建築物や道路などをつくり上げる建設業は、国民の生活に不可欠の事業です。ものづくりが得意な人は、建設業界で手腕を活かし、人の役に立ちたいと考えるかもしれません。

社会的役割が大きな事業だからこそ、志望する学生にも明確な目標と心構えが問われます。

建設業界の志望動機を書くときは、業界研究を徹底して行い、企業のニーズを掴むことが重要です。ニーズを知らずに書き始めても、心に響く志望動機はつくれません。

また建設業界は例年人気が高く、倍率も高いことが考えられるため、他の就活生との差別化を意識した回答を作成することも大事なポイントです。

この記事では、建設業界について解説し、企業が求める人物像を明らかにします。その上で志望動機の効果的な書き方を、職種ごとの例文を用いて説明します。

ものづくりへの熱い思いが、しっかりと伝わる志望動機を仕上げましょう。

建設業界とは?

さまざまな建築物の建設に携わる職業

建設業はさまざまな建築物の建設に携わる職業です。住宅やビルはもちろん、道路やダムなど公共物をつくる会社もあります。

会社によりつくるものはさまざまでも、ものづくりを通した社会貢献ができる点は変わりません。理想の住まいをつくりお客様に喜ばれるのも、インフラを整備し社会を下支えできるのも、建設業ならではのやりがいです。

建設業はしばしば「建築業」と混同されます。建築業は、建設業の業態の一つです。

「建築業」が建物をつくる事業を指すのに対し、「建設業」は土地の造成や道路の新設、整備などの土木分野を含みます。建設業は、より広範な業態を指すものと考えてください。

就職先によって建築と土木に大別される

建設業は、大きく「建築」と「土木」にわかれます。

建築が専門の会社は、住宅ビル学校商業施設などの建物をつくります。人々の生活を直接支え、顧客から喜ばれるやりがいのある仕事です。

一方、土木が専門の会社は、道路トンネルダムなどの建設や整備、維持を行います。主に公共事業に携わり、インフラを縁の下で支える仕事です。地図に残る規模の大きな仕事ができます。

建築・土木とも、会社により携わる業務は異なります。以下の表を参考にしてください。

専門分野業務内容
ゼネコン土木・建築工事一式の請負と管理業務
デベロッパー土木・建築大規模なマンションやビルの開発
ハウスメーカー建築住宅の建築やリフォーム、賃貸
工務店建築住宅工事

目標を明確に持ち、事業内容を研究した上で会社を選びましょう。

必要とされている資格やスキル

  • 一・二級建築士
  • インテリアコーディネーター
  • カラーコーディネーター
  • 宅地建物取引士(宅建)
  • ファイナンシャルプランナー(FP)
  • 住宅ローンアドバイザー

この他にも様々な資格がありますが、自分が希望している業種に合わせた資格の取得を目指しましょう。

働くうえで専門知識が必要となる建築業界ですが、文系出身や未経験であったとしても新卒入社後に研修が用意されている場合が多いため、心配しすぎる必要はありません。

ただし、建築関係の資格を持っていることは即戦力として働けることのアピールになります。建築業界への熱意も同時に伝えることができるでしょう。また、資格を持っていると入社後に昇給がある場合があり、就職までの間に取得しておくのも一つの方法です。

「まだ取得できていないけれど勉強中」という状態の場合は、履歴書の資格欄に「勉強中」と記載することも可能です。

建築業界の職種とは?文系職もあり

志望動機を書く前に、あなた自身の将来像を明確にする必要があります。ひとえに建設業界と言っても、職種はさまざまです。やる気さえあれば、文系から挑戦できる職種もあります。

図面を作る「設計職」

設計職は、建築物の図面をつくる仕事です。ただし、建築物すべての設計を一人で行うわけではありません。意匠設計、構造設計、設備設計の各専門家が協力しながら建築を進めます。

意匠設計は建築物の外観や内装を設計する仕事です。施主の要望を聞き、間取りやデザインを決定します。高いコミュニケーション能力と、要望を形にする豊富な経験が必要です。一級または二級の建築士免許が必須の資格職です。

構造設計は、建築物の土台や骨組みをデザインする仕事です。意匠設計者がデザインした図面を元に、柱や梁などの構造計画を立てます。建築基準法に適合するよう、数学、物理学など幅広い知識を活用します。一級建築士または構造設計一級建築士の資格取得が推奨されます。

