企業に伝えられるように考えてみましょう。
趣味・アルバイト・ボランティアなど学校外のことでもOK
ガクチカは「学生時代」の話なので、学校外での経験でも問題ありません。たとえば趣味や、アルバイトやボランティア活動、習い事などでも充分にアピールできます。
たとえばアルバイトは、実際に社会に出て働けるため、職場ならではの経験ができます。接客の楽しさや、職場での人間関係構築など、さまざまな経験ができたことをアピールすると効果的です。
学校外のことでも、「どのような姿勢で物事に取り組んでいたのか」は企業に伝わりますので、まずは過去を遡ってみましょう。
自己PRの場合
自分が考える強みがどんな風にその企業で活かせられるかを考える
企業に活かせそうな強みをアピールすると効果的です。企業は自己PRを通して、「学生が強みを発揮し社内で活躍できそうか」を考えます。
そのため、「この学生なら自社で能力を発揮してくれる」「強みを活かして貢献してくれる」という印象を与えられれば、採用されやすくなるでしょう。
また、企業がどのような人材を求めているのかを理解することも大切です。企業理念が「努力」だった場合は、目標達成に向けて一生懸命になれる強みをアピールできると効果的です。
自分の強みとは? 性格面から考える
「そもそも自分の強みが何か分からない」という人は少なくありません。もし自己PRできそうな強みが分からない場合、まずは自分を客観的に観察してみましょう。
たとえば性格面に着目して考えたとき、「真面目」「前向き」などの強みを見つけられます。
また、人をまとめるのが得意な場合は「リーダーシップを発揮できる」、反対に誰かの指示に従うことが得意な場合は「協調性がある」などのアピールが可能です。じっくりと客観的に考えてみると、強みとしてアピールできそうな要素が見えてきます。
ガクチカと自己PRの構成を作る上で大切なのは「エピソード」
ガクチカの場合はどんな過程で注力してきたかのエピソードを
ガクチカはただ力を入れて取り組んできたことを伝えるのではなく、その過程についてのエピソードを踏まえてアピールしましょう。エピソードを加えることで内容に説得力が生まれ、自身がどのように物事へ取り組んできたのかが分かりやすく伝えられます。
エピソードでは、何を目標にしていたのか、また目標を達成するために何を実践したのかを伝えるのがおすすめです。
実践している最中に起こった出来事や、実際に物事に取り組んでどのように感じたのかなどを考え、エピソードを膨らましましょう。
自己PRの場合はその性格面がどんな風に役立ったかのエピソードを
自己PRでは、「自分の性格が周囲にどのような影響を与えるのか」を伝えることで、企業に長所をアピールできます。長所を端的に伝えるだけよりも、具体性のあるエピソードを加えることで、ガクチカと同様に説得力が生まれます。
もし自分の性格面によって、他者から感謝されたり褒められたなどの経験がある場合は、それらもアピールして内容を明確化してください。
どのようなシーンで誰を助けられたのか、どのような影響があったのかなどを考えれば、エピソードの内容がより深いものになります。
ガクチカと自己PRを考える際に注意しておきたいこと
エピソードはなるべく重複させない
ガクチカと自己PRのエピソードを考えるとき、これらが重複しないよう気を付ける必要があります。重複してしまうと、それぞれの内容において差を付けられなくなり、せっかくのアピールチャンスを無駄にしてしまいます。
ガクチカと自己PRの内容が異なれば、企業に対して自分の魅力をさまざまな角度から伝えられるため、好印象につながりやすいものです。
どうしても内容が重複してしまう場合は、もう一度自身を客観的に観察し、自己分析を行いましょう。
ガクチカはSTAR法で構成しよう
<STAR法>
・Situation(状況):Aという物事に取り組んだ
・Target&Talk(目的・課題):それはBが目的・課題だった
・Action(行動):Bを達成するためにCを行った
・Result(結果):Dという結果になった
STAR法は、Situation(状況)、Target&Talk(目的・課題)、Action(行動)、Result(結果)の頭文字で構成されています。ガクチカはこのSTAR法を意識すると、分かりやすい内容にまとまります。
STAR法でガクチカがまとまると、エピソードが伝わりやすくなります。順序立てることで簡潔にガクチカが伝わり、企業に好印象を与えられるでしょう。
自己PRはPREP法で構成しよう
<PREP法>
・Point(結論):私はAだと考える
・Reason(理由):なぜならBだからである
・Example(具体例):たとえばCという事例がある
