エントリーシート(以下、ES)に書く、自己紹介と自己PRの内容の違いをしっかり理解できていますか?
自己紹介と自己PRには明確な違いがあります。この違いを理解せずに書いてしまうと、企業側が求めていた回答と異なる内容になってしまったり、自分の強みが全く伝わらない内容になってしまいます。
この記事では、自己紹介と自己PRの違いをわかりやすく説明します。記述のポイントや上手な書き方、注意点などもふまえ、自己紹介・自己PRそれぞれに、豊富な例文も記載しています。ポイントを押さえ、企業にしっかり伝わるESを仕上げましょう。
ESにおける自己紹介と自己PRの違い
ESの自己紹介は、あなたの基本情報を企業に端的に伝えるものです。普段のあなたについてしっかり記述します。
一方、自己PRは、あなたの強みが入社後の活躍につながることを示すものです。採用のメリットを分かりやすく伝えなければなりません。
採用担当者は、ESで「知りたいことがきちんと書けているか」を確認します。両者を混同していると、知りたい情報を得られず、良い評価を得ることができません。違いを理解した上でESを作成していきましょう。
自己紹介では基本情報を簡潔に伝える
自己紹介は、志望企業への挨拶です。あなたの基本情報を簡潔に伝えます。長々と書く必要はありません。素性と意気込みを示せれば十分です。
記述する内容は以下のとおりです。
- 大学、学部、学科
- 氏名
- 大学での研究内容
- これまでの人生で注力したこと(学業での成果、部活動やサークル、アルバイト、ボランティア活動、趣味や特技、夢への取り組みなど)
- 仕事への意気込み
学生の本分は勉強である以上、③は必須です。④はあなたの個性を表すのに最適な内容を選びましょう。もちろん、あなたを紹介するのに欠かせない内容(例:留学や一人旅の経験など)があれば、テーマに据えても構いません。
大切なのは、簡潔に伝えることです。一般的には300字程度で書く場合が多いようです。強みや能力への言及は、自己PRやガクチカで詳しく説明します。あくまでも最初の挨拶であることを意識しましょう。
自己紹介を通して、企業は「あなたが何を経験してきたか」「どのような人柄か」を大まかに把握します。あなたの最初のイメージができ上がります。
自己PRではスキルや強みを企業にアピールする
自己PRはあなたが持つスキルや強みを、的確に企業に伝える項目です。能力が仕事につながり、採用のメリットがあることをアピールします。
主な記述内容は以下のとおりです。
- スキルや強みの具体的内容
- スキルや強みを獲得したきっかけ
- スキルや強みを発揮したエピソード
- 就職後の仕事に活かす方法
自己PRは掘り下げて書く必要があるものの、欄におさまらないほどの文章量は不要です。長すぎると要点が伝わりません。300〜400字程度を目安に、できるだけ簡潔に記述します。きっかけやエピソードが冗長にならないよう、注意しましょう。
自己PRの内容から、企業は仕事への適性や、「社風に合うか」を判断します。採用にメリットがあると判断されれば、内定を引き寄せられるでしょう。
表で確認!自己紹介と自己PRの違い
<自己紹介と自己PRの違い>
| 自己紹介 | 自己PR |
ESでの役割 | 基本情報の伝達 | スキルや強みの伝達 |
企業が読み取ること | ・応募者の基本情報・人柄(大まかに) | ・仕事への適性・社風への適合 |
記述で留意すること | ・簡潔に書く・他項目との重複を避ける | ・スキルや強みは掘り下げる・きっかけやエピソードは簡潔に |
文字数目安 | 200〜300字 | 300〜400字 |
面接との違い | ・印象を決定づけるものではない・簡潔にまとめる | 要点が伝わるよう、論理的かつ簡潔に |
自己紹介では基本情報だけを伝え、自己PRで仕事につながる能力をアピールします。
ESには、ガクチカや趣味・特技などさまざまな記載欄があります。内容の重複に注意しながら、各項目でしっかり自己アピールするよう工夫しましょう。