電気や給排水、空調などの設備を設計するのが設備設計です。施主と相談しながら配置を決めていきます。設備設計を行わなければ、家を利用できる状態になりません。家に生命を与える仕事だと言えます。建築士の資格は不要です。

現場監督などの「施工管理職」

施工管理は工事の現場に立ち、全体の管理を行う仕事です。現場の安全管理、工程管理だけでなく、品質管理や原価管理も行います。現場の統率をとる現場監督とは異なり、オフィスワークの割合も多いのが特徴です。

資格は不要ですが、実務経験を積めば施工管理技士の受験資格を得られます。営業所の専任技術者になるなど、さらなるスキルアップが期待できるでしょう。

現場を統率する立場上、強いリーダーシップ柔軟に物事を考える力が求められます。

現場で働く「技術職」

実際に建設現場で作業を行うのが技術職です。大工やとび、電気、塗装などの専門分野を活かし仕事に従事します。

業務によっては、一部資格が必要なケースがあります。電気工事や重機の運転をする場合などです。希望する仕事に必要な資格を、あらかじめ確認しておきましょう。

現場の仕事は過酷です。ものづくりへの情熱があっても、体力がなければ務まらないでしょう。つらい環境でも仕事と向き合う粘り強さや、短時間で効率的に仕上げる集中力が必要です。

新たな技術を創出する「技術開発職」

建築や土木に関わる仕事の生産性を上げるため、新しい技術を提案し、開発するのが技術開発職です。現場の計測をドローンで行う測量ツールや、危険が伴う作業を代行するロボットの制作などが例に挙げられます。

技術開発職に就くには、IT技術やAIを積極的に活用する高い能力が必要です。また現場の課題を的確に捉える観察力、問題解決に向けた論理的思考力、洞察した内容を新たな技術に変える具体化能力も問われるでしょう。

現場と顧客をつなぐ「営業職」

営業職は顧客から受注を取る仕事です。営業が仕事を獲得するからこそ、会社の業務は成立します。継続的な仕事を得るための生命線です。

顧客にとっては会社の窓口にもなります。竣工後の不具合があれば、最初に対応するのは営業社員です。顧客にとって営業社員は会社の顔であり、対応如何で会社のイメージが形成されます。

就職には、高いコミュニケーション能力忍耐力が必要です。また業界への深い知識も身に付けなければなりません。建設について語れない人が、建設の仕事を獲得するのは困難だからです。

会社運営を支える「事務職」 

建設業界にも事務職があります。総務、経理、人事など部署に分かれ、専門分野に特化した仕事を行います。

中でも「現場事務」は建設業界ならではの職種です。現場の作業が円滑に進むよう、同行して事務作業を引き受けます。契約書の作成や請求書の発行、お弁当の注文など業務は多岐にわたります。高いコミュニケーション能力があれば、現場で重宝される存在になるでしょう。

経理を志望する人は、建築業経理士の資格取得もおすすめです。建設業では受注から完成までの期間が長く、通常の経理作業とは異なる知識を要求されます。資格があれば、特殊性に対応できる証明になるでしょう。

建設業界の現状と展望

建設業界への就職を希望する人へ、業界の現状展望を説明します。

いざESを書こうとすると、「業界に将来性があるか」「キャリアを形成できるか」など不安を持つ人も少なくないでしょう。

結論から言えば、建設業界はこの先もなくなることはありません。多くの会社が好調を維持できると考えられます。客観的なデータをもとに、建設業界を分析してみましょう。

若手の人手不足が深刻化している

建設業界では、若手の人手不足が深刻です。国土交通省が公開する「最近の建設業を巡る状況について」に、年齢階層別の建設技能者数(令和3年時点)が掲載されています。それによると、60歳以上の技能者が全体の約4分の1を占めるのに対し、29歳以下はおよそ12%しかいません。若い世代を確保し、早期育成することが課題です。

したがって、新卒の学生は業界全体で重宝される傾向にあります。国土交通省によると、平成30年8月の有効求人倍率は、「建設・採掘の職業」で4.85倍です。これは全産業の平均値1.46倍を大きく上回っており、売り手市場の動向が垣間見えます。