・Point(結論):だから私はAと考える
PREP法は、Point(結論)、Reason(理由)、Example(具体例)、Point(結論)の頭文字で構成されています。自己PRは上記のように、ガクチカと全く異なる方式でまとめましょう。
このように最初と最後に結論を伝えることで、Aという内容を強調できます。企業により印象強く自己PRの内容が伝わり、自社でその強みを活かせるか検討してもらいやすくなるでしょう。
ガクチカのESテンプレート・例文
部活の場合
私が学生時代に力を入れたことは部活動です。
私は子どものころから音楽が好きで、中でも楽器を演奏することが楽しいと感じていました。部活動では吹奏楽部でフルートを担当し、コンクールで金賞を取ることを目標に部活へ取り組んでいました。
金賞を取るために放課後の自主練習を徹底的に行いました。練習をする際は得意・不得意を明確化するためノートにまとめて、スケジュールを細かく立てながら練習を行いました。また、長期の休みも練習を行い、勉強と部活動の両立を図りました。
結果は銀賞でしたが、計画を立てて物事にチャレンジするスキルを得られました。貴社へ入社後も、目標達成に向けて計画的に取り組みたいと思っています。(300字以内)
吹奏楽部での経験によって「計画を立てて物事にチャレンジするスキル」を得たことがアピールできています。計画的に取り組むスキルは多くの企業で求められることなので、よいアピール方法となるでしょう。
ただ学生時代に力を入れたことを伝えるだけではなく、その結果どのような結果を得て企業に貢献できる状態になったのかが、分かりやすくまとめられています。エピソードも分かりやすく、採用担当者の記憶に残りやすいです。
アルバイトの場合
私が学生時代に力を入れたことは接客販売のアルバイトです。
私は元々コミュニケーションスキルに自信がありませんでした。人と話す際に緊張してしまうことが多いことが悩みだったため、接客販売を通してコミュニケーションスキルを向上させようと考えたのが、アルバイトを始めたきっかけです。
アルバイトではお客様との会話において、緊張せずにリラックスしてコミュニケーションを取ることを意識しました。お客様から話しかけられるのを待つのではなく、自分から積極的に声をかけることも意識して、徐々にコミュニケーションに慣れていきました。また、お客様だけではなく職場の先輩にも質問・相談を積極的に行い、人見知りの克服を目指しました。
その結果、私は初対面の人に対しても、自然にコミュニケーションが取れるようになりました。人との会話に緊張することも無くなり、むしろ今では接客業が楽しいと感じています。貴社に入社後も、接客業の楽しさややりがいなどを忘れず、相手の立場に立った接客ができればと考えています。(450字以内)
接客業はアルバイトの中でも、非常に多い分野です。そんな接客業に取り組んだきっかけや、その結果何を得たのかなどが明確になっています。
接客販売のアルバイトを通してスキル向上を実現できたことだけではなく、接客販売そのものが好きという気持ちもアピールできています。
接客業が楽しいと感じられたこともアピールできていますが、この点についてもエピソードを加えると、より記憶に残るガクチカになるでしょう。
ボランティアの場合
私が学生時代に力を入れたことはボランティアサークルでの活動です。
私は幼いころから自然が大好きだったため、近年問題視されている環境問題に対して深い関心を持っていました。何か自分でも地球環境のためにできることはないかと考えた結果、ボランティアサークルでの活動に行きつきました。
ボランティアサークルではゴミ拾いをしていました。あるとき学校近くにある海のゴミを拾っていた時、それを何かに活用できないかと考え、日用品やアクセサリーなどの材料にすることを思いつきました。集めたゴミで新たな制作物を生み出し、学校祭での販売を行った結果、地元のニュースでも取り組みが取り上げられました。
ボランティアサークルを通して、環境問題について改めて考えさせられたと同時に、問題解決のためにアイデアを考えることの重要性を学びました。貴社に入社後も、ただ仕事に取り組むのではなく、自ら問題解決のためのアイデアを考えたいと思っています。(450字以内)
ボランティアサークルで機械的に活動を続けるのではなく、自ら新しい発想ができたことが強調されています。
このようなアピールは、自主性や柔軟性などを重視している企業に対して、好印象を与えられるでしょう。「指示されたことだけしかできない」「自分から積極的に動けない」というマイナスイメージを与えず、むしろ積極的に行動できるスキルを持っていることを伝えられます。