なお、自己紹介・自己PRとも、面接の下書きのようにならないよう注意が必要です。ESと面接は同じ内容に合わせる必要があるものの、表現方法は大きく異なります。文章では内容が端的に伝わるよう、簡潔で論理的な構成を心がけなければなりません。
【自己紹介】ESに自己紹介を簡潔に書くポイント
基本情報と人柄を伝える
ESにおける自己紹介の役割は、企業にあなたの基本情報と人柄を伝えることです。
人柄と言っても、「私は〇〇な性格です」と直接記述するわけではありません。基本情報を読み進めるうち、自然と大まかな人柄が伝わります。
たとえば部活の主将として部をまとめ上げた情報からは、リーダーシップや面倒見の良さが想像できます。ボランティアに長年携わった情報なら、決めたことを継続する真面目さや、他人の困難に手を差し伸べる優しさが想像できるでしょう。
ポイントは、基本情報にあなたの「人となり」を示す事柄を入れることです。部活動でもボランティアでも、内容は問いません。あなたに良い印象を抱いてもらえるよう、取り上げる内容を選択します。
ES全体を見て自己アピールをどこまで含ませるか決める
自己アピールは「自己PR欄」で行います。自己紹介での自分の強みなどをアピールすることは不要です。
ただし、ESに自己PR欄がない場合は、自己紹介の中でアピールもおこないます。
たとえば部活で主将を務めた経験があるなら、次のように書くとよいでしょう。
例文
「私は〇〇部で主将を務め、チームを関東大会優勝に導きました。先輩後輩の隔てなく切磋琢磨したおかげだと思います。誰にでも如才なく接し、集団をまとめ上げる力には自信があります」
冗長にならないよう、簡潔にアピール内容を記述します。自己紹介は基本情報の伝達が主軸です。長々と書きすぎないように注意しましょう。
入社への意気込みと選考への挨拶で結ぶ
自己紹介の最後は、入社への意気込みと選考への挨拶で結びましょう。意気込みを示すことで、企業はあなたのやる気を汲み取ります。ESを丁寧に見てもらえるでしょう。
意気込みを書くときは、基本情報とうまくつながるように工夫しましょう。
たとえば部活やサークル活動を仕事につなげる場合、協調性を前面に押し出す手法が考えられます。「部活動(サークル活動)で培った協調性を活かし、先輩方や同僚と力を合わせ仕事に邁進します」と記述すれば、決意の内容も自然です。
仕事に結びつけるには、協調性、問題解決能力、継続力、忍耐力など、社会人として不可欠な能力を挙げると良いでしょう。技術の向上など、部活やサークル内でしか通用しない能力は、取り上げないようにしてください。
【自己紹介】簡単な自己紹介でもしっかり伝える書き方
- 大学名・学部・学科、氏名
- 大学での研究内容、専門分野
- あなたが注力した内容(学業での成果、部活動やサークル、アルバイト、ボランティア活動、趣味や特技、夢への取り組みなど)
- 活動で実感した強み
- 強みを仕事に活かす決意と挨拶
自己紹介は上記の5ステップで書くとうまくまとまります。
全体の字数は200〜300字が目安です。字数から考えると、内容を情報伝達に絞り、簡潔に書く必要があります。特に④は、自己PRやガクチカで詳しく記述する内容です。軽く触れる程度で構いません。
大切なのは、採用担当者に「この人のESなら、じっくり読もう」と思わせることです。③〜⑤を自然な流れで書くことで、これまでの人生を精一杯頑張ってきたことや、仕事へのまっすぐな想いが伝わります。
【自己紹介】ESで自己紹介を効果的に記入した例文5選
学業(研究)
例文
〇〇大学△△学部□□学科の〇〇〇〇(氏名)です。大学での研究テーマは比較文化学です。アメリカの少数民族を対象に、生活の実態や文化への影響を調べています。
研究を深めるため、夏休みにはミネソタ州でフィールドワークをおこないました。聞き取りや行事の見学を通し、失われつつある文化を必死で守ろうとする人々の取り組みを知り、感銘を受けました。現代の常識にとらわれず、多様な価値観を受容する大切さを実感しています。
貴社に入社したら、諸外国を渡り歩く社員として、現地文化への学びを深めていきます。そしてさまざまな価値観に合わせた営業を行います。選考をよろしくお願いいたします。(字以内)