業界全体の業績推移は堅調

業界全体の業績は、堅調と言えます。国土交通省の資料によると、建設投資額は平成23年度までは落ち込んだものの、その後増加に転じ、現在までほぼ毎年増加を続けています。令和3年度末は約58.4兆円で、建設バブル期(平成4年がピーク)のおよそ70%の数字です。

売上高営業利益率(も企業規模を問わず伸び続けています。大企業に至っては営業利益率が6%を超える状態です。主要産業全体の売上高営業利益率は3.2%です。建設業界の好調さが分かるでしょう。

市街地整備(再開発)の実績が増え続けている

市街地を再開発するには、開発に向け土地を区画整備しなければなりません。国土交通省によると、土地の区画整備事業は、施工面積、地区数ともに年々増え続けています。現在整備が終わっているのは、全国にある市街地の約3割です。この先も、整備事業が続くと予想されます。

既存建造物の維持管理はほぼ横ばいで好調

道路やダム、砂防、水道、港湾など既存建造物の維持管理も、安定した需要があります。国土交通省によれば、2033年頃まで維持管理・更新費用が緩やかに上昇し、その後は横ばいで推移する予想です。

道路や水道などの社会インフラは、生活になくてはならないものです。維持管理に予算を割くのは、自然なことだと言えるでしょう。

海外需要が増加している

海外の建設需要も好調の要因です。国土交通省によると、2010年以降アジア諸国やアメリカへの進出で大きく受注実績が伸びています。伸び幅は年平均12%程度と大きく、このまま成長を続ければ海外取引に事業の軸を移す企業も増えるかもしれません。

女性の活躍を推進

男性社会のイメージがある建築業界ですが、最近は施行管理職など体力を使う職種でも女性の採用が多くなっています。建築業界で需要が無くなることはなく、人手不足な業界でもあるため、性別によって選考で不利になることはないでしょう。

また、業界全体でも男女関係なく活躍できる体制を整える傾向にあり、これからも労働環境の改革が進んでいくと考えられます。

建設業界で求められる人物像

建設業界で求められる要素

計画性

建築業界の仕事は多くの人や企業が関わり数か月、数年をかけて一つのプロジェクトが完成することも多く、長期間にわたる仕事でも、計画性をもって最後までやりきらなければなりません。

また、設計や技術に関わる職種では一つのミスが大きな事故につながる可能性もあり、先を見据えて仕事をする姿勢が求められます。さらに、高価な買い物をする顧客のサポートをする営業職では、購入計画を一緒に考えることも仕事の一つです。計画性のある支払いを提案するためにも必要な力となっています。

ものづくりへの情熱

建設業に携わる人物としてふさわしいのは、ものづくりへの情熱がある人です。建築物の多くは長期間利用されます。個人宅は30年程度、道路やダムなどの社会インフラは100年単位で残る可能性があります。

長期間利用されるからこそ、情熱を持ち真摯に仕事に当たらなければなりません。

「お客様の一生の住処をつくりあげる」「社会のインフラを自分たちの手で整備する」といった自覚が必須です。困難があっても投げ出さず、顧客や社会のために完遂する意志が問われます。

協調性

建設業の多くはプロジェクトで動きます。大規模な土木工事だと、1000人単位の人と働くことも珍しくありません。協調性がある人ほど働きやすいでしょう。

プロジェクトが始まると、設計者が図面を書き、施工管理者が流れを取り決め、技術者がそれぞれの専門分野で力を出し合います。最初から最後まで、作業は協調の連続です。

働く人に求められるのは、自分の役割を自覚し、周りと協調しながら業務を完遂することです。ものづくりへの想いが強くても、自我が強く協調できない人は向かないので、注意が必要です。

責任感

建設業の社会的役割をしっかりと理解し、業務に責任を持つことも重要です。

住宅やマンションは、人が住居や仕事場として日常的に使用する場です。建築は生活の舞台をつくる作業だと自覚しなければなりません。特に住宅の発注者は、理想の生活を夢見て一生に一度の大きな買い物をします。顧客の強い想いを受け止め、誠実に仕事に臨む必要があります。

土木に携わる人には、社会のインフラを支える大きな責任感も問われます。土木建築物は、長期にわたり不特定多数の人が利用します。不具合があるもの、安全性に問題があるものをつくるわけにはいきません。