地元のニュースでも取り上げられたというエピソードも、自分の取り組みによって実績を残せたというアピールになっています。
自己PRのESテンプレート・例文
部活の場合
私の強みは最後まで諦めずに物事へ取り組めることです。
野球部での活動では、試合に負けそうな状況になっても、諦めずに努力していました。冷静に状況を観察し、現状を打破できる方法はないか考えたり、チームで勝つための戦略を練ったりなどしていたため、途中で試合に勝つことを諦めたことはありません。
練習試合で相手チームに追い込まれていたときも、まだ勝てるチャンスがあると考え、戦略を立て直すことを提案しました。また、自分が打席に入った際も、勝つために全力を振り絞った結果、逆転勝ちを果たせました。
このような結果を出せたのは、私の強みである最後まで諦めないという精神が生きた結果だと思います。(300字以内)
部活動での経験から、最後まで粘り強く努力できるという強みが明確に伝わっています。
「まだ勝てるチャンスがあると考え」という感情を伝えることで、負けそうな状況になっても希望を捨てずに努力したという印象を与えられています。
また、ただ「諦めずに頑張る」という精神論だけではなく、その結果試合で勝てたというエピソードも伝えられているので、好印象につながりやすいでしょう。企業での活かし方についても言及できるとより良い自己PRになるでしょう。
アルバイトの場合
私の強みは相手の気持ちに寄り添えることです。
飲食店でのアルバイトでは、お客様が何を求めているのかを考え、行動に移すことを意識していました。お客様が周囲を見渡しているときはすぐに声をかけに行く、空いたお皿やコップなどはすぐに下げるなど、積極的に行動することを心がけました。その結果、お客様から「気が利いていて助かる」「ありがとう」など、お礼を言われる機会が多くありました。
また、お客様からだけではなく、一緒に働くスタッフの気持ちにも寄り添いました。悩んでいる後輩を見つけたら、積極的に相談に乗ったり、仕事でフォローしたりしました。その結果職場で表彰を受けたり、お客様からお喜びの声がメールで寄せられたこともあります。
どのような仕事をするにしても、相手の気持ちに寄り添うことは大切だと考えています。自分の強みを活かして、貴社に貢献したいです。(400字以内)
お客様だけではなく、スタッフから評価された経験も伝えられており、エピソードが分かりやすいです。相手の気持ちに寄り添うために、具体的に何に取り組んだのかも明確になっています。
また、表彰を受けたことや、お客さんからメールがきたことなど、自分の強みによって結果を出せたこともアピールできています。
相手の気持ちに寄り添うために何を努力したのか、より深く掘り下げられると好印象につながるでしょう。
ボランティアの場合
私の強みは、分かりやすく物事を伝えられることです。
私はボランティア活動で、学校支援に取り組んでいました。そこでは小学生に勉強を教えていましたが、分かりやすいと言われることが多かったと感じています。
小学生はまだ幼いため、難しい言葉や言い回しなどを理解できません。そのため、最初は勉強を教えていても、中々理解してもらえず苦労していました。その結果自分なりに教え方を考え、物事をシンプルな言葉で簡潔に伝えることにしました。
たとえば小学生でも理解できるように、専門用語を使用しないように心掛けました。また、ときには絵や動画なども使用して、視覚的に学べるよう工夫していました。
すると、教えていた小学生が、テストで満点を取れるようになりました。小学生が苦手を克服できて喜んでいる様子を見て、とても嬉しかったです。今後も相手の立場に立って、分かりやすい説明を心がけたいと思います。(400字以内)
小学生が相手だと、専門用語や遠回しな表現などが伝わりません。この自己PRのエピソードから、この学生が分かりやすい簡潔な説明が得意であることが伝わってきます。
分かりやすい説明のために何をしたのかが明確であり、小学生が満点を取ったという実績につながっています。
「分かりやすく伝える」というスキルは、指導者に欠かせないものです。企業によっては、今後指導者として輝ける人材だと認識してくれるかもしれません。
ガクチカと自己PRを明確化してアピールしよう
ガクチカと自己PRに違いを持たせることで、企業により多くの魅力をアピールできるようになります。また、どちらにもエピソードを加えると、より内容が印象強く残ります。どちらも似たり寄ったりな内容にならないよう、注意しながら構成を考えましょう。
いずれも自分を客観的に分析し、内容を分かりやすくまとめることが大切です。学生時代のことと現在のことを踏まえて、何か企業にとって好印象につながる要素はないか考えてみましょう。