大学での研究内容のみで構成された自己紹介です。研究が今のあなたに大きく影響しているなら、無理に他の要素(部活動やアルバイトなど)を挙げる必要はありません。学業での成果を大きくアピールしましょう。
文章は「研究の内容→研究にまつわるエピソード→仕事につながる学び→仕事への決意」の順に、論理的に構成されています。「研究にまつわるエピソード」から「仕事への決意」に至る流れが自然で、説得力があります。
仕事に向き合う姿勢や、成し遂げたい夢も分かりやすく、やる気が存分に伝わります。採用担当者も「この人のESなら詳しく読みたい」と思うでしょう。
部活動
例文
〇〇大学△△学部□□学科の〇〇〇〇(氏名)です。大学では金融学を専攻し、企業の資金集めや投資について学んでいます。
学業と並行し、駅伝部員として日々汗を流しています。昨年の全日本駅伝では地区大会止まりでしたが、チームの総合タイムで過去最高記録を達成するなど、成長を実感できました。駅伝はチームの命運を背負うプレッシャーと、思うように走れない苦しみとの戦いです。責任を全うするために、自分に打ち克つ努力を続けてきました。
就職後は、貴社の一員として自分の役割を全うします。苦しいときこそ、自分に打ち克つ強さを発揮したいです。
選考をよろしくお願いいたします。(300字以内)
部活動に打ち込むことで、肉体的にも精神的にも鍛えられたことが分かる文章です。コツコツと練習を積み重ねる真摯な姿勢も窺えます。強みだけでなく、人柄も伝わる良い自己紹介です。
部活動では、結果よりも精神的な学びに重点を置くと書きやすくなります。頑張ることで得られた学びを、働く姿勢に結びつけます。仕事へのやる気を示せれば、採用担当者に想いが届くでしょう。
この文章も地区大会止まりの結果ですが、仕事を全うし、苦しみに打ち克とうとする姿勢を魅力的に感じてもらえるでしょう。
アルバイト
例文
〇〇大学△△学部□□学科の〇〇〇〇(氏名)です。大学では児童心理学を専攻しています。特に情緒障害の子ども達への接し方や、教育ノウハウの構築が専門です。
子どもと関わる仕事を経験するため、学業と並行し学習塾でアルバイトを続けてきました。研究で教育ノウハウを構築しても、実際に子どもを前にすると個性に対応しきれません。一人ひとりとしっかり向き合う大切さを実感しました。
就職後も、子ども達の個性と向き合いながら仕事をしたいです。また障がい児教育を通し、多様性に対応できるよう自己を高めていきます。
選考をよろしくお願いいたします。(300字以内)
アルバイトを挙げるときに注意したいのは、学業を疎かにする印象を与えないことです。学生の本分は勉強です。生活の中心がアルバイトだと思われないよう注意しましょう。
この文章のように、学業に通じるアルバイトは高く評価されます。自分で決めた道を極める努力の一部とみなされるからです。
執筆者は教育関連の就業を希望しています。進む道にブレがありません。しっかりした軸を感じられるため、仕事にも強い想いで取り組むことが分かります。企業も採用しやすいでしょう。
ボランティア活動
例文
〇〇大学△△学部□□学科の〇〇〇〇(氏名)です。大学では社会政策を専攻しています。特に地方自治体の政策課題の研究が専門です。
私は学業の合間を見て、ボランティアで地域活性化プロジェクトに参加しています。観光資源を取材し、ブログで取り上げる仕事です。地方発の取り組みを体感でき、研究にも役立ちます。
多くの人に魅力を伝えるには、見せ方や表現に工夫が必要です。集客できたときには、大きな喜びを実感します。広報の仕事に興味を持つきっかけになりました。
就職後は、貴社のノウハウを学びながら、人に伝える技術を深めていきます。多くの人に貴社商品の魅力を伝えられたらと思います。
選考をよろしくお願いいたします。(300字以内)
ボランティアは社会的な役割が大きく、さまざまな学びを得られます。ただし非営利で活動する性格上、企業の価値観とは異なる部分があることに注意が必要です。「無償で働く尊さ」「奉仕精神」などを前面に出すと、企業の方針にそぐわない可能性があります。