人の想いと社会のニーズを正面から受け止め、与えられた業務を誠実にこなせる人を企業は求めているでしょう。

体力

建築業界は顧客相手の商売であること、長期間のプロジェクトで先が予想しにくいなどの理由から激務になりやすく、体力がある人は向いていると言えるでしょう。世間では働き方改革が進んでいる一方、伝統的な企業文化が残っている業界です。

また、営業職は成績が数字として見えやすい分競争なども起こりやすく、それに対するストレス耐性も求められます。

しかし、体力やストレス耐性があれば必ず活躍できるというわけではなく、あくまで一つの要素にすぎません。知識力やコミュニケーション能力など社会人としての基本は欠かさないようにしましょう。

志望動機を論理的に仕上げる4ステップ

建設業界の志望動機の書き方
  1. 簡潔な志望動機
  2. 志望動機のきっかけ
  3. 応募企業を志望する理由
  4. 入社後の決意

➀簡潔な志望動機

まずは「なぜ建築業界を志望したのか」を端的に伝えます。結論ファーストで書くのは、相手に端的に物事を伝えるコツです。採用担当者の印象に残すために、1文で簡潔にまとめます。

志望動機の目的としては、「なぜこの企業を受けようと思ったのか」を聞くことであり、業界全体の志望動機はこの基本となります。矛盾が無いようにしっかりと内容を練りましょう。

➁志望動機のきっかけ

1文で伝えた業界への志望動機には、必ずきっかけがあるはずです。こちらも2文ほどで簡潔にまとめます。

エピソードを具体的に書くと長くなってしまいがちですが、エピソード自体よりも、そこから何を感じたのか、どのような行動を起こしたのかをメインに伝えましょう。

志望動機に説得力を持たせるために、「建築業界にしか当てはまらない特徴」を踏まえたうえで書くことがポイントです。業界全体への熱意がより伝わるでしょう。

➂応募企業を志望する理由

採用担当者が最も知りたいのは、「あなたはなぜ弊社を志望するのか」です。

この流れで書くのは、自然な論理展開にするためです。建設業界に興味を持つきっかけを説明した上で、夢の実現にその企業が最適なことを伝えれば、不自然さがありません。

ただし、該当企業を選んだ理由を明確に書くのは、簡単ではありません。採用担当者は、常に「他社でも良いのでは?」と疑いの目を向けています。あらかじめ企業研究を念入りに行い、あなたの夢と会社の方向性が重なることを確認しましょう。

➃入社後の決意

最後は入社後の決意で締めてください。「入社後に何をどう頑張るのか」をできる限り具体化します。また、「頑張りたい」だけだと自分本位な印象を与えるため、「どのように会社に貢献したいのか」を強調しましょう。

決意は、文章が長くなりすぎると自己PRのようになるため、できるだけ簡潔にまとめます。ただし、尻すぼみになると採用担当者に想いが伝わりません。全体のバランスに留意しましょう。

建設業界の志望動機を分かりやすく書くポイント

建設業界未経験だからこそ企業研究が必須

志望動機を書き始める前に、必ず企業研究を行います。会社の事業内容はもちろん、強みや求められる人物像を明確にしましょう。

まずはあなたのやりたいことが、その会社で実現できるか確認します。建設業界は建築から土木まで幅広く、専門分野は会社ごとに異なります。あなたの夢が実現できなければ、志望動機の書きようがありません。

企業の強みも研究しましょう。ホームページでも最低限の知識は得られますが、業界紙や書籍を利用するとより確実です。志望動機には「なぜその会社を選んだか」を書かなければなりません。強みを理解することで、その会社を選ぶ合理的な理由をつくれます。

企業研究を進めるうち、求められる人物像も自然と見えてくるでしょう。ニーズに反する姿勢では、実力があっても内定は取れません。会社で仕事をしたいなら、姿勢を合わせる努力が必要です。

建設業界に興味を持ったきっかけを端的に書く

志望動機には、建設業界に興味を持つきっかけを端的に書きましょう。強いきっかけがあれば、業界を目指す姿勢に説得力が増します。きっかけが曖昧だと「何となく思いつきで志望しているだけでは?」「建設業界の仕事についてこられるの?」と疑問を持たれかねません。