この文章では「人に伝える楽しさ」に焦点を当てています。ボランティアを企業活動につなげた良い事例です。ボランティアも仕事である以上、企業活動に通じる部分があります。両者の接点を考えながら記述すると良いでしょう。
この内容なら、広報だけでなく、営業や商品企画の仕事にもつなげられそうです。
夢への取り組み
例文
〇〇大学△△学部□□学科の〇〇〇〇(氏名)です。大学ではグラフィックデザインを専攻しています。広告や雑誌など、印刷物のデザインが専門です。
幼い頃から絵を描くのが好きで、デザイナーを志すようになりました。大学で専門知識を学んでからは、デザインコンテストにも定期的に応募しています。〇〇賞では準優勝を獲得できました。
コンテストで学んだのは、プロに必要な姿勢です。お客様の要望に合わせた臨機応変なスタンスが必要だと感じました。
就職後は、さまざまなデザインスタイルを学びたいです。お客様の要望に応えられるデザイナーになれるよう努力します。
選考をよろしくお願いいたします。(300字以内)
これまで一直線に夢を目指してきた人や、自慢できる才能がある人は、取り組みの事例を挙げるのも良いでしょう。賞を受賞した実績や出版物があれば、強いアピールになります。
ただし、ESには必ず「学び」を入れてください。企業が欲するのは、才能がある人ではなく、会社で活躍できる人です。学びを仕事に活かす決意を表明するのは、他のテーマを取り上げる人と同じです。
この文章では「臨機応変なスタイルの必要性」を学び、それを会社で深めたいと結んでいます。経歴におごらず、社会人として努力する姿勢が感じられ好印象です。
【自己紹介】ESで自己紹介を失敗しないために意識すること
就活では面接の自己紹介との違いも理解する
自己紹介の失敗を避けるには、面接との違いを理解することが大切です。面接の感覚でESに記述すると、文章量が多すぎます。要点を掴みづらく、まとまりがなくなるでしょう。ESは面接の下書きではありません。
ESも面接も、伝える内容は同じです。異なるのは伝え方です。
面接では目の前に面接官がいます。場の空気をつくるのはあなたです。面接官の反応を見ながら、丁寧に一つひとつ話をします。
一方、ESは限られた文章量で、あなたの基本情報を漏らさず伝えなければなりません。簡潔で分かりやすいことを最優先に取り組む必要があります。
ES内の整合性に気をつける
多くの場合、自己紹介はESの最初に記述します。自己紹介で触れた内容は、後々自己PRやガクチカでも取り上げるかもしれません。他の記述と矛盾しないよう注意が必要です。
矛盾があると、「嘘を書いているのではないか」「誇張ではないか」と疑われる可能性があります。記述の不注意で信用を失うことにもなりかねません。
たとえば自己紹介で、学費を稼ぐためにアルバイトを頑張った話を挙げるとします。その場合、自己PRやガクチカの内容も、生活を支えるための頑張りに焦点を当てるのが自然でしょう。旅行やお金のかかる趣味の話を挙げたら、「学費が足りないのに、旅行や趣味?」と不審がられます。
一歩引いて自分の文章を見直し、他人に誤解されないか確認する癖をつけましょう。可能なら、他人に文章を校正してもらうことをおすすめします。
ガクチカや長所など他の項目との重複に留意する
自己紹介と自己PR、ガクチカ、長所などの内容が重複しないよう留意しましょう。自己紹介は簡潔に基本情報を伝えるだけで十分です。自己PRをしすぎたり、エピソードを過剰に入れたりすると、他の項目で同じ内容を繰り返すことになります。
繰り返しがあると、記述の効果が薄れます。せっかくのPRが嫌味や押しつけになりかねません。
ただし自己PRやガクチカの内容に、自己紹介でまったく触れないわけではありません。おすすめは、自己紹介で軽く話題に出すことです。詳しい内容は、自己PRやガクチカを読んでもらいます。自己紹介で興味を引き、他の項目に誘導する意識を持つと良いでしょう。
【自己PR】企業がESに自己PRを書かせる目的とは?
求めるスキルや能力に合致するか端的に知りたい
企業がESに自己PRを書かせるのは、応募者が求めるスキルに合致するか、入社後の活躍が期待できるか判断するためです。
自己PRには所有するスキルや能力が端的に書かれます。企業にとって、自社のニーズとの適合を確認しやすい項目です。
ただし「企業のニーズ」=「即戦力になる技能」ではありません。必要とされるのは、仕事への情熱や業務にあたる真摯な姿勢だと考えましょう。
あなたがこれまでの人生で獲得した、課題解決能力や、継続力、忍耐力、論理的思考力などを仕事への決意につなげて書くと良いでしょう。
社風にあう人材か見極めたい
自己PRには、あなたが社風にあう人材かを見極める目的もあります。
主張の内容からは、人柄も読み取れます。たとえば仲間との協調性を強くアピールしていれば、普段から仲間を大切にし、和をつくるのがうまい人柄が窺えます。和を重んじる社風の会社なら、最適な人材だと判断できるでしょう。
企業が人柄を重視するのは、業務の遂行や業績向上に社員の連帯が欠かせないからです。どんなに能力が高くても、人柄が社風に合わなければ連帯できません。ミスマッチにより、採用してもすぐに離職しかねないのです。
自己分析力や論理的な表現力を問いたい
短い文章で自己PRを書かせることで、自己分析力や論理的な表現力も確かめられます。
自己PRの文章は、長くても400字程度です。400字に収めるには、PRポイントを的確に捉え、簡潔に書く力が必要です。自己分析が浅いと、複数のポイントが列挙され、一つひとつが深堀りされない状態になります。
論理的な表現力も確認できます。採用担当者を納得させるには、取り上げた内容が本当に強みになるか、客観的な事実で証明しなければなりません。論理的に構成する力がなければ、うまくまとめるのは困難でしょう。
自己分析力も論理的な力も、業務の遂行には必須です。仕事で困難に直面したとき、自己分析ができなければ成長できません。原因と結果を結びつけて考える論理的な力がなければ、課題解決への道筋を見出せないでしょう。
自己PRの記述を通し、企業は業務に必須の能力も確認しているのです。
【自己PR】ESに自己PRを書くときのポイント
企業のニーズを知ることから始める
自己PRを書き始める前に、必ず企業のニーズを探りましょう。
企業は自己PRを通し、あなたの保有するスキルや能力がニーズに合致するか確認します。自己PRはあなたの強みを端的に伝えるため、ニーズへの適合を判断しやすいのです。
リサーチは、ホームページやパンフレット、説明会、その会社に就職した先輩の話などを参考に行います。特に先輩からの話は、大きな武器になるでしょう。会社がどのような人材を欲しているか、会社内部の実感を聞き出せるからです。
仕事につながる強みを見極める
企業のニーズが分かったら、あなたが持つ強みを見極めます。ニーズに合致するもの、近いものを選ぶと良いでしょう。
その際、PRポイントが仕事につながることを確認します。仕事につながらないと、自己PRの効果がありません。
たとえば企業のニーズが「今ある技術を進化させ、時代に即した技術へ発展させること」だとします。ここで「独創性」をPRすると、仕事に結びつけるのに苦労します。独創性は独自の考えに基づくもので、創作に近いニュアンスがあるからです。
企業が求めるのは、目の前の技術を観察し、問題点を見つけ、改良していく力です。必要なのは、課題を発見する観察力や分析力、アイデアを生み出す柔軟な発想力でしょう。
あなたが独創性に優れていても、仕事につながらなければ記述できません。PRする強みは慎重に選ぶ必要があります。
強みは客観的な事実をもとに詳しく掘り下げる
自己PRに説得力をもたせるには、アピールする内容が仕事で強みになることを証明しなければなりません。データや数字などの客観的な事実を元に掘り下げないと、独りよがりだと思われてしまいます。
たとえば問題解決能力をアピールする場合、抱えていた問題があなたの力で解決し、改善した事実を証明できなければなりません。可能ならば、数字をもとに事実を述べるとよいでしょう。