建設業界は社会的意義が大きな仕事です。仕事に向かう強い意志を示すためにも、夢を抱いたきっかけをしっかりと書きましょう。

該当企業を選んだ理由を伝える

建設業には社員同士の協調性が欠かせません。入社した会社に誇りを持ち、お互いに一つの方向を向かなければ、プロジェクトを完遂できないからです。あなたにとって、その会社が唯一無二なことをうまく表現しましょう。

ポイントは、該当企業の強みを夢の実現をつなぎ合わせることです。

たとえばお寺の建て替えや修繕を強みに持つ建築事務所は、伝統を現代に活かす設計を志す人や、技術の継承に興味がある人の夢を実現しやすいでしょう。会社の強みが、夢を実現するのに必要な力と合致するからです。

企業の強みあなたの夢を見比べ、このように合致するポイントを探してください。うまくポイントを見つけ出せば、入社への強い想いがある志望動機をつくれます。

会社に貢献できる強みを考える

志望動機は夢や希望ばかりを語りがちです。しかし、入社後にそれを実現する手立てを持たなければ、説得力がありません。あなたが会社に貢献できる強みをしっかり伝えることが大切です。

強みとなるのは、以下の事柄です。直接業務に関係しなくても構いません。

<業務に関連する強み>

  • 建築・土木について大学で学んだ専門知識
  • 建築・土木に関係する資格
  • 建築・土木関連でのアルバイト経験

 

<業務に直接関係しない強み>

  • 学校生活やアルバイトなどで得た精神的な成長(協調性の獲得、集中力の向上、課題解決能力など)

入社後の決意を伝えるときに、これらの強みのいずれかを前提に書くと良いでしょう。

大学で学んだ専門知識を前提にするなら、「大学では都市計画について学び、基礎的な知識を習得しました。貴社設計部でニュータウンの開発に携わることで、修得した知識を実践で活かしたいです」と結びます。

会社に貢献できる素養があり、入社後は能力をさらに伸ばす意志を伝えられます。

入社後につくりたいもの、成し遂げたいことを明確にする

入社後の決意を表明するには、つくりたいもの、成し遂げたいことを明確にしましょう。決意には具体性が必要です。

「入社後は、施工管理者として頑張りたいです」と書くだけでは、どのような場所でどう頑張るつもりなのか伝わりません。「入社後は貴社が行っている〇〇地区の再開発に携わり、大型商業ビルの施工管理者として従事したいです」と書けば、具体的な目標を持った上で入社を希望していると分かります。

目標は曖昧にせず、企業研究をした上で、できる限り具体化するよう心がけましょう。

【職種別】建設業界の志望動機を伝える例文

職種ごとに、志望動機の例文を掲載します。字数は一般的に400字以内と言われています。350〜400字に収まるよう、工夫して記述すると良いでしょう。

設計職

例文

私は雪に強い家を設計したいと思い、貴社を志望しました。特に無落雪住宅に強い興味があり、設計技術を身につけたいです。

私の故郷では、冬になると屋根の雪下ろしが必要です。地域の高齢化が進み、雪下ろしができず苦労している家を間近で見てきました。高齢者が安心して暮らすには、家の設計を抜本的に変えなければなりません。設計職に就き、この問題を解決したいと考えるようになりました。

貴社は東北地方での無落雪住宅の施工実績が豊富です。竣工した家のほとんどで、雪下ろしの必要がなくなった事実に驚かされました。私の故郷・新潟県にも事業を拡大することを知り、入社への強い希望を持ちました。

私は大学在学中に二級建築士の資格を取得しています。身につけた知識を実践で活用できるよう、設計に真摯に取り組みます。特に無落雪住宅の設計ノウハウを貪欲に学び、新潟県内の事業に携われるよう、頑張りたいです。(400字以内)

志望動機を一文で表した上で、志望するきっかけへと話を具体化させます。なぜその会社を選んだか理由を明確にし、入社後の決意へと移ります。論理的な文章構成により、仕事への熱い想いが伝わってきます。

中でも「なぜその会社を選んだか」の理由を明確に示している点が高く評価されます。施工実績や竣工後の効果も研究し、強みをしっかり認識した上で会社を選んだと分かります。事業拡大予定地が故郷であるというパーソナルな理由もプラスされ、入社への強い意志が感じられる良文です。