客不足に困っていた飲食店をあなたが救った話題なら、客数の変化を数字で示します。「一日30人だったお客様が、100人に増えた」と書くだけで、一気に説得力が増します。採用担当者はあなたの問題解決能力を信頼し、仕事への期待を寄せるようになるでしょう。
入社後強みをどう活かすか決意を書く
入社後に強みをどう活かすか、決意を忘れずに書きましょう。あなたが活躍する未来を示すことで、採用担当者の心を動かします。
問題解決能力をPRするなら、入社後の困難を見据えるのがおすすめです。
「入社後も困難にぶつかったときは、学生時代に培った力を活かし、目の前の問題をしっかりと見つめ、一つひとつ乗り越えていきます」
と記述すれば、経験を仕事に活かし、業務に邁進する強い決意が伝わります。企業も積極的に採用する気になるでしょう。
【自己PR】ESで企業に魅力が伝わる自己PRの書き方
自己PRを論理的に仕上げる5つのステップ
- 受験する企業を研究し、求められる人物像を探る
- あなたの強みと企業のニーズを照合し、合致する内容でPRポイントをつくる
- アピールポイントを書く(結論ファースト)
- アピールポイントの具体的エピソード(学業や部活、アルバイトで強みを発揮した話)を書く
- 入社後、強みをどう活かすか決意を書く
自己PRで大切なのは、①②です。ここを疎かにすると採用担当者の心に響きません。急いで執筆しようとせず、じっくりと企業研究をおこなう必要があります。
④を書くときには、簡潔な記述を心がけましょう。字数には限りがあります。長くても400字で話をまとめなければなりません。数字やデータなど客観的な事実を交え、強みを証明することも忘れないでください。
最後に⑤で入社後の決意を示します。PRだけだと単なる自慢話です。今後の仕事に活かす意志を忘れずに伝えましょう。
【自己PR】ESで企業に注目された自己PRの例文4選
課題解決能力
例文
私の強みは課題解決能力です。目の前の課題を分析し、適切な方法で解決に導く自信があります。
私がアルバイトしているプログラミングスクールでは、小学生の生徒の退会が相次ぎ、売上が減少していました。生徒が定着しないのは難しい内容を難しく教えていることが原因だと考えました。
そこで私は、思い切ってプログラミングも学べるゲームソフトを教材にし、遊びの中で自然と興味が向くよう工夫しました。ゲームを進めるために子ども達は新たなスキルを次々と知りたがります。テキスト頼りの教え方も改め、実際に作業しながら興味に応える授業に切り替えました。
その結果、退会はゼロになりました。生徒は皆一様に「楽しい」と口にします。この経験は、私の大きな自信になりました。入社後も原因にしっかりと向き合う中で、貴社に貢献できるよう力を伸ばしたいです。(400字以内)
課題を適切に解決する能力は、どのような仕事にも必要です。しかし説得力のある経験を提示するのは簡単ではありません。
企業の求める課題解決能力とは、問題点を見つけて分析し、有効な解決策を示す能力です。明らかな困難でなくても、「何となく商品の人気が落ちた」「消費者の反応に違和感がある」など、気になることがあれば、原因を突き止め改善点を見出さなければなりません。高い能力が要求されがちです。
この文章では、アルバイト先で直面した売上減少の問題を、自分なりに分析し解決しています。評価できるのは、原因を自分なりに分析し、明確な改善策を打ち出していることです。退会者を減らした事実を示すことで、分析と行動が間違っていなかったことも証明できました。企業への強いアピールになります。
アルバイト先に貢献した経験があるからこそ、入社後の決意は上から目線にならないよう注意が必要です。この文章のように、「貴社の力になれるよう、課題解決能力をさらに伸ばしたい」と結べば、現在の力におごらず嫌味がありません。会社でも意欲的に課題解決にあたる意志を示せます。
継続的な努力
例文
私の強みは継続的に努力を続けられることです。宅地建物取引士の資格取得を通し、目標に対し努力し続ける習慣がつきました。
私は経済学が専門のため、宅建は畑違いの分野です。大学の勉強とは別に、資格取得の時間をつくる必要がありました。しかし、一日2時間しか勉強時間が取れなかったため、継続的な取り組みが必要となりました。
長期的に努力を続けるために、集中力の強化と徹底的なスケジューリングを行いました。自分の行動特性を研究し、集中しやすい環境をつくりました。さらに取り組みを続けるために、学習計画を細かく作り、1つずつ達成感を感じながら勉強を行いました。
一年間の継続的な勉強の甲斐があり、試験には一度で合格しました。資格取得で学んだ姿勢は、勉学の力にもなっています。
保険市場は変化が激しく、常に情報を更新し、学び続ける必要があります。就職後の業務においても、じっくりと腰を据えて継続的に努力を重ねていきます。(400字以内)
継続的に努力を続けられる人は企業に求められます。継続力がない人は離職につながりやすい傾向にあります。仕事にじっくりと取り組む姿勢は、最低限の採用条件といえるでしょう。
しかし、最低限の条件だからこそ、「継続的に努力しています」と伝えるだけではアピールが弱いです。資格試験合格のように、努力を証明する事実が必要です。
この文章の良いところは、継続性を証明する事実を示した上で、入社後の具体的な努力にも触れていることです。継続性を挙げておきながら、入社後に努力を継続する話が出ないのは不自然です。具体的な取り組みに言及することで、説得力が増します。
柔軟性
例文
私は柔軟な考え方を持っています。ものごとを一つの価値観で決めつけず、多角的な観点から判断できます。
柔軟性は世界中を旅する中で得ました。旅で実感したのは、文化の多様性です。日本の常識が通用しない場面が多々あり、驚きの連続でした。自分の価値観の狭さを痛感し、現地の文化を積極的に吸収するようになりました。徐々に物事を多角的に捉えられるようになり、世界が広がっていく実感を持てました。
あらゆる視点で物事を考えるようになったことで、ものづくりの幅が広がったように感じます。建築のデザインを考えるとき、今までの倍以上のイメージを引き出せるようになりました。
良い建築士になるためには柔軟性が必要だと考えます。お客様の要望を多角的に捉えられれば、提案するデザインにも幅が出ます。仕事でもさまざまな価値観を貪欲に吸収したいです。(400字以内)
仕事に行き詰まったとき、他の観点で対処したら簡単に解決できるケースがあります。柔軟性がある人は、企業にとって大きな魅力です。
ただし、柔軟性を証明するのは大変です。この文章では、建築のデザインを考えるときに「倍以上のイメージを引き出せた」ことを根拠に挙げています。旅の話から学業の話へうまく転換することで、主張に説得力が生まれました。仕事への活用方法も具体的に示されており、努力や意気込みが明確です。企業から良い評価を得られるでしょう。
「柔軟性」は抽象的な言葉です。エピソードに具体性がないと、イメージが湧きません。実際にどのような場面で柔軟性を実感できたのか、学業やアルバイトに落とし込んで記述すると良いでしょう。
協調性(リーダーシップ)
例文
私の強みは仲間と互いに力を発揮し合う協調性です。
私は飲食店のバイトリーダーとして働いています。お客様が多く忙しいときには、協調性が欠かせません。ポイントは、一人ひとりの得手・不得手を理解し、適材適所で仕事を割り振ることです。スタッフとよく話し、性格の把握に努めました。性格が分かれば、向いている業務も判断できます。得意な分野は信頼して任せ、苦手な分野は協力し合う体制をつくり上げました。
その結果、お互いを各分野のプロフェッショナルとして尊重し、困難に手を差し伸べ合う協力関係が築かれました。どんなに忙しくても、協調関係で仕事を乗り切れています。
この経験から、私は仲間と協力しながら仕事を進める大切さを学びました。就職後は先輩方が築いたチームの一員として、協調性を大切に真摯に業務に取り組みます。(350字以内)
協調性の中でもリーダーシップを前面に出した文章です。難しいところは、入社後すぐには能力を発揮する場がないことです。ただし、将来的には組織を束ねる人材になり得るため、リーダーシップがある人は重宝されます。