施工管理職

例文

私は〇〇町の再開発事業に携わりたいと思い、貴社を志望しました。施工管理者として、活気ある街づくりに取り組みたいです。

〇〇町は、私が高校時代を過ごした場所です。活気のなくなる駅前通りを見て、「何とかしたい」と常々感じていました。再開発で街の雰囲気が明るくなったことをきっかけに、建築の力を思い知らされます。私も建設業界に入り、プロジェクト全体を俯瞰できる施工管理者を目指したいと思うに至りました。

〇〇町の再開発事業者が貴社であることを知り、貴社に憧れを抱きました。これから始まる西口の再開発に参加させていただきたく、貴社を志望しました。

私はこれまでラグビー部で仲間と協調しながら頑張ってきました。就職後は高い協調性を活かし、再開発プロジェクトの施工管理者として頑張りたいです。そして〇〇町の魅力を多くの人に伝えられるようより良い街作りを目指します。(400字以内)

適切な流れで文章が書かれています。実際に建築の成果をその目で確かめ、仕事ぶりに感銘を受けて志望しており、該当企業を選んだ理由も強く伝わります。入社後の具体的な目標も明記され、好感が持てます。

施工管理は全体の管理を行う立場のため、具体的に「何をどうする」という展望を書きづらい面があります。記述が難しい場合は、プロジェクト全体の目標を書くと良いでしょう。

この文章でも「〇〇町をより良い街にする」という、プロジェクトの目標を挙げています。会社が向く方向に合わせ、自分も頑張る意志を表明できているため、好感を持ち受け止めてもらえるでしょう。

技術職

例文

技術者として古いトンネルの保守管理に携わりたいと思い、貴社を志望しました。

私には廃隧道を探す趣味があります。廃隧道は明治期に作られたものが多く、建設の苦労や道路への想いが感じられます。趣味が講じ、古いトンネルを修繕したいと考えるようになりました。

それからは現存する古いトンネルも探しています。保守を手掛ける会社を調べるためです。貴社のことは、大正生まれの〇〇トンネルで知りました。石積みの坑口が美しく、伝統を守る仕事ぶりに感動しました。私も貴社の一員となり、トンネルの修繕工事に参加することを夢見ています。

廃道探索を続けたことで、体力には自信があります。またトンネルへの情熱は誰にも負けません。貴社に入社できた際は、先輩のもとで一つひとつ経験を積み重ね、トンネルの修繕ならどんなものにも対応できる技術者を目指します。(400字以内)

ピンポイントにやりたいことを示せている例文です。トンネルへの知識や愛情が感じられ、採用担当者も志望動機に納得せざるを得ません。心にグッとくるトンネルを探し出し、会社を志望しているため、該当企業を選ぶ理由も明確です。

技術職は体力や精神力が必要なきつい仕事です。生半可な志望理由では、続かないと判断されます。この文章のように強い情熱をかけるものがあれば、志望動機に説得力があります。多少きつくても、目標貫徹のために頑張れると判断されるでしょう。

技術開発職

例文

私は危険な建設現場で作業を代行するロボットを開発するため、貴社を志望しました。

幼い頃からロボットが好きで、大学でもロボット開発を専攻しました。原子力発電所の廃炉作業にロボットが利用されていることを知り、危険な場所でこそ技術を活かせると感じました。土木や建築の現場で人の危険を減らすため、私も開発者になりたいと考えるようになりました。

企業を調べる中で知ったのが、貴社の高所作業ロボットです。人間は操縦だけを行い、橋梁建設をロボットが代行する様子に、大きな感動を覚えました。貴社の一員となり、建設の安全を支えるロボットをつくりたいと強く思うようになりました。

私にはロボットコンテストで準優勝を果たした過去があります。基礎的な技術と、困難の克服には自信があります。貴社に入ったら知識を貪欲に吸収し、一人前の開発者となれるよう努力します。そしていつかは、建設業界を支えるロボットをつくりたいです。

(400字以内)

技術開発職の難しさは、企業のニーズとの合致です。あなたがどんなに素晴らしい技術を持っていても、会社が開発したい技術と方向性が合致しなければ、採用には至りません。企業研究の中で、会社が得意とする技術、挑戦中の技術を見抜き、あなたが持つスキルや、今後伸ばしたい方向性と合うことを確かめましょう。