この文章はエピソードが具体的に記されています。リーダーシップは、具体性が欠けると独りよがりになりがちなテーマです。このエピソードならば、採用担当者に能力を的確に伝えられるでしょう。
文章を書くときには、上から目線にならないよう注意します。「入社後もリーダーシップを発揮したいです」と書くと、上司の立場がありません。この文章のように、「協調性を大切に頑張ります」と収めるのが無難でしょう。
【自己PR】ESの自己PRで失敗しがちなポイント
取り上げるエピソードに具体性がない
取り上げるエピソードに具体性がないと、あなたの強みを証明できません。ESは面接とは異なり、文章ですべてを表現します。具体性がないと場面を想像できず、根拠のないアピールが悪目立ちするでしょう。
たとえば高い統率力を示す場合、統率した経験を具体的に書かなければなりません。
「合唱チームのリーダーとして関東大会出場を果たしました」と書いても、統率力の根拠は分からないままです。
「合唱チームの目標を地区大会突破に設定し、忙しくてもメンバーが参加できる余裕あるスケジュールをつくりました。メンバーの得意・不得意を見極めながら、長所を活かすパート分けをおこなったところ、地区大会を無事突破し、関東大会まで出場できました」と書けば、統率力を発揮する姿が目に浮かびます。
具体的な記述を心がければ、説得力のあるエピソードを書けるのです。
アピールする能力に客観的な根拠がない
アピールする能力は、データや数字で客観的な根拠を示します。根拠がないと、独りよがりだと思われる恐れがあります。
たとえばボランティアで街の情報をPRするブログの執筆に携わったとします。「ブログ配信後は、街に興味を持つ人が増え、観光促進につながりました」
と書いても、「本当に興味を持つ人が増えたの?」「観光が促進された根拠は?」と突っ込まれてしまうでしょう。
説得力をもたせるには、数字やデータを入れ込みます。「ブログを執筆した結果、一日平均200名の閲覧者を抱えるサイトになりました」と書けば、興味を持つ人が増えた証拠になります。「一日数件だった問い合わせが、多い日には30件近く来るようになりました」と続ければ、観光促進効果も裏付けられるでしょう。
多くの会社は、日々データや数字を分析しています。採用担当者にとって、客観的な根拠の提示は当然のことです。常に明確な根拠を示せるよう意識することがポイントです。
ガクチカと内容がかぶる
内容の重複にも注意が必要です。特にガクチカとは内容がかぶりやすいです。同じ内容を書くと、効果が薄まってしまいます。エピソードが充実している内容はガクチカに回し、自己PRには主張が強い内容を書くと良いでしょう。
ガクチカではエピソードをメインに据えます。エピソードの中で自己PRを行う形です。一方、自己PRは主張がメインです。強みがはっきりとわかる文章を心がけましょう。
以下を強く頭に入れ、内容を選別して書きましょう。
- 自己PR→主張がメイン。主張から入り、入社後の決意で終わる
- ガクチカ→エピソードがメイン。エピソードを述べる中で自己PRをおこなう。最後は仕事への活用につなげる
自己紹介・自己PRはあなたを紹介する2つの軸!
自己紹介と自己PRは、あなたを企業に紹介する2つの軸です。
ESの導入にあたる自己紹介では、あなたの基本情報をきっちりと伝えます。あなたの人柄を読み取ってもらえるよう、しっかりと内容を記述しましょう。会話のように長々と書くことはできません。200〜300字を目安に、簡潔にまとめましょう。
自己PRは、あなたのスキルや強みを最も端的に企業に伝える項目です。企業はニーズへの適合を見極め、応募者を比較検討します。まずは企業のニーズを探り、ニーズに合う強みを押し出せば失敗がありません。
エピソードは具体的に書き、データや数字を用いて強みを客観的に証明してください。
自己紹介と自己PRがしっかりしていれば、あなたの魅力が伝わります。内定をぐっと引き寄せられるでしょう。伝わりやすい文章を念頭に置き、執筆を始めましょう。