この文章では、「危険を減らすロボットをつくりたい」という希望が先にあり、それに合致する会社を探し出した形です。このようにうまく方向性が合う会社を見つけられれば、内定が出る確率は上がります。

会社の技術に感銘を受けたことを伝え、技術者として頑張る意志を伝える流れも、企業から喜ばれます。ただし「憧れだけで、開発への適性や知識がない」と思われると、評価が下がります。この文章のように、過去の受賞歴資格などアピールになるものをしっかりと示すことが重要です。

営業職

例文

私はお客様に住宅の建築を提案する営業職に就きたく、貴社を志望しました。

幼い頃からおしゃれな家が好きで、「自分だけのオリジナリティのある家を建てたい」と思っていました。大人になり、その夢は「多くの人にオリジナリティのある家を提供したい」との想いに変化しました。

お客様にとって、家は一生に一度の大きな買い物です。ライフスタイルに寄り添った提案をしなければなりません。地元に根ざし、お客様との距離が近い貴社なら、それを実現できると思いました。特に貴社が行うアフターケアは、お客様との信頼関係を構築する上で素晴らしい試みだと感動しています。

ハウスメーカーの営業は、簡単な仕事でないことを理解しています。私は長年マラソンで心身を鍛えてきました。少しの事にはめげず、絶対に目標を成し遂げるマインドで仕事に臨みます。そして貴社の新しい顔となり、地域のお客様に寄り添いたいです。

(400字以内)

建設業の社会的役割を理解し、自分が仕事で行うべきことを認識した上で志望していることが読み取れます。高い志に採用担当者も心を動かされるでしょう。営業を仕事に選んだ理由も明快で納得できます。

建築物を売るのは簡単なことではありません。一生の買い物で最も高額だからです。要求通りに仕上げることはもちろん、品質の良さ、サービス精神などさまざまなことを求められます。強い精神力がなければ務まりません。

この文章のように精神力の強さをアピールすると、企業に安心感を与えられるでしょう。

事務職

例文

私は事務員として〇〇ダムの建設を支えたいと思い、貴社を志望しました。

私は〇〇ダムの建設予定地に近い、〇〇市の出身です。〇〇市はこれまで幾度となく水害にあい、私の家も被害を受けてきました。ダム建設は地元の悲願です。私も自分にできることで〇〇ダムの建設に参加したいと思い、貴社の経理職に応募することにしました。

貴社が手がける事業の多くは、社会インフラの整備です。社会を支える一員として仕事ができることに、大きな魅力を感じます。特に経理は会社を支える縁の下の力持ちです。やりがいもひとしおだと考えます。

就職に向け、先日建築業経理士2級の資格を取得しました。簿記の知識に加え、建設業界に対応する専門的な知識を得られたと自負しています。就職後は資格取得で学んだ知識を実践し、実務で使える力に変えていきます。公共事業に携わる自覚を持ち、注意力と集中力を高め、ミスがないよう仕事にあたりたいです。

(400字以内)

事務職はものづくりと最も離れた職種です。だからこそ、建設業界を就職先に定め、該当企業を受ける理由を明確にしなければなりません。この文章のように、誰もが納得できる理由が必要です。

建設業界への理解を深め社会的意義に思いを巡らせている点も評価できます。建設への熱い想いが伝わります。他の職種の社員と同じ方向を向くことができるでしょう。

さらに就職に向け資格取得に動いた努力も、ポイントが高い点です。向上心を持ち、継続的に努力できることが伝わります。

熱意が伝わる志望動機で建設業界での内定を引き寄せよう!

建設業界は、公的な仕事も多く安定しているイメージがあります。景気に左右される面があるものの、業界は堅調を保ち、この先も好調が期待できます。若者の不足から、求人も売り手市場です。

しかし、簡単に就職できるわけではないことを念頭に置かなければなりません。建設業は社会的意義が大きな仕事だからです。人の生活やインフラをつくるだけに、求められる人物像は限定されます。ものづくりへの情熱を持ち、仕事に誠実で、社会的役割を意識できる人です。それ以外の人は内定を取りづらいでしょう。

志望動機を書くときは、あなたの想いを端的に示せるよう、企業研究をしっかり行いましょう。建設業界を志す納得できる理由と、入社後の具体的な目標を示せれば、採用担当者の心を動かす志望動機が仕上がります。

内定を引き寄せ、建設業界であなたの夢を実現してください。

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